預金の相続手続きをわかりやすく解説します【必要書類など】

相続の相談者

「先日父が亡くなりました。父の銀行預金の相続手続きを行いたいのですが、どういった手続きが必要になりますか?」

 
 

 

大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

預金の相続手続きは、各金融機関に名義変更、または払い戻し手続きを行います。

複数の金融機関に口座がある場合でも、一括して手続きを行うことはできず、金融機関ごとに手続きを行う必要があります。

この記事では、預金の相続手続きについてわかりやすく解説します。

 

預金の相続手続きをわかりやすく解説します【必要書類など】

相続

被相続人(亡くなった方)の預金の相続手続き(名義変更手続きまたは払い戻し手続き)ができるのは、次の場合です。

  1. ・預金の相続についての遺言書がある場合
  2. ・遺産分割協議があった場合
  3. ・遺産分割調停があった場合
  4. ・遺産分割の審判があった場合
  5. ・法定相続人全員の合意がある場合

 

預金の相続についての遺言書がある場合

遺言書

銀行預金の相続についての遺言書が遺されている場合、その遺言書の通りに相続することになります。

たとえば「下記の銀行預金は、長男Aに相続させる」という遺言があった場合、その遺言通りに長男Aが銀行預金を相続するので、長男Aが単独で相続手続きを行うことができます。

遺言書が法務局に保管されていない自筆証書遺言である場合は、先に検認手続きをする必要になります。

検認とは、遺言書の偽造、改ざんを防止するための証拠保全のことです。

検認は家庭裁判所に戸籍などの書類を提出する必要があります。

検認については、くわしくはこちら。

  1. ・関連記事 遺言書の検認手続きの流れをわかりやすく解説します

 

遺言書が公正証書遺言や、法務局に保管されていた自筆証書遺言の場合は、検認手続きは不要です。

 

遺産分割協議があった場合

遺産分割協議書

遺産分割協議とは、相続人同士で、誰がどの財産を相続するか話し合うことです。

  1. ・関連記事 遺産分割協議とは何か?【遺産の分け方についての話し合い】

 

たとえば、「長男Aは下記の不動産を相続する、次男Bは下記の預金を相続する」という内容の遺産分割協議が成立すると、次男Bが預金を相続するので、次男Bが単独で預金の相続手続きを行うことができます。

 

遺産分割調停があった場合

遺産分割調停

遺産分割調停とは、調停委員という家庭裁判所の職員を間にはさんで、遺産分割についての話し合いをすることです。

  1. ・関連記事 遺産分割調停の流れ【必要書類は?合意できなかったら?】

 

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

遺産分割調停によって話がまとまった場合、遺産分割調停調書という書類が家庭裁判所から交付されます。

遺産分割調停によって預金を相続することになった相続人は遺産分割調停調書を提出して、単独で預金の相続手続きを行うことができます。

 

遺産分割の審判があった場合

遺産分割の審判とは、遺産分割の争いについての、家庭裁判所で行う裁判手続きです。

遺産分割調停でも話し合いがまとまらない場合、裁判で解決することになります。

遺産分割の審判で預金を相続することになった相続人は、単独で預金の相続手続きを行うことができます。

 

法定相続人全員の合意がある場合

遺言がなく、遺産分割もしない場合、相続人は相続財産を法定相続分で共有することになります。

  1. ・関連記事 法定相続分とは?【法定相続分の割合について解説します】

 

この場合は、相続人全員が預金の相続手続きを行う必要があります。

 

預金の相続手続き

金融機関に対して相続の申し出をすると、金融機関から相続手続きの申請用紙が送られてきます。

銀行は預金者の死亡を確認すると、その預金者の口座を凍結してしまうのでご注意ください。

この申請用紙のほか、次のような必要書類を収集して、届出します。

おおむね下記の通りですが、金融機関によってほかにも書類が必要になる場合がありますので、念のため各金融機関にお問い合わせください。

 

預金の相続についての遺言書がある場合

遺言書
  1. ・金融機関の申請用紙
  2. ・遺言書
  3. ・戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
  4. ・受遺者または遺言執行者の印鑑証明書
  5. ・通帳(または証書)
  6. ・キャッシュカード

 

遺言書による相続の場合、戸籍謄本は被相続人が亡くなったことがわかるものが必要になります。

戸籍謄本の代わりに法定相続情報一覧図の写しでも構いません。

法定相続情報一覧図とは、相続関係を法務局が証明する書類です。

くわしくはこちら。

  1. ・関連記事 法定相続情報証明制度とは何か?【相続手続きがラクになります】

 

印鑑証明書は、受遺者または遺言執行者のものが必要になります。

また申請用紙には、受遺者または遺言執行者の署名と実印での押印が必要です。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために動く人です。

  1. ・関連記事 遺言執行者とは?【遺言の内容を実現するために動く人】

 

通帳、証書、キャッシュカードは、紛失している場合でも、その旨を届け出ることで手続きを行うことができます。

 

遺産分割協議があった場合

  1. ・金融機関の申請用紙
  2. ・遺産分割協議書
  3. ・戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
  4. ・法定相続人全員の印鑑証明書
  5. ・通帳(または証書)
  6. ・キャッシュカード

 

遺産分割協議書については、法定相続人全員の署名と実印での押印が必要になります。また法定相続人全員の印鑑証明書も必要になります。

遺産分割協議があった場合、相続手続きの申請用紙には、預金を相続することになった人の署名押印が必要になります。

遺産分割協議の場合の戸籍謄本は、被相続人の出生から亡くなるまでのものと、法定相続人全員のものが必要になります。

出生から亡くなるまでの戸籍謄本の取り方については、こちらをご覧ください。

  1. ・関連記事 相続に必要な戸籍謄本の集め方、古い戸籍の読み方

 

遺産分割調停があった場合

  1. ・金融機関の申請用紙
  2. ・遺産分割審判書の正本または謄本
  3. ・法定相続人全員の印鑑証明書
  4. ・通帳(または証書)
  5. ・キャッシュカード

 

遺産分割の審判があった場合、遺産分割審判書という書類が家庭裁判所から交付されますので、それが必要になります。

 

遺産分割しなくても預金を引き出せる場合

遺産分割しなくても預金を引き出すことができる場合があります。

遺言がない場合、遺産分割するか、相続人全員で預金の相続手続きをしないといけません。

遺産分割がすぐに整えばいいのですが、話し合いが長引いて、生活費や葬儀費用の支払いなどで資金がすぐに必要なときでも、一切預金を引き出せないとすると非常に不便です。

そこで、遺産分割前であっても、一定の割合の金額に限り、預金を引き出すことができます。

また家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てている場合、相続人の生活費の支出など、遺産である預貯金を使う必要がある場合は、相続人が申し立てることにより、家庭裁判所は、預貯金の全部または一部を相続人に仮に取得させることができます。

この場合は、家庭裁判所の審査が必要な代わりに、金額に法定の制限がありません。

くわしくは、こちら。

  1. ・関連記事 相続預金の仮払制度をわかりやすく解説します【遺産分割】

 

自分でするのが難しいときは司法書士に相談

司法書士

預金の相続手続きを自分でするのが難しいときは、司法書士にお任せすることができます。

必要書類の収集、作成から銀行での手続きまで一貫して行うので、面倒な手続きはしたくない、手続きをする時間がない、という方にはおすすめです。

大阪周辺の方なら当事務所でも承ります。

お気軽にご相談ください。

当事務所の相続サポートサービスの詳細はこちら。

  1. ・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の相続手続き総合サポートサービス

 

まとめ

以上、預金の相続手続きについて解説しました。

預金の相続手続きは、銀行ごとに手続きをしないといけないので、たくさんの金融機関に口座がある場合は、非常に時間がかかってしまいます。

しかし、時間をかければ、自分でも行うことができるので頑張ってみてください。

というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。