亡くなった人の財産を調べる方法 相続財産の調査を解説
「先日、父が亡くなりました。父は実家の土地建物のほかにも、近所に不動産を所有していたと聞きます。しかし、その場所は正確には分かりません。また父の銀行預金もすべて把握しているわけではありません。これらの財産について調べる方法がありますか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
被相続人が亡くなった場合に、相続財産のすべてを把握していないときは、まず相続財産を調査する必要があります。
この記事では、亡くなった人の財産を調べる方法について、わかりやすく解説します。
目次
亡くなった人の財産を調べる方法 相続財産の調査を解説
相続人は被相続人(亡くなった方)の財産をすべて相続します。
以下のような財産の種類があります。
- ・動産
- ・不動産
- ・預貯金、有価証券
- ・債務(借金)
プラスの財産だけでなく、債務(借金)も相続するということに注意が必要です。
これらの財産のうち、動産については自宅にあるものがほとんどなので、調査が必要になることはあまりありません。
しかし、不動産、預貯金、有価証券、債務については、相続人が把握していない場合があり、この場合は財産調査が必要になります。
要点は次の通り。
- ・不動産の調査は、名寄帳、納税通知書で調べる
- ・預貯金、有価証券の調査は、金融機関に照会
- ・債務(借金)の調査は、信用情報機関に照会
くわしく解説します。
不動産の調査の方法
亡くなった方の不動産を調べる方法は、固定資産税納税通知書で調べる方法と、名寄帳で調べる方法があります。
亡くなった人の財産を調べる方法1 固定資産税納税通知書で調べる方法
固定資産税納税通知書とは、固定資産税の算定の基準となる不動産の評価額や納付すべき額、支払い期限などを通知する書類です。
- ・関連記事 大阪市 固定資産税・都市計画税の通知書類について
納税通知書は、毎年1月1日時点での登記簿に登記されている所有者に毎年4月~5月頃に郵送されてきます。
被相続人が暮らしていた自宅の郵便物の中に納税通知書があれば、被相続人が所有していた不動産を確認することができます。
亡くなった人の財産を調べる方法2 名寄帳で調べる方法
名寄帳とは、納税義務者が市町村内に所有する土地・建物の一覧が記載されているものです。
固定資産課税台帳ともいいます。
名寄帳は、市町村がその市町村内の土地および家屋について作成します。
被相続人の名寄帳を見れば、被相続人がその市町村に所有していた不動産の所在を調べることができます。
名寄帳の写しは、各市町村の役所で請求することができます。
しかし自治体によっては、市税事務所で請求する必要がある場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
名寄帳の写しを請求する場合、申請書に必要事項を記載して提出します。
申請書は役所の窓口に置いてあるはずです。
相続人が被相続人の名寄帳の写しを請求する場合は、相続を確認できる書類を添付する必要があります。
相続を確認できる書類とは、戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写しなどです。
名寄帳は、単独で所有している不動産と他の人と共有の不動産は、別々に作成されているため、別々に名寄帳の写しを請求する必要があるので注意が必要です。
また名寄帳は市町村が作成するものなので、その市町村内にある不動産しか調べることができません。
そこで相続財産の調査をするためには、被相続人が不動産を所有していた可能性がある市町村すべてに名寄帳の写しを請求する必要があります。
預貯金、有価証券の調査の方法
すべての金融機関に対して一度に取引履歴を請求することはできないので、金融機関ごとに請求していくしかありません。
被相続人の自宅に、通帳、証書、金融機関からのハガキがないか確認し、あれば、その金融機関に取引履歴証明書の発行を請求します。
まったく手がかりがない場合、被相続人の自宅周辺にある金融機関や、ゆうちょ銀行、メガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)に照会をかけてみましょう。
取引履歴証明書を請求する場合の必要書類は金融機関ごとに違う場合がありますが、おおむね次の書類が必要になります。
- ・被相続人の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)
- ・相続人全員の戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)
- ・相続人の印鑑証明書
戸籍謄本の取り方についてはこちら。
法定相続情報一覧図の写しとは、法務局が発行する相続関係を図で表したものです。
一度、戸籍謄本などの書類を法務局に提出すれば、法務局が法定相続情報一覧図の写しを発行してくれるので、いちいち戸籍謄本の束を各所に提出しなくてもすみます。
法定相続情報一覧図についてはこちら。
有価証券については、証券会社に対して残高証明書の発行を依頼します。
被相続人の自宅に、証券会社からのハガキがないか確認しましょう。
債務(借金)の調査の方法
財産は、プラスのものだけでなく、マイナスのもの、つまり債務(借金)も相続財産に含まれます。
なので、相続財産を調査する場合は、債務(借金)も調査する必要があります。
借金については、全国銀行協会や信用情報機関(CIC、JICC)に信用情報の開示を請求します。
信用情報とは、クレジットやローンなどの借金に関する取引事実を登録した個人情報です。
全国銀行協会は、銀行や、信用金庫・信用組合が加盟している団体です。
CICは、クレジットカード会社や消費者金融が加盟している信用情報機関です。
JICCは、消費者金融から銀行まで、いろんな金融機関が加盟している信用情報機関です。
必要書類は、申込書、本人確認書類、相続関係を証明できる戸籍謄本、手数料です。
くわしい開示手続きは、それぞれのホームページでご確認ください。
- ・外部リンク 全国銀行協会 本人開示の手続き
- ・外部リンク CIC 情報開示までの流れ
- ・外部リンク JICC 信用情報の開示申し込みについて
もし、プラスの財産があまりなく、借金が多額である場合は、相続放棄も検討しないといけません。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしないといけません。
・関連記事 相続放棄の手続きをわかりやすく解説【必要書類や注意点など】
そのため、もし被相続人に借金がある可能性がある場合は、早めに債務の調査をしないといけないので、ご注意ください。
自分で財産調査をするのが難しいとき
被相続人が財産目録を作ってくれていれば楽なのですが、財産目録がなく、相続人が相続財産を把握していないときは、財産を調べるだけでも、かなり大変かと思います。
もし、財産調査を自分でやるのが難しい場合は、司法書士に相談してみることをおすすめします。
財産調査から名義変更の手続きまで一貫してお任せすることができます。
大阪周辺の方なら、当事務所でも承っています。
くわしくはこちら。
まとめ
以上、亡くなった人の財産を調べる方法について解説しました。
まとめると、次の通り。
- ・不動産の調査は、名寄帳、納税通知書で調べる
- ・預貯金、有価証券の調査は、金融機関に照会
- ・債務(借金)の調査は、信用情報機関に照会
というわけで今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。