相続財産管理人の選任申立の手続きをわかりやすく解説します

債権者

「知人にお金を貸したのですが、その知人が亡くなったので相続人を調査したのですが、相続人はいないようです。貸したお金を回収するために相続財産管理人を選任したいのですが、どうすればいいかわかりません」


大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

相続財産管理人とは、相続人がいないときに、被相続人(亡くなった方)の債権者などに被相続人の債務を支払い、残った財産を国に納めるまでの手続きを行う人のことです。

亡くなった方に相続人がいない場合、誰も亡くなった方の遺産を管理していない状態になります。

亡くなった方の債権者は、遺産はあるのにそこから弁済を受けられない状態になってしまいます。

そこで亡くなった方の遺産を管理する相続財産管理人を選任すれば、相続財産管理人から債務を支払ってもらうことができます。

また特別縁故者が、財産分与を受けるためにも相続財産管理人を選任する必要になります。

この記事では、相続財産管理人の選任申立の手続きについてわかりやすく解説します。

 

相続財産管理人の選任申立の手続きをわかりやすく解説します

申立書

相続財産管理人は、利害関係人または検察官が家庭裁判所に選任を申し立てることによって、選任されます。

相続財産管理人は、弁護士や司法書士から選ばれます。

相続財産管理人には、相続人がいない場合や相続人がいるかどうか不明な場合に選任されるもの(民法952条)と、相続人がいるけども相続財産の保存のために選任されるもの(民法918条2項)があります。

どちらの場合も、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が選任します。

これらの人からの請求がなければ、相続財産管理人が選任されることはありません。

利害関係人とは、具体的には次のような方たちです。

  1. ・特別縁故者として財産分与を主張したい人
  2. ・債権を回収したい債権者
  3. ・相続財産について時効取得を主張したい人

 

相続財産管理人の選任が認められるための要件

相続財産管理人の選任が認められるための要件は次の通りです。

  1. ・相続が開始したこと
  2. ・相続人があることが不明
  3. ・相続財産が存在すること

 

相続が開始したこと

被相続人が亡くなったことにより相続が開始します(民法882)。

また失踪宣告により死亡したものとみなされた場合にも相続が開始します。

  1. ・関連記事 失踪宣告の手続きを司法書士がわかりやすく解説します

 

相続人がいることが明らかでないこと

戸籍上、相続人がいない場合や、相続人はいるものの、相続欠格、廃除、相続放棄のために相続する権利がある人がいない場合などです。

相続人がいなくても、包括受遺者がいる場合は、相続財産管理人は選任されません。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するからです(民法990条)。

  1. ・関連記事 包括遺贈と特定遺贈の違いをわかりやすく解説【遺言書の作成】

 

相続財産が存在すること

相続財産

相続財産管理人を選任するのは、債権者が債権を回収するためや、特別縁故者が財産分与を受けたいからということがほとんどです。

また相続財産管理人の選任手続きについても費用がかかってしまいます。

なので、それなりに財産がないと、費用や手間をかけて相続財産管理人を選任する意味がありません。

 

相続財産管理人の選任の申立ての必要書類

相続財産管理人の選任を申し立てるには、必要書類を作成、収集して家庭裁判所に提出する必要があります。

必要書類は次の通り。

  1. ・被相続人の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
  2. ・被相続人の父母の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
  3. ・被相続人の子や孫で死亡している人がいる場合、その子や孫の、生まれてから亡くなるまでのすべての謄本
  4. ・被相続人の直系尊属の死亡の記録のある戸籍謄本
  5. ・被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本
  6. ・代襲者として甥姪で死亡している人がいる場合、その甥姪の死亡の記録のある戸籍謄本
  7. ・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  8. ・財産についての資料
  9. ・相続関係図
  10. ・相続放棄申述受理証明書
  11.  その他にも、必要な資料の提出を求められる場合があります

 

被相続人の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本

戸籍謄本

被相続人(亡くなった方)の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本すべてが必

要になります。

戸籍謄本などは、本籍地の役所で取得できます。

生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本の取り方は別記事にくわしくまとめてありますのでご覧ください。

  1. ・関連記事 相続に必要な戸籍謄本の集め方、古い戸籍の読み方

 

被相続人の父母の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本

被相続人の父母の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本が必要になります。

 

被相続人の子や孫で死亡している人がいる場合、その子や孫の、生まれてから亡くなるまでのすべての謄本

もし被相続人の子どもや孫がいたが、すでに亡くなっている場合は、その子や孫の、生まれてから亡くなるまでのすべての謄本が必要になります。

 

被相続人の直系尊属の死亡の記録のある戸籍謄本

直系尊属とは、父母や祖父母などのことです。

被相続人の戸籍謄本に直系尊属の死亡の記録があれば、それで足ります。

 

被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本

もし被相続人の兄弟姉妹がいたがすでに亡くなっている場合は、その兄弟姉妹の、生まれてから亡くなるまでのすべての謄本が必要になります。

 

代襲者として甥姪で死亡している人がいる場合、その甥姪の死亡の記録のある戸籍謄本

代襲とは、本来相続人になるべき人が被相続人より先に亡くなっているために、その人の子どもが代わりに相続人になることです。

  1. ・関連記事 代襲相続とは?どこまで続くの?わかりやすく解説します

 

子どもや直系尊属がいないため兄弟姉妹が相続人になるケースで、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていると甥や姪が相続人になります。

  1. ・関連記事 甥や姪は相続人になる?【相続人になる場合があります】

 

この甥や姪も亡くなっている場合は、その甥姪の死亡の記録のある戸籍謄本が必要になります。

ただし、被相続人の戸籍謄本などに、甥姪の死亡の記録がある場合はそれで足ります。

 

被相続人の住民票除票または戸籍の附票

住民票

被相続人の住民票の除票か戸籍の附票が必要になります。

住民票の除票は、住所地の役所で取れます。

戸籍の附票とは、住所地の変遷をまとめたもので、戸籍とともに本籍地の役所で管理されています。

  1. ・関連記事 戸籍の附票とは何か?わかりやすく解説します

 

戸籍の附票は本籍地の役所で取れます。

 

財産についての資料

被相続人の財産についての資料です。

たとえば、次のようなものです。

  1. ・不動産登記事項証明書
  2. ・不動産が登記されていない場合は固定資産評価証明書
  3. ・通帳のコピーまたは残高証明書など
  4. ・申立人の利害関係を証明する資料(金銭消費貸借契約書写しなど)

 

相続関係図

被相続人の相続関係を図で表したものです。

書式はこちら。

  1. 相続関係図

 

相続放棄申述受理証明書

相続人の中で相続放棄した人がいる場合に必要になります。

相続放棄しても戸籍には記載されないため必要になります。

 

相続財産管理人の選任の申立て先

家庭裁判所

相続財産管理人の申立て先は、被相続人が亡くなったときの住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄については、家庭裁判所のホームページで確認してください。

  1. ・外部リンク 裁判所の管轄区域

 

書類の提出は、裁判所に持参してもいいですし、郵送でも構いません。

 

相続財産管理人選任後の手続き

相続財産管理人選任後の流れは次の通り。

  1. 相続財産管理人の選任
  2.        ↓
  3. 相続財産管理人が選任されたことを官報で公告
  4.        ↓
  5. 債権者および受遺者に対する弁済
  6.        ↓
  7. 相続人の捜索の公告
  8.        ↓
  9. 特別縁故者に対する相続財産の分与
  10.        ↓
  11. 共有物については、ほかの共有者のものになる
  12.        ↓
  13. 特別縁故者に分与されなかった財産は国に納められる

 

相続財産管理人選任の申立てを受けた家庭裁判所は要件を審査して、認められれば、相続財産管理人を選任し、そのことを公告します。

公告とは、官報という国が発行している新聞のようなものでお知らせすることです。

その後、相続財産管理人が、債権者・受遺者がいれば申し出るように公告し、申出があった債権者・受遺者に弁済します。

また相続人捜索の公告をして相続人を捜索し、相続人がいないことが確定した後に特別縁故者に財産が分与されます。

  1. ・関連記事 特別縁故者とは何か?要件などをわかりやすく解説します

 

そして残った財産は国庫に帰属されることになります。

くわしくはこちらの記事をご覧ください。

  1. ・関連記事 相続人がいない場合、遺産はどうなる?【最終的には国に納める】

 

まとめ

以上、相続財産管理人の選任申立の手続きについて解説しました。

相続財産管理人の選任を申し立てるためには、必要書類を作成、収集して家庭裁判所に提出する必要があります。

この書類の作成を自分でするのは大変という場合は、司法書士に依頼することができます。

大阪近辺の方であれば、当事務所でも承っています。

初回相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。