相続の財産目録の書き方をわかりやすく解説【ひな型付き】

「遺言を書こうと思っています。自筆で遺言を書く場合でも、財産目録についてはパソコンで作成できると聞きました。財産目録の書き方を教えてください」



大阪の司法書士・行政書士の田渕です。お答えします。

遺言書を書く場合、公証人が作成する公正証書遺言と、自分で手書きする自筆証書遺言があります。

  1. ・関連記事 公正証書遺言と自筆証書遺言どっちがいい?【公正証書遺言がお勧め】


自筆証書遺言は、基本的に全文を手書きで書かないといけないのですが、財産目録についてはパソコンで作成してもいいことになっています。

この記事では、財産目録の書き方についてわかりやすく解説します。


相続の財産目録の書き方をわかりやすく解説【ひな型付き】

相続

財産目録とは、所有している財産をまとめたリストです。

遺言を書く場合、「妻○○に全財産を相続させる」としたり、「長男○○に不動産すべてを相続させる」「次男○○に預貯金をすべて相続させる」、あるいは「長男○○に全財産の3分の1、次男○○に全財産の3分の2を相続させる」などとしても構いません。

このような場合は、財産目録としてリスト化する必要はないと思われるかもしれませんが、相続人や受遺者(遺言で贈与を受ける人)にとっては、遺言を書いた人の財産をすべて把握しているとは限りません。

どのような財産を所有していたかわかりやすくするために、財産目録を作成しておいた方がいいです。


財産目録の書き方

財産目録には、主に次のような財産を記載します。

  1. ・不動産
  2. ・預貯金
  3. ・有価証券
  4. ・債権
  5. ・動産
  6. ・債務


財産目録のひな型はこちら。

  1. 財産目録


それでは、それぞれの財産の書き方を解説します。


財産目録の書き方(不動産)

不動産

財産目録に不動産を記載する場合、土地であれば次の事項を記載します。

  1. ・所在
  2. ・地番
  3. ・地目
  4. ・面積


建物については次の事項を記載します。

  1. ・所在
  2. ・家屋番号
  3. ・種類
  4. ・構造
  5. ・床面積


下記は記載例です。

 ⑴土 地

番号所  在地 番地目面積備 考
大阪市○○区○○町△番○宅地○○㎡固定資産評価額 ○○円
大阪市○○区○○町△番○○○㎡ 

 ⑵建 物

番号所  在家屋番号種類構造床面積備考
大阪市○○区○○町 △△番地○△番○居宅○○○○1階○○㎡ 2階○○㎡ 
大阪市○○区○○字 △△番地○△番○居宅○○○○1階○○㎡ 2階○○㎡ 

ポイントは、不動産は住所(住居表示)ではなく、土地であれば所在と地番、建物であれば所在と家屋番号で特定するということです。

地番とは、土地一筆ごとに割り当てられている番号のことです。

家屋番号とは、建物ごとに割り当てられている番号のことです。

土地が開発されるなどして、土地が合筆や分筆され、隣の土地なのに番号が飛んでいるような状態が出てきて、とても分かりにくくなったということで住居表示というものが実施されました。

郵便物の送付先など日常では住居表示(住所)が使われますが、正確に不動産を特定するためには、地番や家屋番号を記載する必要があります。

以上のような事項を正確に記載するためには、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、それを見ながら記載する必要があります。

また「別紙登記事項証明書の通り」などとして、登記事項証明書のコピーを添付しておくのでも構いません。

自筆証書遺言を法務局に保管する場合にも、登記事項証明書を財産目録として提出することが認められており、法務局のホームページでも「登記事項証明書の一部分や,コピーを財産目録として添付しても差し支えありません」と案内されています。

  1. ・外部リンク 自書によらない財産目録の例

 

また固定資産評価額を記載しておくと、財産全体の価値が把握しやすくなります。

日々変動する預貯金の額と違って、それほど変動するわけではないので記載しても問題はありません。


財産目録の書き方(預貯金)

預金

預貯金は、金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号を記載します。

預金額は、日々変動するので、記載しなくても構いません。

また「通帳のコピーの通り」などとして、通帳のコピーを添付しておくのでも構いません。

3 現金・預貯金

番号金融機関番号備考
○○銀行○○支店 普通預金○○○○ 
○○銀行○○支店 定期預金○○○○ 
○○信用金庫○○支店 定期預金○○○○ 
現金 ○○円  

 

財産目録の書き方(有価証券)

株券

有価証券は、品目・銘柄、種類、数量、証券会社の預り口座などを記載します。

4 有価証券

番号品目・銘柄種 類数量(金額)備 考
○○株式会社普通株式○○○株預り口座 ○○証券株式会社 ○○支店 口座番号 ○○○○
○○ファンド投資信託○○○口預り口座 ○○証券株式会社 ○○支店 口座番号 ○○○○
     


財産目録の書き方(債権)

債権は、債務者、債権額などを記載します。

5 債権

番号品目・銘柄種 類数量(金額)備 考
貸付金 ○○○○円債務者 ○○○○
○○会員権出資金○○○○円 
     
     

 

財産目録の書き方(動産)

車

動産は、品目や保管場所を記載します。

自動車の場合は、車名、型式、登録番号・車両番号なども記載します。

6 自動車

番号車 名型式登録番号・車両番号備 考
○○○○○○ ○○―○○保管場所:○○

7 その他の動産

番号品 目数量種 類備 考
絵画○点○○ 作保管場所:○○ 時価 ○○円
家財道具一式 保管場所:自宅


財産目録の書き方(債務)

借金

債務は、債権者名、債務の内容、金額などを記載します。

8 債務等

番号債務者名種類金額備 考
○○銀行住宅ローン○○円 
○○○○カードローン○○円 

 

財産目録の注意点

財産目録には、作成日を記載しておきましょう。

財産の内容は変動していくので、いつ時点での財産なのかが重要になるからです。

所有していた不動産を売却するなど、財産の内容が大きく変動する場合は、あらためて財産目録も作り直しましょう。

場合によっては、遺言についても書き直しを検討する必要があります。

 

わからない場合は専門家に相談

司法書士

財産目録の書き方がわからない場合は、司法書士など専門家に相談しましょう。

どういった遺言を書くのがいいのかも含めて、総合的にアドバイスしてくれる専門家に相談してみることをおすすめします。

大阪周辺の方であれば、当事務所でも承っています。

当事務所の遺言書作成サポートサービスの詳細はこちら。

  1. ・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の遺言書作成サポートサービス

 

まとめ

以上、財産目録の書き方について解説しました。

財産目録は、大事な家族に財産の内容を伝えるものです。

終活の一環として、自分が所有している財産をリスト化してみるのもいいでしょう。

というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。