法定相続情報証明制度とは何か?【相続手続きがラクになります】

「先日父が亡くなり、相続手続きを行うことになりました。最近になって法定相続情報証明制度というのができたと聞きました。それはどういった制度なんでしょうか?」

法定相続情報証明制度について知りたい人

 

こういった疑問にお答えします。

法定相続情報証明制度は、平成29年に新設された制度です。

「法定相続情報一覧図」という証明書を法務局が発行し、それを不動産、銀行、証券、保険など被相続人が遺した相続財産の名義変更の手続きに利用できるというものです。

この記事では、法定相続情報証明制度について司法書士がわかりやすく解説します。


目次

法定相続情報証明制度とは何か?【相続手続きがラクになります】

法定相続情報証明制度とは、法定相続情報一覧図の写しという証明書を法務局という役所に発行してもらい、それを相続手続きに利用できるという制度です。

法定相続情報一覧図は、相続関係を図で表したものです。

下の画像は法定相続情報一覧図の写しのサンプルなります。

法定相続情報一覧図

ご覧のとおり、相続関係が図で表されます。

相続関係を法務局が証明してくれるので、銀行や保険会社なども信用して、法定相続情報一覧図を相続手続きに利用することができます。

これまでは不動産、銀行、証券、保険など被相続人の相続財産ごとに大量の戸籍などを持って行って名義変更していたため大変でした。

具体的には、被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本すべてと、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。

ケースによっては何度も本籍地が移転しているために、大量の戸籍謄本が必要になり、それをいろんなところに持っていかないといけませんでした。

そこで法務局に戸籍謄本を持っていって法定相続情報一覧図を発行してもらうと、いちいち戸籍謄本の束を持っていかなくても不動産、銀行、証券、保険など各財産の名義変更が可能になります。

近年、相続登記がされていない不動産が社会問題になっているので、相続登記を推進するために、この制度が創設されました。

法定相続情報証明制度を利用するメリットがあるケース

被相続人が、預金や不動産、有価証券、保険などいろんな種類の財産を保有していたような場合には、法定相続情報証明制度を利用するメリットがあります。

法定相続情報一覧図は、発行手数料無料で、5年間なら何度も再発行可能ですので、各金融機関などに法定相続情報一覧図を提出すれば、各手続きを同時並行で行うことができます。


法定相続情報証明制度を利用するメリットがあまりないケース

一方、被相続人の財産が1つの不動産だけ、銀行口座一つだけというようなケースだと、法定相続情報証明制度を利用するメリットはあまりありません。


法定相続情報証明制度が利用できる手続き

法定相続情報一覧図は、次の手続きなどに利用することができます。

  1. ・法務局での不動産の相続登記手続き
  2. ・銀行などの金融機関での預貯金の相続による名義変更の手続き
  3. ・証券会社での株式などの相続による名義変更の手続き
  4. ・保険会社での相続にともなう保険金請求などの手続き
  5. ・税務署での相続税の申告手続き


また次のような裁判所の手続きにも、法定相続情報一覧図を使用できる場合があります。

ただし現時点では統一的なルールはなく、裁判所ごとに異なる運用がされているようで、場合によっては戸籍謄本などの提出は省略できない場合もあるようです。

  1. ・相続放棄の申述
  2. ・相続財産管理人選任の申し立て
  3. ・遺産分割調停などの申し立て
  4. ・遺言書の検認申立て


法務局での不動産の相続登記手続き

登記識別情報

不動産の相続登記手続きには、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本すべてと、相続人全員の現在の戸籍謄本、相続関係説明図という相続関係を説明する家系図のようなものが必要です。

これらに代えて、法定相続情報一覧図を提出することができます。

そのほかの相続登記の必要書類については、こちらの記事をご覧ください。

  1. ・関連記事 相続登記:相続した不動産の名義変更のやり方


銀行などの金融機関での預貯金の相続による名義変更の手続き

銀行などでの預貯金の相続手続きにも、法定相続情報一覧図を使うことができます。

多くの金融機関で法定相続情報一覧図を使って相続手続きを行うことができますが、金融機関によっては法定相続情報一覧図を使えない可能性もありますので、金融機関に問い合わせする必要があります。

ゆうちょ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行では法定相続情報一覧図が使えることが明記されています。

また、金融機関によっては法定相続情報一覧図について有効期限が決められているところもありますので注意が必要です。

証券会社での株式などの相続による名義変更の手続き

証券会社での株式などの相続手続きにも、法定相続情報一覧図を使うことができます。

こちらも、証券会社によっては法定相続情報一覧図を使えない可能性もありますので、証券会社に問い合わせする必要があります。

また、証券会社によっては法定相続情報一覧図について有効期限が決められているところもありますので注意が必要です。

保険会社での相続にともなう保険金請求などの手続き

保険

保険会社での保険金の請求や、保険の名義変更にも、法定相続情報一覧図を使うことができます。

こちらも、保険会社によっては法定相続情報一覧図を使えない可能性もありますので、保険会社に問い合わせする必要があります。

また、保険会社によっては法定相続情報一覧図について有効期限が決められているところもありますので注意が必要です。

税務署での相続税の申告手続き

税務署

相続税の申告手続きにも、法定相続情報一覧図を使うことができます。

ただし相続人が子である場合は、戸籍に記載される続柄(例えば、子であれば、「長男」、「長女」、「養子」など)を記載する必要があります。

続柄を「子」と記載してしまうと、相続税の申告手続きに使用することができない場合があるので注意してください。

くわしくは、法務局のサイトをご覧ください。

  1. ・外部リンク 法定相続情報証明制度の利用範囲の拡大について


相続放棄の申述、相続財産管理人選任の申し立て、遺産分割調停などの申し立て、遺言書の検認申立て

これら裁判所の手続きにも、法定相続情報一覧図を使用して、戸籍謄本の提出を省略できる場合もあります。

ただし現時点では統一的なルールはなく、裁判所ごとに異なる運用がされているようで、場合によっては戸籍謄本などの提出は省略できない場合もあるようです。

各種手続きの詳細については別記事にまとめてありますので、ご覧ください。

  1. ・関連記事 相続放棄の手続きを解説します【必要書類や注意点】
  2. ・関連記事 遺産分割調停の流れ 【相続争いを解決する方法を解説します】
  3. ・関連記事 遺言書の検認手続きの流れを解説します


法定相続情報一覧図の交付の手続き

法定相続情報一覧図の交付を受ける手順は次の通りです。

  • 戸籍謄本類など必要書類を集める
  • 法定相続情報一覧図の作成
  • 法定相続情報申出書を作成
  • 法務局へ申し出
  • 認証付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸籍謄本類の返却


戸籍謄本類など必要書類を集める

必要書類を集めます。

必要書類は次の通りです。

  1. ・被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
  2. ・被相続人の住民票の除票等または被相続人の戸籍の附票
  3. ・相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本
  4. ・申出人の氏名・住所を確認できる公的書類


必要に応じて次の書類も添付します。

  1. ・申出人が相続人の地位を相続により承継した者であるときは、これを証する書面
  2. ・各相続人の住民票の写し(法定相続情報一覧図に相続人の住所の記載を希望する場合)
  3. ・代理人によって申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

 

被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本

被相続人(亡くなった方)の戸籍は、被相続人の本籍地の役所で取得できます。

戸籍謄本を請求する際に、「生まれてから亡くなるまでの戸籍すべてをお願いします」などとメモ書きして渡すと、その役所にある戸籍のすべてを出してもらえます。

本籍地がわからない場合、住所地の役所で本籍地入りの住民票を取得すれば本籍地がわかります。

被相続人の住民票の除票等または被相続人の戸籍の附票

被相続人の最後の住所を証明するために必要です。

住民票の除票は被相続人の最後の住所地の役所で取れます。

戸籍の附票は被相続人の本籍地の役所で取れます。

相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本

相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本が必要です。

被相続人の戸籍に入っている相続人がいる場合、その人については別途戸籍謄本は不要です。

申出人の氏名・住所を確認できる公的書類

マイナンバーカード

公的書類とはたとえば次のようなものです。

  1. ・運転免許証のコピー
  2. ・マイナンバーカードの表面のコピー
  3. ・住民票の写し


運転免許証は両面をコピーする必要があります。

マイナンバーは表面だけコピーします。

コピーには原本と相違がない旨を記載して、申出人が記名をする必要があります。

申出人が相続人の地位を相続により承継した者であるときは、これを証する書面

相続人の地位を相続により承継した者というのは、代襲相続の場合です。

代襲相続とは、本来相続人となる人が被相続人のより先に亡くなっている場合に、本来の相続人に代わってその相続人の子どもが相続することをいいます。

たとえば、本来相続人となるはずの被相続人の子どもが、被相続人より先に亡くなっている場合は、その相続人の子ども(被相続人の孫)が代わりに相続人になります。

この場合、代襲者であることを証する戸籍謄本が必要になります。

各相続人の住民票の写し

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したい場合は、各相続人の住民票の写しを添付します。

代理人によって申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

親族が代理人となるときは、委任状および親族関係があることがわかる戸籍謄本などです。

ただし、被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄抄本などにより、親族関係にあることがわかる場合には不要です。

法定相続情報一覧図の作成

法定相続情報一覧図を作成します。

相続関係を説明する図です。

家系図のような図形式と、列挙形式のものがあります。

法定相続情報一覧図(図形式)
法定相続情報一覧図(列挙形式)

法定相続情報一覧図のひな形は法務局のホームページにあります。

  1. ・外部リンク 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

 

法定相続情報申出書を作成

申出書を作成します。

申出書のひな形はこちらです。

  1. 法定相続情報申出書


法務局へ申し出

法務局

申出書、法定相続情報一覧図と必要書類をあわせて法務局に申し出します。

次のいずれかを管轄する法務局に申し出します。どちらの法務局に申し出されても構いません。

  1. ・被相続人の最後の本籍地
  2. ・被相続人の最後の住所地
  3. ・申出人の住所地
  4. ・被相続人名義の不動産の所在地


管轄の法務局については法務局のホームページからお探しください。

  1. ・外部リンク 管轄のご案内


申し出は、法務局に書類を持参するほか、郵送も可能です。

郵送の場合は、その旨を申出書に記入した上、返信用の封筒及び郵便切手を同封します。

窓口で受取をする場合は、上記の必要書類である公的書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)の原本を持参する必要があります。


申出者(代理人)

申し出することができるのは、相続人です。

ただし、代理人も申し出することができます。

法定相続情報証明に関する手続きを司法書士などの代理人に依頼できるということです。

また、複数の相続人が連名で申出をすることもできます。


手数料

法定相続情報証明制度は無料で利用できます。

ただし、戸籍などの取得費用(1通300円~750円ほど)や郵送による手続の場合の切手代などの実費がかかります。

また司法書士などの代理人に依頼する場合、代理人の報酬が必要になります。

認証付き法定相続情報一覧図の写しの交付、戸籍謄本類の返却

申し出から2、3日程度で法定相続情報一覧図の写しが出来上がります。

戸籍謄本などは返してもらえます。


法定相続情報一覧図の写しの再交付

法定相続情報一覧図に関する書類は申出日の翌年から5年間は法務局で保存され、その間は法定相続情報一覧図の写しの再交付を請求することができます。

ただし、当初の申出人以外の相続人は再交付の申出をすることはできません。

申出人以外の相続人が法定相続情報一覧図の交付を受けたい場合は、申出人

から再交付の申出についての委任を受けるか、自ら法定相続情報一覧図の保管および一覧図の写しの交付の申出を行う必要があります。

法定相続情報一覧図の写しの再交付を請求する場合、再交付の申出書を法務局に提出します。

再交付の申出書のひな形はこちらです。

  1. 法定相続情報再交付申出書


法定相続情報証明制度の注意点

法定相続情報証明制度については次のような注意点があります。

  1. ・被相続人や相続人の中に一人でも日本国籍を有さない人がいる場合、利用できない
  2. ・廃除された相続人は記載されない


被相続人や相続人の中に一人でも日本国籍を有さない人がいる場合、利用できない

被相続人が日本国籍を有しない場合や、相続人の中に日本国籍を有しない方が一人でもいる場合は、法定相続情報証明制度を利用することができません。

廃除された相続人は記載されない

廃除された相続人は、原則として法定相続情報一覧図には記載されません。

また廃除された相続人は法定相続情報一覧図の保管の申出をすることはできません。

廃除とは、被相続人が相続人の相続する権利をはく奪することです(民法892条)。

相続人が被相続人に対して、重大な侮辱を加えたとき、またはそのほかの著しい非行があったときに、被相続人は家庭再裁判所に廃除を請求することができます。

また被相続人は遺言に、相続人を廃除する旨の記載することができます(民法893条)。

まとめ

以上、法定相続情報証明制度について解説しました。

田渕司法書士・行政書士事務所では、相続に関する相談を承っております。

お悩みごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

それでは今回は以上です。

お読みいただきありがとうございました。