遺産分割調停の流れ 【相続争いを解決する方法を解説します】

「父が亡くなり、相続人が集まって遺産分割について話し合ったのですが、話がまとまりませんでした。そこで遺産分割調停を申し立てたいのですが、遺産分割調停の手続きの流れがわかりません」

相続争いで悩んでいる人

  

こういった疑問にお答えします。

遺産分割調停とは、遺産分割協議が当事者だけでの話し合いでは解決しない場合に、家庭裁判所で、調停委員という裁判所の職員を間に挟んで話し合いをする制度です。

調停委員が当事者同士の言い分を整理してくれるので、当事者だけではなかなか話し合いができないという場合でも、話し合いがまとまる場合があります。

また感情的になったせいで、相手方の言うことは冷静に聞けなくても、第三者の言うことなら冷静に聞くことができるという場合があり、そんな場合に調停の制度を利用すれば、話し合いがまとまることもあります。

この記事では、遺産分割調停の申し立て手続きの流れについてわかりやすく解説します。

 

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停の流れは次の通りです。

  1. 遺産分割協議
  2. 遺産分割調停の書類を集める
  3. 家庭裁判所へ遺産分割調停の申し立て
  4. 遺産分割調停期日
  5. 合意の成立または不成立

 

順番にみていきましょう。

 

遺産分割協議

まずは、相続人同士だけで話し合いをすすめます。

まだ話し合う余地があるのに、いきなり遺産分割調停を申し立てたために、相手を刺激して、余計に話がこじれてしまう場合があります。

そこで、調停の前に、まず当事者同士で充分に話し合いをつくす必要があります。

遺産分割協議

それでも話し合いがすすまない場合や、相手が話し合いに応じない場合に、遺産分割調停の申し立てを検討することになります。

遺産分割協議や、だれが相続人になるかについては、こちらの記事をご覧ください。

  1. 関連記事 遺産分割協議とは何か?【遺産の分け方についての話し合い】

 

遺産分割調停の書類を集める

書類

遺産分割調停の申し立てに必要な書類は次の通りです。

書式を用意しましたので、ダウンロードしてお使いください。

  1. 遺産分割調停申立書
  2. 遺産目録
  3. 相続関係図
  4. 遺産分割調停申立書などの写し
  5. 事情説明書
  6. 連絡メモ(連絡先等の届出書)
  7. 戸籍謄本
  8. 住民票の写し(または戸籍の附票)
  9. 資料非開示の申出書


それでは、くわしく解説します。


遺産分割調停申立書

遺産分割調停申立書の記載例はこちらを参考にしてください。

  1. 遺産分割調停申立書の記載例

 

申立書には、被相続人(亡くなった方)の本籍、最後の住所、氏名、亡くなった日を書きます。

手数料として1200円分の印紙を申立書に貼り付けます。

申し立ての趣旨は、遺産の全部について調停を求めるか、一部の財産だけについて求めるか選択します。

遺産の全部について分割を請求するときは上の□にチェックをします。

一部の財産の分割を請求するときは下の□にチェックを入れ、遺産目録の番号を記載して、分割を求める財産を特定します。


特別受益とは、被相続人から相続人に対してされた生前贈与や遺贈(遺言で贈与すること)で、相続財産とみなされるものです。

相続人の中に、生前贈与や遺贈を受けた人がいる場合、他の相続人からすると不公平です。

そこで、相続人に対してされた贈与や遺贈は、相続財産とみなされることになります。

特別受益に関しては、こちらの記事にくわしくまとめました。

  1. 関連記事  特別受益とは【相続でもめやすい特別受益の話】


遺産分割調停申立書の特別受益の欄には、特別受益の主張(相続人の中に贈与や遺贈を受けた人がいるかどうか)、ある場合は、特別受益者(贈与や遺贈を受けた人)、特別受益の時期、特別受益の内容を書きます。

当事者目録には、申立人とそのほかの相続人の、住所・氏名・続柄(被相続人との関係)を記載します。

住所と送達場所(書類の送り先)が違う場合は、送達場所も記載します。


遺産目録

遺産のリストです。

遺産目録の記載例はこちらを参考にしてください。

  

被相続人が亡くなったときに持っていた不動産、有価証券、預貯金、投資信託、保険、債権を記載します。

不動産については、登記事項証明書(登記簿謄本)の通りに記載してください。

登記事項証明書は、法務局で取得することができます。


相続関係図

相続関係を説明する家計図のようなものです。

相続関係図の記載例はこちらを参考にしてください。

  1. 相続関係図の記載例

  

遺産分割調停申立書などの写し

遺産分割調停申立書、遺産目録、相続関係図は、コピーを相手方の人数分提出します。

写しは、当事者全員に送付されます。

 

事情説明書

相続関係について具体的な事情を説明するものです。

事情説明書の記載例はこちらを参考にしてください。

  1. 事情説明書の記載例

  

事情説明書は、相手方から請求がある場合、裁判所の許可により、相手方に読まれることがあるので注意が必要です。

6の「事前の預貯金債権の行使について」ですが、遺産分割が成立する前でも一定の範囲で、被相続人の預貯金を引きだすことができるのですが(民法909条の2)、実際に遺産分割前に預貯金を引き出したかどうか記載します。

預貯金

遺産分割前の預貯金の引き出しについては、こちらの記事でくわしく解説しているので、ご覧ください。

  1. 関連記事  相続したときの預金の仮払いの制度を解説します

 

9の寄与分とは、被相続人の事業を手伝ったり、金銭を出資したり、療養看護をつとめるなどして、被相続人の資産形成に貢献した人の取り分を多くする制度のことです(民法904条の2)。

相続財産の中から寄与分の額を引いて、貢献した相続人は、通常の相続分に加えて寄与分の額を取得することができます。

寄与分については、こちらの記事にまとめました。

  1. 関連記事  寄与分とは【相続人の寄与分が認められる場合と計算方法】


寄与分を主張する場合は、その旨記載します。


連絡メモ(連絡先等の届出書)

連絡メモは、連絡先の詳細や家庭裁判所に配慮を求める事項を記載します。

当事者目録には、当事者の住所・氏名しか記載しません。

これは申立書の写しが当事者全員に送付されることから、プライバシー保護のため、現実の居所や携帯電話番号、勤務先などについては記載しないことになっているのです。

そこで、詳細な連絡先などを申立書とは別に記載することになっています。


戸籍謄本

戸籍謄本は、次の戸籍謄本が必要になります。

  1. ・被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
  2. ・相続人全員の現在の戸籍謄本


また、ほかに以下の戸籍が必要になる場合があります。


被相続人の子(及びその代襲者)で亡くなっている方がいる場合

  1. ・被相続人の子(及びその代襲者)の出生から亡くなるまでの戸籍謄本


直系尊属が相続人になる場合

  1. ・直系尊属の中に亡くなっている方がいる場合、その直系尊属が亡くなった記載がある戸籍謄本

 

相続人が配偶者のみの場合

  1. ・被相続人の父母の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
  2. ・被相続人の兄弟姉妹に亡くなっている方がいる場合、その兄弟姉妹の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
  3. ・甥や姪に死亡している者がいる場合、甥や姪が亡くなった記載がある戸籍謄本

 

相続人が兄弟姉妹および甥や姪の場合

  1. ・被相続人の父母の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
  2. ・被相続人の兄弟姉妹に亡くなっている方がいる場合、その兄弟姉妹の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
  3. ・甥や姪に死亡している者がいる場合、甥や姪が亡くなった記載がある戸籍謄本


戸籍謄本は本籍地の市区町村の役所で取れます。

出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取る場合、申請するときに、「被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本をお願いします」とメモ書きして渡すと、その役所にある戸籍謄本を全部出してくれます。

転籍している場合は、さらにたどって取得する必要があります。


住民票の写し(または戸籍の附票)

被相続人と相続人全員の住民票の写しまたは戸籍の附票が必要になります(被相続人は住民票除票)。

住民票の写しは、住所地の役所で取得できます。

戸籍の附票とは住所地の変遷をまとめたもので、本籍地の役所で取得できます。


証拠書類など

遺産の証拠書類として、たとえば、次のような書類を提出します。

  1. ・ 不動産登記事項証明書(登記簿謄本)
  2. ・ 固定資産税評価証明書
  3. ・ 被相続人名義の預貯金の残高証明書
  4. ・ 株式・国債・有価証券などの残高証明書
  5. ・ 相続税申告書の写し
  6. ・ その他遺産目録記載の遺産があることを証明する資料


相続債務についての証拠書類としては、次の資料を提出します。

  1. ・ 金銭消費貸借契約書の写し
  2. ・ 返済予定表の写し


経緯に関する資料として、次のようなものがあれば提出します。

  1. ・ 遺言書の写し
  2. ・ これまでにされた遺産分割協議書の写し
  3. ・ 協議が不成立に終わった遺産分割協議書案の写し


資料非開示の申出書

相手方など関係者に知られたくない情報がある場合に提出します。


家庭裁判所へ遺産分割調停の申し立て

家庭裁判所

書類がそろったら、管轄の家庭裁判所に提出します。

提出は郵送でも構いません。

遺産分割調停の管轄は、相手方の住所地にある家庭裁判所または、当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条)。

相手方が複数いる場合は、そのうちのひとりの住所地の家庭裁判所を選択して申し立てます。

裁判所の管轄について、裁判所のサイトをご覧ください。


遺産分割調停期日

遺産分割調停の期日は、家庭裁判所で行われます。

当事者は家庭裁判所に出向かないといけません。

家庭裁判所には、調停室という調停を行う部屋があり、調停室には、調停委員という非常勤の公務員が2名ほどいます。

調停委員は、弁護士資格を有する人や専門的知識経験を有する人などの中から選任されます。

基本的には、当事者がひとりずつ調停室に呼ばれ、調停委員に自分の言い分を話し、調停委員がそれぞれの言い分を整理していきます。

場合によっては、当事者双方が調停室で同席することもあります。

1回の期日はだいたい2時間ほどで、そこで話がまとまらない場合は1~2カ月後に、次回期日が設定され、調停が進められていきます。

遺産分割調停では、次のような事項が話し合われます。

  1. ・ 誰が相続人か
  2. ・ 遺産の範囲
  3. ・ 遺言の有無と効力
  4. ・ 各当事者がどのような形で遺産を取得するのか
  5. ・ 寄与分や特別受益の主張について


上記のうち当事者間で争いがある事項について、話し合うことになります。

法律論を戦わせるというより、当事者間の話し合いで解決を目指す手続きになります。

 

合意の成立または不成立

話しがまとまって、当事者間に合意が成立した場合は、その内容が調停調書という書類にまとめられます。

遺産分割調停の中で、不動産や銀行預金を取得した相続人は、調停調書があれば不動産や銀行預金の名義変更することが可能です。

不動産の名義変更の手続きについては、こちらの記事をご覧ください。

  1. 関連記事  相続登記:相続した不動産の名義変更のやり方

 

合意が成立しなかった場合、次のいずれかの手続きに移ります。

  1. 審判手続き
  2. 調停に代わる審判

 

審判手続き

合意が成立せずに遺産分割調停が終了した場合、自動的に審判手続きに移行します。手数料納付の必要もありません。

審判とは、調停のように当事者が話し合って合意するのではなく、裁判官が判断して決定する手続きです。

この決定に不服があるときは、2週間に不服申し立てすることで、高等裁判所に再審理してもらうことができます。

2週間以内に不服申し立てしなかった場合や高等裁判所で不服申し立てが認められなかったときは、審判が確定します。

 

調停に代わる審判

家庭裁判所は、調停が成立しないときに、解決のため必要な審判をすることができます。

これを調停に代わる審判といいます。

通常の審判手続きより簡易で、迅速に解決することができます。

たとえば次のような場合に、調停に代わる審判がされます。

  1. ・ 多少の相違で合意が成立しない場合
  2. ・ 感情的な対立から、合意は拒否するが、裁判所の判断には従うと主張する当事者がいる場合

 

当事者は、調停に代わる審判に対して、2週間以内に異議申立てすることができます。

当事者が異議申立てをしたときは、調停に代わる審判は効力を失い、通常の審判手続きに移行します。

2週間以内に異議申立てしないときは、調停に代わる審判が確定します。

 

当事務所の書類作成サービス

以上のように、遺産分割調停は調停委員の調整のもと、当事者間で話し合う制度です。

代理人をたてずに、当事者だけの話し合いで解決できることができます。

とはいっても、申立書類を作成したり、添付書類を集めたりするのはなかなか大変です。

当事務所では、遺産分割調停に必要な書類作成をサポートしております。

代理人をたてた方がいいケースであれば、弁護士をご紹介させていただきます。

相続関係でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

それでは、今回は以上です。

お読みいただきありがとうございました