家族や親族は成年後見人になれる?【家裁に選ばれれば、なれます】

「母が数年前に認知症にかかってしまいました。私が母の金銭管理を行ってきましたが、母の定期預金を解約しようとすると、銀行から成年後見人をつけないと解約はできないと言われました。なので、成年後見の申し立てをしたいと思います。私が成年後見人になりたいと思いますが、家族でも成年後見人になることはできますか?」

成年後見について悩んでいる

こういった疑問にお答えします。

この記事では、家族や親族は成年後見人になることはできるのか、家族や親族が成年後見人になるにはどうすればいいのかについて解説します。

 

家族や親族は成年後見人になれる?【家裁に選ばれれば、なれます】

成年後見人を選任するのは家庭裁判所です。

家庭裁判所に選ばれれば、家族や親族も成年後見人になることができます

成年後見の申立書に「成年後見人等候補者」という欄がありますので、そこに住所・氏名・本人との関係を記載すれば立候補することができます。

申立書のひな形がありますので、ご確認ください。3ページ目に成年後見人等候補者の欄があります。

  1. 後見開始等申立書


家庭裁判所は、さまざまな事情を考慮して、適任な人物を選任します。

家族や親族が立候補しても、必ず選任されるわけではありません。

家族や親族に適任者がいない場合は、専門職(司法書士、弁護士、社会福祉士)が成年後見人に選ばれます。

専門職後見人

 

家族や親族が成年後見人に選ばれにくくなるケース

家族や親族が成年後見人に選ばれにくくなるケースとして、次のケースがあげられます。

成年後見の相談
  1. ・親族間で争いがある
  2. ・候補者に多額の借金がある
  3. ・親族が本人の成年後見制度利用に反対している
  4. ・候補者の健康状態や年齢に懸念がある
  5. ・候補者が本人に対して利害関係がある

 

親族間で争いがある

親族間で争いがある場合は、利害関係のない専門職が選ばれやすくなります。

親族間で争いがある場合に特定の親族が成年後見人になると、さらに争いが激しくなる可能性があるからです。

 

候補者に多額の借金がある

親族である候補者に多額の借金がある場合は、選ばれにくくなります。

この場合は、候補者に本人の財産を適切に管理することが期待できないからです。


親族が本人の成年後見制度利用に反対している

親族の中に成年後見制度の利用に反対している人がいる場合は、選ばれにくくなります。

成年後見の申し立て書類の中に「親族の意見書」という、本人が成年後見制度を利用することについて他の親族の意向を確認する書類があるので、それを提出すると、選ばれやすくなります。

  1. 親族の意見書
成年後見のことがわからない人

親族の意見書の記載例も載せておきます。

  1. 親族の意見書の記載例


申立時に意見書を提出するひとの範囲は、仮にご本人がお亡くなりになった場合に相続人となる方々です。

相続人の範囲については、こちらの記事を参照してください。

・関連記事 相続人の範囲 どこまでが相続人か司法書士がわかりやすく解説

 

疎遠だったり、親族の判断能力が不十分で理解できないなどの理由がない限り、親族の意見書は提出するようにしましょう。


候補者の健康状態や年齢に懸念がある

親族である候補者の健康状態が優れなかったり、高齢(70歳以上)だったりすると選ばれにくくなります。

認知症を患った人

成年後見人は一度選任されると、基本的にご本人の判断能力が回復することがない限り、ご本人が亡くなるまで退任することはありません。

なので、途中で成年後見人の仕事ができなくなりそうだったり、高齢のために後見人候補者の判断能力が不十分だったりすると選ばれにくくなります。

 

候補者が本人に対して利害関係がある

親族である候補者が本人に対して債務や債権があるなどの利害関係がある場合は、選ばれにくくなります。

 

財産が多額の場合は、親族は選ばれにくい?

成年後見

ご本人の財産が多額だと、親族や家族は成年後見人に選ばれにくいと思われる方もいるかもしれません。

しかし、ご本人の財産が多額でも、監督人を選任したり、後見制度支援信託を使うことにより親族や家族を成年後見人に選任することはよくあります。

監督人とは、成年後見人の職務を監督する人で、司法書士か弁護士が選任されます。

後見制度支援信託とは、少額の資金のみ成年後見人が管理し、残りの大部分の財産を信託銀行に預けておく制度です。

後見制度支援信託については、家庭裁判所のリーフレットをご覧ください。

  1. ・外部リンク 後見制度について利用する信託の概要


まとめ

以上、家族や親族が成年後見人になれるか、について解説しました。

上記の通り、親族や家族でも成年後見人になることはできます。

とはいえ親族や家族が必ず成年後見人になれるとは限りません。

成年後見を申し立てる場合は、家族や親族を候補者にたてても第三者が選ばれる可能性があることはご了承ください。

成年後見の申し立て手続きについては、別記事にくわしくまとめてありますのでご覧ください。

  1. ・関連記事 成年後見人をつける手続きについて解説します【必要書類や費用など】
書類


それでは今回はこの辺で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。