相続トラブルの実例と防ぐ方法を司法書士がわかりやすく解説【遺言】
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「私には子どもが3人いますが、子どもたちは仲が悪いです。私が亡くなった後、相続トラブルになるのではないかと不安です。どうすれば相続トラブルを防ぐことができますか?」
大阪の司法書士、行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
相続トラブルは誰にでも発生する可能性があります。一部の資産家だけの問題ではありません。
令和4年の統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割調停の総数6,857件のうち、遺産の価額が、1千万円以下が2,296件(33%)、1千万円超5千万円以下が2,935件(43%)、5千万円超1億円以下が802件(12%)、1億円超が573件(9%)、となっています。
・外部リンク 最 高 裁 判 所 事 務 総 局令和4年 司法統計年報(家事編)第52表
以上のように、相続トラブルの大半が遺産総額5000万円以下のケースです。
相続トラブルはどの家庭でも発生する可能性があるので、相続トラブルを防ぐためにしっかりと事前対策する必要があります。
この記事では、相続トラブルの典型例を紹介し、事前にできる対策や解決策を分かりやすく解説します。
相続トラブルの実例と防ぐ方法を司法書士がわかりやすく解説【遺言】
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相続トラブルの代表的なケースは次のとおりです。
・遺産分割で兄弟姉妹が対立
・相続人の中に、高齢の方や知的障害をお持ちの方がいる
・再婚して先妻の子どもと後妻がいる
・夫婦間に子どもがいない
・相続財産が不動産ばかりで分けられない
相続トラブルのケース(1) 遺産分割で兄弟姉妹が対立
遺産分割で子どもたちが対立してしまうケースです。
相続財産はどう分けるかについて相続人全員で話し合う必要があります。これを遺産分割協議といいます。
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そこで相続人である子どもたちが対立すると遺産分割協議ができず相続手続きがストップしてしまいます。
たとえば、長男が「自分が親の面倒を見ていたから、等分では納得できない」と主張し、他の兄弟姉妹と揉めてしまうなどのリスクがあります。
対策:
対策は、遺言書を作成することです。遺言書で誰に何をどのように相続させるか明確にしておけば、基本的にそのとお
りに分けることになり、遺産分割協議をする必要がないので、相続トラブルのリスクを下げることができます。
遺言書の書き方はこちら。
・関連記事 遺言書の書き方【遺言書の例文と気を付けるポイント】
相続トラブルのケース(2) 相続人の中に、高齢の方や知的障害をお持ちの方がいる
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相続人の中に、高齢の方や知的障害をお持ちの方がいると遺産分割協議ができなくなるおそれがあります。
上記の通り、相続財産はどう分けるかについて相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
ここで相続人の中に認知症や知的障害などで意思能力がないと遺産分割協議ができず、相続手続きがストップしてしまいます。
対策:
対策は、遺言書を作成することです。遺言書で誰に何をどのように相続させるか明確にしておけば、基本的にそのとお
りに分けることになり、遺産分割協議をする必要がありませんので、相続手続きをすすめることができます。
また、任意後見や家族信託という方法もあります。
任意後見とは、認知症などで契約や財産管理ができない方に代わって財産管理を行う後見人をあらかじめ指名しておく契約です。
家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理を託して、その人に財産を管理してもらう制度です。
・関連記事 任意後見とは 司法書士がわかりやすく解説【成年後見との違い】
・関連記事 家族信託とは何か【デメリットも含めてわかりやすく解説】
・関連記事 任意後見制度と家族信託の違いを司法書士がわかりやすく解説
相続トラブルのケース(3) 再婚して先妻の子どもと後妻がいる
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先妻との間に子どもがおり、後妻や後妻との間に子どもがいる場合です。
この場合、先妻との間の子どもと、後妻や後妻との間の子どもで遺産分割協議をすることになります。
非常にトラブルになりやすいケースです。
対策
対策として遺言書を書いておきましょう。特に公正証書遺言を書くことをおすすめします。
・関連記事 公正証書遺言と自筆証書遺言どっちがいい?【公正証書遺言がお勧め】
手書きで書く自筆証書遺言の場合、法務局に保管した場合を除き、検認といい手続きが必要になります。
検認とは、家庭裁判所に遺言書を持ち込んでする証拠保全のための手続きです。
・関連記事 遺言書の検認手続きの流れをわかりやすく解説します
この検認手続きは、相続人全員に通知が行きます。
なので、たとえば後妻や後妻との子供だけに相続させる遺言を書いた場合、先妻との子どもにも、亡くなったことや遺言の存在が知られてしまい、遺留分を請求される可能性があります。
・関連記事 遺留分とは?司法書士がわかりやすく解説【相続人の取り分】
公正証書遺言の場合、検認手続きが不要なので、後妻や後妻との子供だけに相続させる遺言を書いた場合でも、先妻との子どもに、亡くなったことや遺言の存在が知られずに相続手続きを行うことができます。
相続トラブルのケース(4) 夫婦間に子どもがいない
夫婦間に子どもがいない場合、直系尊属(親や祖父母)が相続人になります。直系尊属もいないと、兄弟姉妹または甥姪が相続人になります。
兄弟姉妹や甥姪間などの間で仲がいい場合はいいですが、疎遠になっている場合は、相続トラブルに発展する可能性があります。
対策
これも対策としては遺言を書くことです。子どもがいないご夫婦は、お互いが、自分が亡くなったときは全財産を配偶者に相続させるという夫婦相互遺言を書いておきましょう。
・関連記事 【遺言書】夫と妻がお互いに全財産を相続させる遺言の書き方
こうすることで、縁が薄い兄弟姉妹に財産が行ってしまうことはなくなります。
なお兄弟姉妹には遺留分はありません。
相続トラブルのケース(5) 相続財産が不動産ばかりで分けられない
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親の財産が自宅や土地などの不動産ばかりで、現金がほとんどないケースです。
相続財産が預金や現金だけなら、分けやすいですが、不動産がある場合、物理的に分けることができず、どのように遺産を分けるかで対立する可能性があります。
このような場合の遺産の分け方として不動産を売却して代金を分ける換価分割や、相続人のうち誰かが不動産を取得して、不動産を取得する相続人から他の相続人にお金(代償金)を支払う代償分割という方法があります。
・関連記事 代償分割とは?遺産分割協議書の書き方【遺産分割の方法】
しかし、この不動産の分け方を巡って対立可能性があります。兄は「家を売るしかない」と主張する一方、弟は「実家を残したい」と反対するようなケースです。
対策:
不動産をどうするのかについて、生前から家族間で話し合っておくことが重要です。
また生前に不動産を売却・贈与したり、リバースモーゲージなどを検討してみましょう。
相続トラブルを防ぐための4つの事前対策
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相続トラブルを防ぐための事前対策として次の方法があります。
・公正証書遺言
・生前贈与
・家族で事前に話し合う
・専門家に相談する
相続トラブルを防ぐための事前対策(1) 公正証書遺言
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遺言書がないと、相続人同士で遺産分割協議をする必要があります。
ここで話し合いがこじれると相続トラブルになるのです。
遺言書があれば、基本的には遺言書の通りに分けることになるので、相続トラブルを防ぐことができます。
遺言書には自分で手書きで書く自筆証書遺言と、公証人が作成し公証役場で保管する公正証書遺言があります。
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自筆証書遺言の場合、字が汚くて読めなかったり、あいまいな記載のために解釈を巡って争いになってしまうこともあります。
また自宅などに保管していると紛失したり、破棄されたりする危険もあります。
公正証書遺言であれば、そのようなリスクを下げることができ安心です。
相続トラブルを防ぐための事前対策(2) 生前贈与
親が生前に財産を贈与しておく方法です。
ただし、一部の相続人に多く贈与するなど不公平な生前贈与をすると、後々トラブルになる可能性もあります。
また贈与税の基礎控除(年間110万円)を超える贈与には贈与税がかかります。
相続トラブルを防ぐための事前対策(3) 家族で事前に話し合う
相続の話は避けがちですが、「家族会議」を開き、家族間でそれぞれの思いを共有することが重要です。
相続トラブルを防ぐための事前対策(4) 専門家に相談する
司法書士などの専門家に相談するのも有効です。
相続トラブルについてはケースバイケースで、どんなケースがトラブルになるかは一概には言えないので、専門家に相談すると安心です。
「うちも相続トラブルが起こりそう…」と不安な方は、専門家に相談してみましょう。
大阪の方なら当事務所でも承っています。
相続のプロが、あなたの状況に合わせた最適な解決策をアドバイスします。
初回相談無料ですので、お気軽にご相談ください。
お問い合わせは、電話(06-6356-7288)かメールフォームからお願いします。
相続トラブルになった場合の解決策
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もし相続トラブルになってしまった場合は、遺産分割調停で解決を図ります。
遺産分割調停とは、遺産分割について当事者だけでの話し合いでは解決しない場合に、家庭裁判所で、調停委員という裁判所の職員を間に挟んで話し合いをする制度です。
詳しくはこちら。
・関連記事 遺産分割調停の流れは?【必要書類は?合意できなかったら?】
まとめ
相続トラブルは、事前の準備で防ぐことができます。
・公正証書遺言
・生前贈与
・家族で事前に話し合う
・専門家に相談する
これらを実践し、スムーズな相続を実現しましょう!