遺言執行者とは?【遺言の内容を実現するために動く人】

大阪の司法書士・行政書士の田渕です。

遺言を書く際に、ぜひ入れておいた方がいい条項があります。

それは遺言執行者についての条項です。

遺言執行者とは、簡単に言うと、遺言の内容を実現するために動く人です。

遺言の効力が発生するのは、遺言を書いた人が亡くなった後です。

そのときに遺言を書いた人に代わって、遺言の内容通りに手続きをする人が遺言執行者です。

この記事では、これから遺言を書いてみようという方向けに、遺言執行者の職務の内容や、遺言執行者を選任する場合の遺言の書き方などについて深堀して解説します。


遺言執行者とは?【遺言の内容を実現するために動く人】

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする人です(民法1012条1項)。

あくまで遺言の内容を実現することが職務であり、相続人の利益のために職務を行うのではありません。

遺言執行者は遺言で指定することができます(民法1006条)。

遺言執行者

 

遺言執行者の職務

以前は、遺言執行者の職務内容が明確ではなかったのですが、改正民法が令和元年7月1日に施行され、遺贈や相続させる旨の遺言があった場合の遺言執行者の職務について明確にされました。

 

特定遺贈の場合

遺言公正証書

特定遺贈とは、特定の財産を、遺言で贈与することです。

たとえば、「下記の不動産を孫の○○に遺贈する」というような場合です。

遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができます(民法1012条2項)。

不動産を孫に遺贈する遺言についての遺言執行者は、遺贈の目的である不動産を、相続開始の時の状態で引き渡し、又は移転する義務を負います(民法998条)。

 

相続させる旨の遺言の場合

遺贈

相続させる遺言とは、特定の財産を特定の相続人に「相続させる」遺言です。

特定財産承継遺言ともいいます。

たとえば、「下記の不動産を長男の○○に相続させる」というような遺言です。

 

相続させる遺言があったときは、遺言執行者は、相続人が対抗要件を備えるために必要な行為(不動産登記など)をすることができます(民法1014条2項)。

対抗要件とは、自分の権利を第三者に主張するための要件です。

不動産の場合は、不動産登記になります。

不動産について、法定相続分を超える持分を相続した人は、登記しないと第三者に対して、法定相続分を超える持分を主張することができません(第899条の2)。

 

たとえば、相続人が子ども2人(長男、次男)の場合に、長男に不動産を相続させる遺言が遺されていた場合、長男が登記しない間に、次男が勝手に長男と次男がそれぞれ持分2分の1の相続登記をし、次男の持分2分の1を第三者に売却し、移転登記もした場合、長男はその第三者にその2分の1の持分を主張することができません。

登記しないと権利を第三者に対抗できない

 

そのようなことがないように、この場合は自分が単独で相続した登記をする必要があります。

不動産を相続した場合の登記のことを相続登記といいます。

・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】

 

遺言執行者は、この相続登記を申請することができます。

また相続させる財産が預貯金である場合には、遺言執行者は、その預貯金の払戻しの請求や、その預貯金の解約の申入れをすることができます(民法1014条3項)。

 

遺言執行者は必要か?

遺言を書く人

遺言執行者は必ずしも選任する必要はありません。

たとえば、不動産を相続人の一人に相続させるという内容の遺言で、遺言執行者がいない場合は、不動産を相続する相続人が単独で登記を申請することになります。

しかし、相続する人が高齢であるなどの理由で、面倒な手続きを行うのが難しい場合は、司法書士などの専門家を遺言執行者に選任しておくと、遺言執行者が手続きを代わりに行ってくれるというメリットがあります。

 

また不動産を遺贈する場合は、できれば遺言執行者を選任しておいた方がいいケースになります。

不動産を遺贈する場合に遺言執行者がいないと、遺贈を受ける人と、相続人全員が共同で登記を申請することになります。

この場合、相続人の中に登記に協力しない人がいると、登記手続きができず、裁判などの面倒な手続きが必要になる可能性があります。

本来なら相続できると思っていた不動産を第三者に遺贈され、相続人が気分を害した結果、登記手続きに協力しないという事態は十分考えられます。

遺言執行者がいれば、遺言執行者と遺贈を受けた人が共同で登記申請することになるので、スムーズに相続手続きがすすみます。

 

誰を遺言執行者にするか

遺贈

遺言執行者については特に必要な資格はありません。

未成年者や破産者は遺言執行者になることはできません(民法1009条)が、それ以外の人は誰でも遺言執行者になることができます。

なので、相続人など親族を遺言執行者にすることもできます。

また、司法書士などの専門家を遺言執行者にすることもできます。

専門家を遺言執行者に選任すると、報酬が必要になりますが、複雑で面倒な手続きをすべて、専門家を遺言執行者に任せることになるのでスムーズです。

相続人や遺贈する人に面倒な手続きを任せられない、させたくないという場合は専門家を遺言執行者に選任させるといいでしょう。

 

遺言執行者を遺言で指定する場合の遺言の書き方

遺言執行者を遺言で指定する場合、次のように記載します。

  1. 第〇条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男○○(昭和○○年○○月○○日生)を指定する。


相続が発生する前に、遺言執行者の方が先に亡くなったりする場合に備えて、予備の遺言執行者を指定することもできます。

その場合は、次のように記載します。

  1. 第〇条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻○○(昭和○○年  ○○月○○日生)を指定する。
  2. 2 妻○○が先に亡くなっている場合は、本遺言の執行者として、長男○○(昭和○○年○○月○○日生)を指定する。


まとめ

遺言の相談

以上、遺言執行者について解説しました。

その他、遺言の書き方の詳細はこちらの記事にくわしくまとめてありますので、こちらをご覧ください。

  1. ・関連記事 遺言の書き方【遺言の文例と気を付けるポイント】


遺言については、法律に定められた様式に違反していたり、記載が法律に反していたなどで無効になるリスクがあります。

そうならないように専門家に相談しながら書くことをおすすめします。

大阪の方なら、当事務所でも承っています。

  1. ・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の遺言書作成サポートサービス

 


というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。