「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いたら?
ある日突然、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という見慣れない封書が届いたら、多くの方が驚かれることでしょう。「詐欺ではないか」「なぜ自分に届いたのか」と不安に感じる方も少なくありません。
この通知は、法務局が実施している「長期相続登記等未了土地解消事業」に基づいて送付される正式な行政文書です。
本記事では、通知の内容や届く理由、そして受け取った後にどのように対応すればよいのかを、相続登記の実務を扱う司法書士の視点から分かりやすく解説します。
「長期間相続登記等がされていないことの通知」が届いたら?

「長期間相続登記等がされていないことの通知」は、法務局が実施している事業の一環として送られてくるものです。
登記簿上の所有権の登記名義人が亡くなっているにもかかわらず、長期間にわたって相続登記(名義変更)がされていない土地について、法務局が戸籍等を調査し、その土地の法定相続人にあたる方へ「あなたがこの土地の法定相続人の地位にあります」と知らせる内容になっています。
相続登記とは、相続した不動産の名義変更のことです。相続登記は相続人の義務になっており、相続しないと10万円以下の過料が課せられる可能性があります。
・関連記事 相続登記とは何か?基本を司法書士がわかりやすく解説
なぜ自分に通知が届いたのか

通知の対象となるのは、次のような状態にある土地です。
・登記簿上の所有者(登記名義人)がすでに死亡している
・死亡から長期間(現行制度では10年以上)が経過している
・その間、相続登記等の手続きが一切行われていない
法務局はこうした土地について、戸籍謄本などの資料をもとに法定相続人を調査し、「法定相続人情報」という一覧図を作成した上で、判明した相続人の中の1名に通知を送付しています。
法務局が調査で判明した相続人が複数いる場合でも、通知は代表として任意の1名にのみ送付される仕組みです。そのため、「なぜ自分だけに届いたのか」「他の相続人はどうなるのか」といった疑問を持たれるのは自然なことです。
通知に記載された物件に心当たりがない、あるいは疎遠な親族の土地であるというケースも珍しくありません。これは、亡くなった方との関係が数世代前にさかのぼる場合や、相続が複数回にわたって発生している(数次相続)場合に起こりやすい状況です。
通知が届いたらまず確認すべきこと

通知を受け取ったら、以下の順序で状況を整理することをお勧めします。
1. 通知に記載された不動産の登記事項証明書を取得する
最寄りの法務局で、対象となっている土地の登記事項証明書(1通600円)を取得し、現在の登記状況を確認します。
2. 「法定相続人情報」の提供を受ける
法務局はこの事業のために、登記名義人からの相続関係を家系図のようにまとめた「法定相続人情報」を作成しています。通知を受け取った方であれば、最寄りの法務局でこの情報を無料で入手できます(通知に同封されている提供依頼書を利用します)。
法定相続人情報の「作成番号」を相続登記の申請書に記載すれば、原則として戸籍謄本等の収集を省略できるという大きなメリットがあります。相続人の範囲や続柄を確認する上でも重要な資料です。
3. 相続人間で今後の方針を話し合う
法定相続人情報で相続関係が明らかになったら、他の相続人と連絡を取り、遺産分割協議を進めるのか、法定相続分どおりに登記するのかなど、今後の方針を話し合います。
相続登記の義務化と期限に注意

令和6年4月1日から、相続登記の申請は法律上の義務となりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
制度が始まる前、つまり令和6年4月1日より前に発生していた相続についても義務化の対象となっており、この場合は令和9年3月31日までに登記を申請する必要があります。今回の通知を受け取った方の多くは、まさにこの経過措置の期限が迫っているケースに該当します。
正当な理由なく期限内に相続登記をしない場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。過料は刑事罰ではなく行政上の秩序罰ですが、金銭的な負担が生じる点には変わりありません。
・関連記事 相続登記義務化を司法書士が解説 いつから?
期限内の登記が難しい場合は「相続人申告登記」も選択肢に

遺産分割協議がまとまらない、必要書類の収集に時間がかかるなど、期限内に正式な相続登記をすることが難しい場合には、簡易的に登記申請義務を履行できる「相続人申告登記」という制度があります。これは、自分が登記名義人の相続人であることを法務局に申し出るだけで済む手続きで、法定相続人情報の作成番号を活用することもできます。
ただし、相続人申告登記はあくまで義務を暫定的に履行する制度であり、不動産を売却したり担保に入れたりする際には、改めて正式な相続登記が必要になる点に注意が必要です。
・関連記事 相続人申告登記とは?司法書士がわかりやすく解説
通知を放置するとどうなるか

相続登記をしないまま放置すると、次のような問題が生じます。
・相続人がさらに亡くなることで、次の相続(数次相続)が発生し、権利関係が複雑化する
・相続人の人数が増えることで、遺産分割協議がまとまりにくくなる
・将来、不動産を売却しようとしても、相続登記が済んでいなければ売却できない
・子や孫の世代に、この問題がそのまま引き継がれる
今回の通知は、こうした将来のトラブルを未然に防ぐための機会と捉えることができます。
相続するつもりがない場合はどうすればよいか

「この土地を相続するつもりはない」という場合には、主に次の方法が考えられます。
・相続放棄
・遺産分割協議
・相続土地国庫帰属制度
相続放棄
自分が相続人であることを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で手続きを行います。相続放棄が認められると、その相続に関して初めから相続人でなかったものとして扱われます。
・関連記事 相続放棄の手続きをわかりやすく解説【必要書類や注意点など】
遺産分割協議
相続人全員で話し合い、他の相続人が不動産を取得する内容の遺産分割を行う方法です。
・関連記事 遺産分割協議とは何か?【遺産の分け方についての話し合い】
相続土地国庫帰属制度
一定の要件を満たす土地について、負担金を納付することで所有権を国に移転できる制度です。
・関連記事 相続土地国庫制度とは?司法書士が法務省よりわかりやすく解説
いずれの方法も、相続関係や不動産の状況によって適否が異なりますので、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q. 通知は詐欺ではありませんか?
A. 法務局が所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づいて実施している正式な事業の一環として送付されるものです。内容に不安がある場合は、通知に記載された連絡先(法務局)や、お近くの司法書士にご確認ください。
Q.通知が届いたということは、その土地が公共事業の対象になっているのですか?
A.必ずしも公共事業の対象になっているとは限りません。
Q. 他にも相続人がいるはずなのに、なぜ自分にだけ届いたのですか?
A. 法定相続人が複数いる場合、法務局は任意の1名に通知を送付する運用となっています。他の相続人の有無については、法定相続人情報を取得することで確認できます。
Q. すでに相続放棄をしています。どうすればよいですか?
A. 相続放棄をしている場合、その旨を通知元の法務局に連絡すれば大丈夫です。
Q. 通知に記載された土地に心当たりがありません。
A. 登記事項証明書や地図(公図)を取得することで、土地の内容やおおまかな位置・形状を確認できます。数世代前の相続に由来する土地であるケースも多くあります。
Q. 相続登記の期限を過ぎるとどうなりますか?
A. 正当な理由なく期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。期限内の対応が難しい場合は、相続人申告登記など暫定的な手続きも検討できます。
自分で手続きする場合と司法書士に依頼する場合

相続登記の申請は、ご自身で書類を集めて法務局に申請する方法と、司法書士に依頼する方法があります。
ご自身で進める場合は、法定相続人情報や遺産分割協議書を取得、作成した上で、法務局の登記手続案内(予約制)を利用しながら書類を作成することになります。
一方で、次のようなケースでは司法書士への依頼を検討されることをお勧めします。
・数次相続が発生していて相続人の範囲が複雑
・相続人の中に音信不通の方や海外在住の方がいる
・仕事や介護等で平日の法務局窓口に行く時間が取れない
大阪の方なら当事務所でも承っております。当事務所(田渕司法書士・行政書士事務所/大阪市都島区・京橋エリア)では、こうした通知への対応を含む相続登記のご相談を無料で承っております。平日夜間や土日のご相談にも柔軟に対応しております。
初回相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら。
・電話 06-6356-7288
まとめ
「長期間相続登記等がされていないことの通知」は、法務局が所有者不明土地の解消を目的として送付する正式な通知です。驚かれる方も多いですが、これは相続登記の義務化が進む中で、放置されてきた不動産の権利関係を整理する良いきっかけになります。
通知が届いたら、まずは登記事項証明書と法定相続人情報を取得し、相続人間で話し合いを始めることが大切です。期限内の対応が難しい場合や、相続関係が複雑な場合は、早めに司法書士へ相談することをお勧めします。
人気の関連ページ
・相続不動産の売却とは?流れ・注意点・税金まで専門家がわかりやすく解説

