成年後見人とは?司法書士がわかりやすく解説【毎月の費用は?】
「遺産分割したいけど、相続人の中に認知症の人がいます。それで、その人に成年後見人を付けないといけないみたいけど、成年後見人ってどんなことをする人ですか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
成年後見人とは、認知症や知的障害などで判断能力が充分ではない方に代わって契約をしたり、財産管理をする人のことです。
成年後見人は家庭裁判所に申し立てすることで選任することができます。
この記事では、成年後見人とは何か、どういう場合に必要なのか、成年後見人の報酬などについて、司法書士がわかりやすく解説します。
目次
成年後見人とは?司法書士がわかりやすく解説【毎月の費用は?】
成年後見人とは、認知症や知的障害などで判断能力が充分ではない方に代わって財産を管理する人のことです。
成年後見人は、本人に必要な契約をしたり、不要な契約を解約することができます。
認知症や知的障害などで判断能力が十分でない方は、単独で契約や財産を管理したりすることできません。
そこで成年後見人が本人に代わって、契約や財産管理を行います。
具体的には、次のような事務を行います。
- 1 相続した財産の名義変更
- 2 遺産分割
- 3 家賃や光熱費などの生活費の支払い
- 4 施設などの入居契約
- 5 不動産の処分
- 6 預貯金の管理、解約
こういった手続きが必要なのに、ご本人が認知症や知的障害などで判断能力がない場合に、成年後見人の選任を検討することになります。
成年後見人ができること1 相続した財産の名義変更
本人の親などが亡くなり、本人が遺産を相続した場合、相続した財産の名義変更が必要になります。
相続財産の名義変更の中でも特に手続きがややこしくて面倒なのが不動産です。
・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】
本人が相続した財産の名義変更手続きが終わっていない場合、成年後見人が手続きを行うことができます。
成年後見人ができること2 遺産分割
本人の親などが亡くなり、ほかの相続人と共同で相続した場合、遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議とは、相続した財産をどう分けるか相続人同士で話し合うことです。
被後見人(本人)は、その遺産分割協議に参加することはできないので、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加する必要があります。
話し合いが成立しない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。
遺産分割調停とは、当事者だけでは話し合いが上手くいかない場合に、調停委員という家庭裁判所の職員に間に入ってもらって、話し合いを調整してもらう手続きのことです。
成年後見人は遺産分割調停を申し立てることができます。
成年後見人ができること3 家賃や光熱費などの生活費の支払い
家賃や光熱費など日々の生活に関する費用について、本人の財産から支払うことも成年後見人の仕事です。
成年後見人ができること4 施設などの入居契約
成年被後見人(本人)は契約することができないため、成年後見人が入居契約を代わりに行います。
もちろん本人が生活する場所を決定するわけですから、成年後見人は本人の希望する暮らしを最大限尊重して、入居契約をしないといけません。
成年後見人ができること5 不動産の処分
所有していた自宅に1人暮らしだった被後見人が施設に入居するなどした場合、自宅は空き家になります。
さらに本人の預貯金が少ない場合、自宅を処分して、入居費用に充てることも検討しないといけません。
その場合、自宅の処分は成年後見人が行うことになります。
ただし、居住用不動産の処分は成年後見人が独断で行うことはできず、家庭裁判所の許可が必要になります(民法859条)。
居住用不動産の処分は、本人の生活に重大な影響を与えるからです。
成年後見人ができること6 預貯金の管理、解約
被後見人の預貯金の管理や解約は成年後見人が行います。
預金の名義人が認知症などで判断能力がないことが銀行に発覚すれば、口座が凍結されてしまいます。
成年後見人が就任して、銀行に届け出ると成年後見人が口座から引き出すことができるようになります。
成年後見人は誰が選任するのか?
成年後見人は家庭裁判所が選任します。
成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
成年後見人をつける手続きについては、別記事にまとめましたので、こちらをご覧ください。
また、後見人は就任した後1カ月以内に、本人の財産を調査して、家庭裁判所に報告します。
さらに、最初の報告の後も、後見人は財産目録や収支目録などを作成して、家庭裁判所へ報告しなければいけません。
この義務は親族が後見人の場合でも、専門家が後見人でも同じです。
このように成年後見人に業務を報告させることで、不正や、ずさんな管理を防ぐことができます。
成年後見人はどういう場合に必要なのか?
次のような場合に後見制度が利用されています。
- ・遺産分割しないといけないが、相続人の中に認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人がいる場合
- ・ 母の独居生活が心配なので、有料老人ホームに入居してもらいたいけど、本人は認知症で一人では契約できない場合
- ・ 認知症の父の様子を見に行くと、悪質な訪問販売で購入したと思われる高価な商品がたくさんあった。今後、このような悪質な業者から父を守りたい場合
成年後見の種類
一口に、判断能力が不十分といっても、人それぞれです。
そこで後見制度は、本人の判断能力の程度によって、後見、保佐、補助の3つの段階に分かれます。
もっとも、判断能力が低下しており、自分ではまったく財産管理ができない方が対象なのが後見です。
比較的、判断能力がしっかりしている方が対象なのが補助です。
この中間くらいの判断能力がある方が対象なのが保佐です。
また、判断能力がしっかりしているうちに、判断能力が無くなった場合に備えて、あらかじめ後見人を指名しておく制度があります。 これを任意後見といいます。
後見
判断能力を完全に欠いている場合です。
3つの分類の中で、いちばん症状が重い方が対象です。
後見人が、本人に代わって契約をし、財産を管理します。
本人がした契約は、後見人が取り消すことができます。
保佐
判断能力が著しく不十分な場合です。
3つの分類の中で、中程度に症状が重い方が対象です。
本人が以下の行為をする場合は、保佐人の同意が必要になります(民法13条)。
- 1 元本を領収し、又は利用すること。
- (預貯金の払戻しなど)
- 2 借財又は保証をすること。
- (借金したり、保証人になること)
- 3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- (不動産を処分したり、担保に入れること)
- 4 訴訟行為をすること。
- 5 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
- 6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
- 7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
- 8 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
- 9 民法第602条に定める期間(建物は3年、土地は5年)を超える賃貸借をすること。
- 10 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人など)の法定代理人としてすること。
保佐人の同意を得ないで、本人がこのような行為をしたときは、保佐人は取り消すことができます。
上記以外にも、保佐人が取り消しできる範囲を追加することができます。
また、本人に代わって契約などをする代理権を保佐人に付けることもできます。
代理する範囲は選択することができます。
保佐人については、くわしくはこちらの記事をご覧ください。
補助
判断能力が不十分な場合です。
3つの分類の中で、いちばん症状が軽い方が対象です。
補助人が代理する範囲や、補助人の同意が必要な範囲は、選択できます。
補助人の同意が必要な範囲は、上記の保佐人の同意が必要な範囲1~10のうちの一部に限られます。
任意後見
判断能力が不十分な状況になった場合に備えて、後見人をあらかじめ決めておく制度です。
判断能力がしっかりしているときに、本人と後見人候補の間で任意後見契約をしておき、判断能力が不十分になると後見人の職務が開始します。
任意後見制度についてはこちらの記事をご覧ください。
- ・関連記事 任意後見制度とは何か【成年後見制度との違い】
成年後見人は誰がなるのか?
成年後見人は家庭裁判所が選びます。
申し立ての時に候補者をたてることができ、家庭裁判所が認めれば、家族も成年後見人になることができます。
候補者がいない場合、専門職である司法書士、弁護士、社会福祉士の中から選任されることがほとんどです。
その中で一番、専門職として成年後見人に就任しているのが司法書士です。
家族など、専門家(司法書士、弁護士、社会福祉士)以外の人が成年後見人に選任された場合、基本的に後見監督人がつけられます。
後見監督人は、後見人の業務を監督します。
成年後見人の報酬
成年後見人の報酬は、家庭裁判所が決定し、本人の財産から支出されます。
親族が後見人の場合でも、報酬を請求することができます。
報酬額は、本人の財産額に応じて、家庭裁判所が決定します。
大阪家庭裁判所管轄の、成年後見人の報酬の目安は次の通りです。
- 基本報酬
- 月額2万円
- 本人の財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合
- 月額3万円~4万円
- 本人の財産額が5000万円を超える場合
- 月額5万円~6万円
訴訟や遺産分割など、特別な事務を行った場合は、さらに追加の報酬がかかります。
また、後見監督人がついている場合、後見監督人の報酬もかかります。
後見監督人の報酬は、後見人の報酬の約半分です。
成年後見の終了
一度、成年後見が開始すると、本人が亡くなるまで成年後見人はつき続けます。
本人が死亡すると、成年後見人の職務が終了します。
本人との信頼関係が破綻して、成年後見人が辞任した場合も成年後見人の職務が終了します。
しかしその場合は後任の成年後見人が選任され、成年後見自体がなくなるわけではありません。
成年後見の注意点
成年後見については、次のような注意点があります。
- ・成年後見人等が選任されると本人が亡くなるまで続く
- ・必ずしも親族が後見人になれるわけではない
- ・親族が後見人の場合、監督人がつくことがある
成年後見人等が選任されると本人が亡くなるまで続く
成年後見人等が選任されると、原則として本人が亡くなるまで続きます。
不動産の売却を目的に成年後見人を選任した場合に、不動産の売却が済んだからといって、成年後見人を外すことはできません。
必ずしも親族が後見人になれるわけではない
親族を成年後見人の候補者にすることはできます。
しかし、後見人を選任するのは、家庭裁判所です。
親族を候補者にしても、必ず親族が選ばれるとは限りません。
親族が後見人の場合、監督人がつくことがある
親族が後見人の場合、監督人がつくことがあります。 監督人がつくと、監督人の報酬も発生します。
まとめ
以上、成年後見人とは何かについて解説しました。
成年後見人は選任すると、基本的にご本人が亡くなるまで続くことになります。
なので、本当にご本人に成年後見人が必要なのか慎重に検討する必要があります。
親族だけでは、成年後見人が必要なのか判断に迷う場合は、司法書士などの専門家に相談してみましょう。
大阪の方なら、当事務所でも承っています。
ぜひ、お気軽にご相談ください。
当事務所の成年後見サポートサービスの詳細についてはこちらをご覧ください。
というわけで今回は以上です。
お読みいただきありがとうございました。