古い遺言は時効で無効になるのか【時効にはなりませんが…】

「先日亡くなった父の遺言を発見しました。しかし日付を見るとかなり古いのですが、遺言は時効で無効にならないのでしょうか」

相続について相談

 

大阪の司法書士・行政書士の田渕智之です。こういった疑問にお答えします。

結論から申し上げますと、基本的に遺言は時効で無効になることはありません。

ただし、遺言はいつでも書き直すことができ、古い遺言と後に書かれた遺言と内容が抵触するときは、古い遺言は抵触する部分について無効になります。

この記事では、古い遺言は時効で無効になるのかについてわかりやすく解説します。


古い遺言は時効で無効になるのか【時効にはなりませんが…】

遺言は時効で無効になることはありません。

なので、遺言はいつ書かれたものであっても、最後に書かれたものが有効なものとなります。

ただし、遺言はいつでも書き直すことができます。

前の遺言が後に書いた遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条)。

遺言を書いた後でも気が変わる場合があるため、いつでも遺言を書き直せるようになっています。

以上のように、古い遺言であっても有効ですが、それよりも後に作成された遺言があり、内容が抵触するときは古い遺言は抵触する部分について無効になります。

公正証書遺言

なので、発見した遺言より後に作成された遺言があるか確認する必要があります。

遺言の中でも公証人が作成し、公証役場に保存される公正証書遺言というタイプの遺言については、遺言があるかどうか調べることができます。

平成元年(1989年)以降に作られたものについては、氏名、生年月日、作成した日といった情報がデータベース化されていますので、全国どこの公証人役場でも、問い合わせできます。

 

遺留分侵害額請求権には時効がある。

遺言には時効はありませんが、遺留分侵害額請求権については時効があります。

遺留分侵害額請求権とは、遺言や贈与によって、遺留分を下回る財産しかもらえなかった相続人が、遺留分に足りない分の金銭を請求することができる権利のことです。

くわしくは、こちらの記事をご覧ください。

・関連記事 遺留分とは?司法書士がわかりやすく解説【相続人の取り分】


遺留分侵害額の請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間、相続開始の時から十年を経過したときに消滅します。


遺言を使って相続財産の名義変更手続きをする場合

発見した遺言に基づいて相続財産の名義変更を行う場合、遺言をそのまま使用できず、検認という手続きが必要になる場合があります。

検認とは、遺言の改ざんなどを防ぐために家庭裁判所で行われる証拠保全手続です。

遺言には、主に次のように分類することができます。(ほかにも秘密証書遺言というものがありますが、ほとんど利用されていないので説明を省きます。)

① 公正証書遺言

② 法務局に保管されている自筆証書遺言

③ ②以外の自筆証書遺言


公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場に保管される遺言です。

自筆証書遺言は、自分が手書きで作成する遺言です。

自筆証書遺言は法務局に保管することができます。

上記の遺言のうち、検認が必要なのは、③の法務局に保管されていない自筆証書遺言です。

公正証書遺言や、法務局に保管されている自筆証書遺言は、公証役場や法務局といった公的機関に保管されているので、改ざんのおそれがないからです。

検認の手続きについては、くわしくはこちらの記事をご覧ください。

・関連記事 遺言書の検認手続きの流れをわかりやすく解説します


遺言に基づいて、不動産の名義変更手続きを行う場合の手続きについては、こちらの記事をご覧ください。

・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】

 

まとめ

以上、古い遺言は時効で無効になるのかについて解説しました。

まとめると次の通り。

・古い遺言が時効で無効になることはない

・遺言はいつでも書き直すことができる

・古い遺言と後に書かれた遺言と内容が抵触するときは、古い遺言は抵触する部分について無効

 

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というわけで、今回は以上です。

お読みいただきありがとうございました。

 

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