相続登記に権利証は不要?司法書士が解説【基本的は不要】

相続登記について相談している人

「先日父が亡くなり自宅を相続しました。そこで、相続登記したいのですが、自宅の権利証がどこを探しても見つかりませんでした。権利証がないと相続登記できないのでしょうか?」



大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

実は、基本的には、権利証がなくても相続登記することができます。

しかし、例外的に権利証が必要になる場合もあります。

この記事では、相続専門の司法書士が、権利証がなくても相続登記はできるのかわかりやすく解説します。

  

相続登記に権利証は不要?司法書士が解説【基本的は不要】

基本的には、後で説明する例外の場合を除いて、権利証がなくても相続登記することができます。

権利証とは、不動産の権利があることを証明する書類のひとつです。

権利証とは通称で、正式には、登記済証または登記識別情報といいます。

平成17年以前は登記済証といいましたが、平成17年から平成20年にかけて、「登記識別情報」という新しいタイプの権利証に切り替わりました。

登記済証も登記識別情報も登記申請を司法書士に依頼していた場合は、下の画像のような表紙に綴じられていると思います。

権利証 田渕司法書士事務所

売買や贈与など、不動産を処分するときの登記申請には、権利証が必要になりますが、相続登記には必要ありません。

相続は、被相続人の死亡という事実により発生するもので、処分ではありません。

相続の事実は、戸籍謄本などの書類によって証明することができるので、相続によって不動産を取得した場合は、権利証は必要ありません。

戸籍謄本

 

そのほかの、相続登記に必要な書類については、こちらの記事にまとめましたので、よろしければご覧ください。

  1. ・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】

  

相続登記に権利証が必要な場合

権利証

以上のように基本的には、相続に関する登記には権利証は必要ありません。

しかし、相続の場面でも、権利証が必要になることがあります。

次の場合です。

  1. 1 法定相続分の登記をした後に、遺産分割協議が成立した場合
  2. 2 登記簿上の住所と最後の住所が違っていて、戸籍の附票などで住所のつながりが証明できない場合
  3. 3 遺贈の場合

 

それではくわしく解説しましょう。

 

相続登記に権利証が必要な場合1 法定相続分の登記をした後に、遺産分割協議が成立した場合

遺産分割協議

普通は遺産分割協議をして、誰が不動産を相続するか決めてから相続登記をします。

その方が登記申請するのが一度で済みますから、手間もかからず、登録免許税も安く済みます。

しかし、なんらかの理由で、法定相続分(法律で決められた割合)で相続人同士共有する登記を先にした後、遺産分割協議が成立した場合、遺産分割による権利の移転登記をする必要があります。

この遺産分割による権利の移転登記をするときに、権利証が必要になります。

 

必要な権利証は、法定相続分での相続登記をした際に発行された、新しい権利証です。

被相続人(亡くなった方)が不動産を取得した際に発行された、古い権利証は必要ありません。

もし遺産分割による権利の移転登記の際に権利証がない場合には、次のいずれかの方法によって登記申請することになります。

  1. ・事前通知
  2. ・資格者代理人による本人確認情報の提供
  3. ・公証人による認証

 

事前通知

事前通知とは、権利証が必要な不動産登記の申請をする場合において、権利証を提出できないときに、法務局がする本人確認の手続きです。

郵送で事前通知書という書類が申請した人の住所に送られてくるので、それに署名押印して返信することで本人確認を行います。

 

資格者代理人による本人確認情報の提供

資格者代理人による本人確認情報とは、登記申請が司法書士の代理によってされている場合に、その司法書士が作成する本人確認の書類です。

この本人確認情報を提出することで、権利証がなくても事前通知を省略して登記することができます。

 

公証人による認証

公証人による認証とは、申請書を公証人に認証してもらう方法です。

くわしくは、こちらの記事にまとめましたので、ご覧ください。

  1. ・関連記事 権利証を紛失した場合、どうすればいい?【事前通知か本人確認情報】

 

相続登記に権利証が必要な場合2 登記簿上の住所と最後の住所が違っていて、戸籍の附票などで住所のつながりが証明できない場合

被相続人の登記簿上の住所と、最後の住所が違う場合、戸籍の附票や住民票の除票で住所のつながりを証明する必要があります。

戸籍の附票とは、住所地の移動の履歴をまとめたもので、戸籍とともに管理されているものです。

  1. ・関連記事 戸籍の附票とは何かわかりやすく解説します

 

しかし、戸籍の附票や住民票除票が廃棄されたなどの理由で、つながりが証明できない場合があります。

その場合、地域によって取り扱いが違うかもしれませんが、少なくとも大阪近辺では、次のような書類を添付すれば登記申請することができます。

  1. ・権利証
  2. ・固定資産税の納税通知書
  3. ・上申書
  4. ・相続人全員の印鑑証明書

 

ただし、この場合に権利証がない場合でも、ほかの書類があれば申請できます。

ちなみに上申書は、住所のつながりを証明できないが、本人にまちがいないことを相続人が上申するものです。

こちらが上申書のひな形です。

  1. 上申書 相続住所

 

上申書には、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

これで、被相続人の住所のつながりが取れていなくても登記することができます。

 

相続登記に権利証が必要な場合3 遺贈の場合

遺贈の場合には、権利証が必要になります。

実は、厳密には、相続と遺贈は異なります。

相続とは、亡くなったときに、相続人が財産を引き継ぐことです。

遺贈とは、遺言で財産を人に贈与することです。

くわしくは、こちらの記事を参考にしてください。

  1. ・関連記事 相続と遺贈の違いは?

 

遺贈は人の死亡により効力が発生しますが、基本的には贈与と同じです。

なので権利証が必要になります。

 

まとめ

以上、権利証がなくても相続登記はできるのか解説しました。

まとめると次の通り。

  1. ・基本的には、権利証なしでも相続登記可能
  2. ・法定相続分の登記をした後に、遺産分割協議が成立した場合は権利証が必要
  3. ・登記簿上の住所と最後の住所が違っていて、戸籍の附票などで住所のつながりが証明できない場合は、権利証が必要
  4. ・遺贈の場合も権利証が必要


相続登記を専門家に依頼したいという方もいらっしゃると思います。

大阪近辺なら当事務所でも承っております。

くわしくはこちらをご覧ください。

  1. ・関連記事 田渕司法書士事務所の相続登記(相続した不動産の名義変更)サービス


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それでは今回は以上です。

お読みいただきありがとうございました。