遺言と遺書とエンディングノートの違い【ご存知ですか?】
「遺言と遺書はどう違うのでしょうか。またエンディングノートを書いても遺言にはならないのですか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕智之です。
こういった疑問にお答えします。
近年の終活ブームで、エンディングノートがいろんなところから出版されています。
それでは、エンディングノートと遺言や遺書はどう違うのかご存知でしょうか。
この記事では、遺言、遺書とエンディングノートの違いについて解説します。
目次
遺言と遺書とエンディングノートの違い【ご存知ですか?】
遺言と遺書とエンディングノートの意味は、それぞれ次の通りです。
・遺言 自分の死後に、財産を誰にどのくらい与えるか指定するもの
・遺書 自分が死ぬことを前提に、だれかに自分の想いを伝えるもの
・エンディングノート 自分自身への備忘録、または家族や大事な人に遺しておくメッセージ
大きな違いとして、遺言は財産の分配を指定するなど、書かれた内容によって法律的な効果が発生するものですが、遺書やエンディングノートには基本的に法律的な効果はなく、個人的な想いなどを遺しておくものです。
それでは、くわしくみてみましょう。
遺言とは
遺言は、自分の死後に財産を、誰にどのくらい与えるか指定するなど、書かれた内容によって法律的な効果が発生するものです。
ほかにも、遺言には次の事項を記載することができます。
・遺産分割方法の指定(民法908条)
・遺産分割方法の指定の第三者への委託(民法908条)
・遺産分割の禁止(民法908条)
・遺贈(民法964条)
・遺言執行者の指定または遺言執行者の指定の第三者への委託(民法1006条1項)
・遺言執行者の報酬(民法1018条1項)
・特別受益の持ち戻しの免除(民法903条3項)
・信託の設定(信託法3条2号)
・子の認知(民法781条2項)
・未成年後見人の指定(民法839条1項)
・未成年後見監督人の指定(民法848条)
・推定相続人の廃除(民法893条)
・祭祀承継者の指定(民法897条)
・一般財団法人の設立の意思表示(一般社団法人法152条2項)
いろいろできることがありますが、主なものは、遺産分割方法の指定と遺贈です。
遺産分割方法の指定
遺産分割方法の指定とは、遺産を相続人がどう分けるか指定することです。
相続人が2人以上いる場合、たとえば、相続人が配偶者と子ども1人いる場合、配偶者と子どもはすべての相続財産の2分の1ずつ相続することになります。
相続人は、不動産、自動車、現金、銀行預金、有価証券などすべての財産につき2分の1ずつの権利を持ちます。
現金、銀行預金などは単純に2で割ることができますが、不動産や自動車などは半分に割るわけにはいきません。
そこで遺産をどう分けるか決める必要があります。
たとえば、「以下の不動産は配偶者○○に相続させる。以下の銀行預金そのほかの財産全てを子の○○に相続させる」などと遺言に書くことができます。
遺言で遺産分割方法を指定しなかった場合、相続人同士で遺産分割について話し合うことになります。
これを遺産分割協議といいます。
・関連記事 遺産分割協議とは何か?【遺産の分け方についての話し合い】
相続人同士の仲が良ければいいのですが、仲が良くないと遺産分割協議がなかなか進まなかったり、仲が良くても遺産分割協議がきっかけで仲が悪くなってしまうケースもあります。
話し合いで遺産分割を決めることができない場合、遺産分割調停という裁判手続きをしないといけなくなります。
・関連記事 遺産分割調停の流れ【必要書類は?合意できなかったら?】
裁判まで行うと関係を修復するのも難しくなってしまいます。
そうならないように遺言で遺産分割方法を指定しておくと、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。
遺贈
遺贈とは、遺言で贈与することです。
遺贈は、相続人以外の人や団体にすることもできますし、相続人に対しても遺贈することができます。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります(民法964条)。
包括遺贈とは、財産全体の割合を遺贈するものです。
たとえば、「遺産の半分を○○に遺贈する」という遺言です。
特定遺贈とは、特定の財産を遺贈するものです。
たとえば、「自宅の土地建物を○○に遺贈する」という遺言です。
相続人に財産を承継させる場合、遺産分割方法を指定することも遺贈することもできます。
遺産分割方法の指定と、遺贈の違い
遺産分割方法の指定と遺贈の違いですが、基本的には「相続させる」と書いてあれば、遺産分割方法の指定で、「遺贈させる」と書いてあれば遺贈です。
ただし、相続人ではない人(たとえば、別れた前妻など)に対して「相続させる」と書いてある場合は、遺贈になります。
相続と遺贈については、税金などに違いがあります。
くわしくは、こちらの記事をご覧ください。
・関連記事 相続と遺贈の違いは?
遺言の書き方
遺言については、法律で形式が決められており、その形式に反する遺言は無効になってしまいます。
たとえば、自分で作成する自筆証書遺言については、本文、氏名、日付を手書きで書いて、押印しないといけません。
パソコンで作成した遺言に署名だけ自筆で書いても、遺言としては無効になってしまいます。
その他、遺言についてはこちらの記事にくわしくまとめましたので、ご覧ください。
・関連記事 遺言の書き方【遺言の文例と気を付けるポイント】
遺書とは
遺書とは、自分の死期が近い場合などに、家族など大事な人に自分の想いを伝える手紙です。
遺言と異なり、法律的な効果は発生しません。
エンディングノートとは
エンディングノートとは自分自身への備忘録、または亡くなったときや、病気などで意思表示できなくなった場合に備えて、家族や大事な人に遺しておくメッセージです。
いろんなところからエンディングノートが出版されていますが、主に次のような事について記載するようになっています。
・自分の基本情報
・自分史
・家族・親族の一覧
・友人・知人一覧
・資産について
・冠婚葬祭に関するもの
・医療・介護に関すること
・連絡すべき相手の指定
・SNSなどの処分方法
・大事な人へのメッセージ
エンディングノートは法律で形式が決められているわけではないので、上記以外の内容でも自由に書くことができます。
エンディングノートは、人目に付くところに保管するか、信頼できる人に保管場所を伝えておきましょう。
エンディングノートは、自分ための備忘録であると同時に、家族など大事な人へのメッセージでもありますので、人に見てもらわないと想いが伝わらないからです。
エンディングノートや遺書に遺言事項が記載されている場合、遺言として有効?
エンディングノートや「遺書」と書かれた紙に遺言事項、たとえば財産の分配方法の指定などが書かれている場合、自筆証書遺言としての効力が発生することがあります。
自筆証書遺言が効力を発生するための要件は、次の通りです(民法968条)。
・本文、日付、氏名を手書きすること
・印鑑を押すこと
これだけです。
そのほか遺言書の形状やレイアウトなどについては、決められていません。
なので、エンディングノートに「すべての財産は、妻○○に相続させる」などと手書きで書き、さらに日付、氏名を手書きし、押印すれば、遺言として有効になります。
とはいえ、エンディングノートに遺言事項を書いても、遺族がそれを遺言として認識することは難しいと思われるので、遺言を遺したい場合はエンディングノートとは別に遺言書を作成しておくべきです。
遺言にも、メッセージを記すことができます【付言事項】
遺言にも、遺書やエンディングノートと同様、大事な人へのメッセージを書くことができます。
このメッセージの部分を、付言事項といいます。
付言事項は法律上の効果が発生することはありませんが、好きな内容を書くことができます。
なぜこの人の相続分を他の人より多くしたのか、相続分が少ないからといって、愛情が少ないわけではないなど、あなたの気持ちを書くことができます。
・関連記事 遺言の付言事項とは?家族につたえるメッセージ【遺言の文例】
たとえば、子どもが2人いる場合に、次男により多くの財産を相続させる場合に、次のように記載することができます。
「長男Aは定職に就いて、収入が安定していますが、次男Bは要介護者で配偶者もおらず、心配なため、多めの財産を与えることにしました。決してAに愛情が少ないわけではありません。兄弟仲良く協力し合って、いつまでも幸せに暮らしてください」
これは一例です。
文面については、遺言を書く人が好きなように書くことができます。
ひな形通りのありきたりな文章より、遺言を書く人が想いを込めて書いた文章の方が気持ちも伝わるでしょう。
遺言の効力が生じるのは、遺言を書いた人が亡くなられた後です。
その時点では、遺言を書いた人の気持ちを直接確認することはできません。
そのため、こうして、遺言の中に、遺言者の気持ちを書いておくと、遺された家族としても、気持ちの整理がしやすくなるかと思います。
まとめ
以上、遺言、エンディングノート、遺書の違いについて説明しました。
遺言は、作成するのに手間が掛かったり、費用が掛かったりする場合があります。が、エンディングノートは気楽に書くことができます。
これを機にエンディングノートで、大事な人に想いを伝えてみましょう。
当事務所は、大阪の司法書士・行政書士事務所です。
遺言書の作成については、当事務所でお手伝いをさせていただいています。
どのような遺言が必要なのか、お一人お一人違います。
あなたの思いをお聴きし、その思いを伝える遺言の作成をサポートしていきます。
当事務所の遺言作成サポートサービスの詳細については、こちらをご覧ください。
・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の遺言書作成サポートサービス
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というわけで今回は以上になります。
お読みいただきありがとうございました。