【不動産登記】時効取得した不動産の名義変更の手順

「私が長年、占有している土地について取得時効が成立しましたので、登記を私の名義にしたいと思います。どうすればいいでしょうか?」

時効取得した不動産の名義変更のやり方がわからない人


こういった疑問にお答えします。

所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を長年占有すると、時効によりその物の所有権を取得することができます(民法162条)。

また時効取得した不動産については、登記を自己の名義に変更することができます。

この記事では不動産を時効取得した方向けに、時効取得した不動産の名義変更の手順について登記の専門家である司法書士がわかりやすく解説します。


【不動産登記】時効取得した不動産の名義変更の手順

不動産を時効取得した場合に名義を変更するには、登記を申請する必要があります。

時効取得した不動産の登記手続きは、以下の手順で行います。

 

  1. 時効取得しているか確認
  2. 処分禁止の仮処分
  3. 所有権移転登記手続請求訴訟
  4. 所有権移転登記


時効取得しているか確認

土地

長年、土地を占有していても時効取得しているとは限りません。

まずは時効取得しているか確認しましょう。

時効取得の要件などは、別記事にまとめていますので、ご覧ください。

  1. ・関連記事 時効取得とは何か【長年占有すると所有権を取得できます】


処分禁止の仮処分

次に処分禁止の仮処分という手続きを取る必要があります。

処分禁止の仮処分とは、時効によって不動産を失った相手方が、その土地を第三者に売却してはならない旨を裁判所に命じてもらう手続きです。

登記は、時効によって不動産を取得する人と、不動産を失う人が共同して申請することが原則です。

不動産を取得する人だけでなく、不動産を失う人が共同して申請することで虚偽の登記申請を防ごうというのが、共同申請が採用されている理由です。

時効で不動産を失う人は、自分の意思に反して不動産を失うわけなので、ほとんどの人は登記に協力してくれません。

その場合、時効取得による所有権移転の登記をするためには、訴訟を起こして、登記手続きを命ずる判決を取って登記するしかありません。

裁判

しかし、登記を求める訴訟には、相当な時間がかかってしまいます。

訴訟を起こしている間に、相手方が別の第三者に土地を売却して、その第三者名義に所有権移転登記してしまうと、せっかく時効取得したのに、その第三者に所有権を主張することができなくなります。

そこで相手方がそのようなことをしないように、処分禁止の仮処分の手続きを取る必要があります。

 

仮処分の命令を得ると、仮にそれ以降に相手方が第三者に不動産を売却して登記をしたとしても、その後に訴訟で所有権移転登記を命じる判決を得た時効取得者に対しては、第三者への売却による登記は無効と扱われます。

このように訴訟前に処分禁止の仮処分の手続きをとっておく必要があるのです。


所有権移転登記手続請求訴訟

上記の通り、時効で不動産を失う人は、ほとんどの場合、登記に協力してくれませんので、所有権移転登記手続請求訴訟を起こす必要があります。

所有権移転登記を命じる判決を得ると、その判決をもって、時効で不動産を取得した人が単独で所有権移転登記をすることができます。

 

所有権移転登記

登記

所有権移転登記は、申請書を作成して、必要書類を集めて、法務局に申請してします。

申請書のひな形はこちらです。

  1. 申請書

 

原因の日付については、占有を開始した日です。

時効が成立した日ではないので注意してください。

必要書類は、登記原因証明情報と、権利者(不動産を取得した人)の住所証明情報です。

登記原因証明情報とは、訴訟を起こした場合は、判決書の正本です。

住所証明情報は、住民票の写しなどです。


登記しないとどうなるか

もし不動産を時効取得したとしても登記しないでいるとその不動産を失う可能性があります。

時効取得したとしても登記しない間に、相手方が別の第三者に土地を売却して、その第三者名義に所有権移転登記してしまうと、その第三者には時効取得を主張することができなくなります。

結果、不動産を失うことになります。

もっともそれからさらに占有を続けていると、再度時効取得することも可能です。


登記は司法書士に依頼できる

司法書士

登記は、自分ですることもできますが、大変だったり、時間がなかったりして自分ですることが難しい場合は司法書士に依頼することもできます。

また訴訟に必要な訴状などの書類の作成も司法書士に依頼することができます。

大阪周辺でしたら当事務所でも承っています。

 

まとめ

以上、時効取得した不動産の名義変更の手順について解説しました。

それでは今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。