権利証を紛失した場合、どうすればいい?【事前通知か本人確認情報】

「孫に不動産を生前贈与したいのですが、権利証を紛失してしまいました。権利証がないと不動産を贈与できないのでしょうか?」

権利証を失くして困っている人

安心してください。そんなことはありません。

権利証を失くすと、不動産の権利が無くなるとか、不動産を処分できないと思18われる方がいらっしゃいますが、大丈夫です。

ちゃんと権利証がない場合の手続きがあります。

この記事では、権利証を紛失した場合の手続きについて、不動産登記の専門家の司法書士が解説します。


権利証を紛失した場合、どうすればいい?【事前通知か本人確認情報】

権利証は紛失すると、再発行できません。

しかし、次のいずれかの手続きをとれば、権利証が無くても、不動産を処分することができます。

  1. ・事前通知
  2. ・資格者代理人による本人確認情報の提供
  3. ・公証人による認証

それでは、くわしく解説します。


事前通知

事前通知とは、権利証が必要な不動産登記の申請をする場合において、権利証を提出できないときに、法務局がする本人確認の手続きです。

登記義務者(売主や贈与者など、権利証を提出しないといけない人のこと)の現住所に宛てて郵便で通知することで、本人以外の人が、本人になりすまして申請したのではないことを確認します。

通知書には、次のようなことが記載されています。

  1. ・不動産登記の申請があったこと
  2. ・不明な点があれば法務局に連絡する必要がある旨


ここで他人がなりすまして不動産登記を申請している場合は、本人に連絡が行くことにより、不正な登記が行われることを防ぐことができます。

事前通知を受け取った人は、2週間以内に、通知書の回答欄に記名して、登記申請書に押したものと同じ印鑑で押印して、法務局に送り返します。

もし事前通知書が受取人不明で返送された場合は、2週間の期間内に申請人から通知書の再発送の申出があったときは、再発送しても差し支えないとされています(不動産登記事務取扱手続準則45条)。

これで権利証が無くても、登記を申請することができます。

しかし、郵送でやり取りするので時間がかかってしまうのがデメリットです。


資格者代理人による本人確認情報の提供

司法書士

登記申請が司法書士の代理によってされている場合は、その司法書士が本人確認情報という書類を作成した場合は、権利証が無くても登記申請することができます。

本人確認情報には次のような事項を記載します。

  1. ・司法書士が、申請人と面談した日時、場所とその状況
  2. ・司法書士が、申請人と面識がある場合は、その旨およびその面識が生じた経緯
  3. ・司法書士が、申請人と面識がない場合は、その人が本人であることを確認するために提示された書類の内容および本人であると認めた理由


司法書士が申請人と面識がない場合は、司法書士が本人であると確認するために次のいずれかの書類が必要になります。

  1. ・1号書類 運転免許証、外国人登録証明書、住民基本台帳カード、旅券等、運転経歴証明書のうちいずれか1つ。
  2. ・2号書類 国民健康保険などの保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合などの共済の組合員証・加入者証、国民年金手帳、児童扶養手当証書・特別児童扶養手当証書、母子健康手帳・身体障害者手帳などの手帳で、氏名・住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか2つ以上。
  3. ・3号書類 2号書類のうちいずれか1つ以上と、官公庁から発行・発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名・住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか1つ以上。


司法書士が作成した本人確認情報と、上記の書類のコピーをあわせて提出することで、権利証が無くても登記申請することができます。

運転免許証

注意点は、登記申請が司法書士の代理によってされている必要があるということです。

代理人をたてずに、申請人本人が申請している場合に、司法書士に本人確認情報のみの作成をしてもらって申請することはできません。

不動産登記の多くが、司法書士を代理人として申請されているので、権利証がない場合の多くが、本人確認情報を使って申請されていると思われます。


公証人による認証

申請書を公証人に認証してもらう方法です。

公証人に認証してもらうことで、本人であることが証明されます。

ただし、この方法が利用されることはあまりないと思われます。


他人に権利証が渡ってしまったら

「もし紛失した権利証が他人に渡ってしまったら、不動産を他人に取られてしまうんですか?」

権利証を失くして困っている人

権利証だけでは、所有権移転登記を申請することはできません。

少なくとも、権利証のほかに、実印と印鑑証明書が必要になります。

他人がなりすまして登記申請するには、印鑑証明書を偽造する必要があります。

印鑑証明書の偽造は難しいので、権利証を紛失しただけで不動産を他人に取られてしまうことを心配する必要はありません。

 

とはいえ、絶対に不動産を他人に取られることはないとは言い切れません。  

そこで権利証について、効力を失わせる制度があります(不動産登記規則65条)。

法務局に対して、権利証の失効を申出することで、効力を失います。

権利証

ただし、失効できるのは権利証のうち登記識別情報だけです。

権利証というのは通称で、正式には登記済証または、登記識別情報といいます。

登記済証は、平成17年以前の古い権利証です。

平成17年から平成20年まで順次まで、登記識別情報という新しいタイプの権利証に切り替わりました。

失効できるのは、新しいタイプの権利証である登記識別情報だけです。

ちなみに、下の画像が登記識別情報のサンプルです。

もし、失くした権利証が登記識別情報なら、失効を申し出ることで不正な登記がされるのを防ぐことができます。


そもそも権利証がいらない場合

そもそも権利証が必要ない登記があります。

代表的なのが、相続登記や、氏名変更登記、住所変更登記です。

相続については、戸籍などで相続人を特定するため権利証を添付する必要がありません。

相続登記の、そのほかの必要書類については、こちらの記事をご覧ください。

  1. 関連記事 相続登記:相続した不動産の名義変更のやり方


氏名や住所の変更登記は、住民票や戸籍謄本などで、氏名や住所が変わったことを証明できるので、権利証は必要ありません。

というわけで今回はこの辺で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。