遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット・デメリット
「遺言書を書きたいと思っています。遺言書は自分で手書きしたものでも有効だと聞きましたが、専門家に遺言書の作成を依頼するとどんなメリットがありますか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
遺言書は自分で手書きしたものでも有効です。
ただし、遺言書は要件が法律で厳しく定められており、その要件を欠くと無効になってしまうおそれがあります。
遺言書の作成を司法書士に依頼することで、その心配がなくなります。
ほかにも、遺言書の作成を司法書士に依頼するメリットがいくつかありますし、デメリットもあります。
この記事では、遺言書の作成を司法書士に依頼するメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット・デメリット
遺言書は、自分で紙に手書きしたものでも有効です。自分で手書きした遺言書を自筆証書遺言といいます。
しかし、法律の知識がないまま自筆証書遺言を自分で書くのは、様々なリスクがあります。
たとえば、法律的な要件を欠くために遺言が無効になったり、遺言の内容が良くないために余計なトラブルになったりする可能性があります。
遺言の専門家である司法書士に相談しながら作成することで、そのような心配は無くなるでしょう。
また公正証書遺言の場合、公証人が遺言者の要望を聞き取って、遺言を作成してくれます。
公正証書遺言の場合、形式に不備があって遺言が無効になる可能性はあまりありませんが、内容については、遺言者の意思を汲み取って、適切な内容の遺言を作成してくれるとは限りません。
遺言者が自分で決めた内容の遺言をそのまま公正証書にすることが公証人の仕事で、遺言者の意思決定に積極的に介入してアドバイスすることはないからです。
なので、あまり遺言書の内容が良くなくて、後々トラブルになる危険性がある場合でも、あなたがこの内容の遺言書を書きたいと公証人に伝えれば、公証人はそれをそのまま公正証書遺言にしてしまうおそれがあります。
司法書士であれば、形式面だけでなく内容面についても、適切なアドバイスをすることができます。
遺言書の作成を司法書士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- ・不備で遺言が無効になる心配がない
- ・トラブルになるリスクを減らす
- ・意図した内容を正確に表現できる
- ・複雑な内容の遺言にも対応
- ・司法書士を遺言執行者にすることもできる
一方、遺言書の作成を司法書士に依頼するデメリットは次の通り。
- ・費用がかかる
- ・時間がかかる
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット1 不備で遺言が無効になる心配がない
自分で、手書きで書く遺言書は、不備のため遺言が無効になるリスクがありますが、司法書士に依頼すればそのような心配はありません。
自分が手書きで書く遺言を自筆証書遺言といいます。
自筆証書遺言は次のような要件を備える必要があります。
・本文を手書きで書く
・日付を書く(手書き)
・氏名を書く(手書き)
・印鑑を押す
これらの要件を欠く場合、たとえば、日付を書き忘れていると無効になります。
また書き間違えた場合、次の方法で訂正する必要があります。
- ・訂正は遺言者本人がすること
- ・変更の場所を指示して訂正した旨を付記すること
- ・付記部分に署名すること
- ・変更の場所に押印すること
このように遺言書の方式は法律で厳しく定められています。
自信がない場合は、司法書士に相談してみることをおすすめします。
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット2 トラブルになるリスクを減らす
遺言書の作成を司法書士に依頼するとトラブルになるリスクを減らすことができます。
遺言書は、内容によっては余計にトラブルになってしまうおそれがあります。
そのうちの一つのケースが、相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言の場合です。
遺留分とは、相続人に残しておくべき最低限の取り分のことです。
遺留分を侵害する遺言を遺すと、遺留分を侵害された相続人は、遺言によって財産を承継した人に対して、遺留分に相当する金銭を請求することができます。
たとえば、相続人が長男と次男の場合に、長男にすべての財産を相続させる遺言を遺すと、次男は長男に対して遺留分(この場合は相続財産の4分の1)に相当する金銭を請求することができます。
こうなってしまうと、相続人同士で争いになってしまいますよね。
こういったことがないように、遺言を書く際は遺留分のことも考慮に入れながら作成する必要があります。
司法書士に依頼すると、こういったことも考慮に入れながら遺言を作成することになるので、トラブルになるリスクを減らすことができます。
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット3 意図した内容を正確に表現できる
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリットの3つ目は、意図した内容を正確に表現できることです。
このような内容の遺言書にしたいとイメージがあっても、それを文章に表現するのは難しいものです。
そこで正確に表現できず、いろんな風に解釈できるような内容になると、後々相続人同士で揉める原因になります。
遺産の処分についての表現だけでなく、対象となる財産の表現についても、特定ができず争いになることもあります。
過去にあった例では、手書きの字が震えていたために、正確に読み取ることが難しく、いろんな解釈ができてしまい、裁判になってしまったケースもありました。
このようなことがないように、遺言書は正確に表現する必要があります。
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット4 複雑な内容の遺言にも対応
司法書士であれば、複雑な内容の遺言にも対応可能です。
遺言書は書いてから効力が発生するまである程度の時間が経過することが通常です。
そのため、たとえば、妻に全財産を相続させるという内容の遺言書を書いたとしても、妻の方が先に亡くなってしまう可能性があります。
この場合、この遺言書は無効になってしまいます。
このような場合に備えて、妻が先に亡くなっている場合は長男に相続させる、といったように、次点として相続する人を指定することもできるのです。
このような遺言書を予備的遺言といいます。
司法書士であれば、いろんな事情を聞き取って、このような複雑な内容の遺言書を提案することができます。
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット5 司法書士を遺言執行者にすることもできる
遺言書の作成を司法書士に依頼するメリットの5つ目は、司法書士を遺言執行者にすることができることです。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする人です(民法1012条1項)。
遺言の効力が発生するのは、遺言を書いた人が亡くなった後です。
そのときに遺言を書いた人に代わって、遺言の内容通りに手続きをする人が遺言執行者です。
相続人を遺言執行者にすることもできますが、様々な相続手続きを相続人が行うことが難しい場合は、司法書士を遺言執行者にすることで、手続きを任せることができます。
遺言執行者については、詳しくはこちら。
遺言書の作成を司法書士に依頼するデメリット1 費用がかかる
遺言書の作成を司法書士に依頼するデメリットは費用、つまり司法書士の報酬がかかってしまうことです。
司法書士報酬についての画一的な規定はなく、各事務所で報酬はバラバラです。
公正証書遺言の場合は、さらに公証人の報酬も別途かかってしまいます。
また、どの程度、遺言書についてサポートしてくれるかも事務所ごとで違うので各事務所に問い合わせて確認する必要があります。
遺言書の作成を司法書士に依頼するデメリット2 時間がかかる
遺言書の作成を司法書士に依頼するデメリットの2つ目は、時間がかかってしまう場合があることです。
自筆証書遺言であれば、自分で考えた内容を手書きしていくだけなので、すぐに書くことができます。
司法書士に依頼する場合、どんな遺言がいいか何度か打ち合わせして、決めていくので時間がかかります。
しかし、時間をかけることでじっくりと考えることもできますし、急いで遺言を書きたい事情がある場合はそれに合わせて、急いで遺言書を作ってもらうこともできるでしょう。
また、公正証書遺言の場合は、公証人との打ち合わせや必要書類を集めるなどの作業もあります。
それらの作業は自分でやるより、司法書士にやってもらった方が早いでしょうから、結果的には司法書士に依頼する方が早いという場合もあるかと思います。
まとめ
以上、遺言書の作成を司法書士に依頼するメリットとデメリットを解説しました。
まとめると、次の通り。
- ・遺言書の作成を司法書士に依頼すると、遺言が無効になったり、トラブルになるリスクが減る
- ・適切な内容の遺言書を提案してもらえる
- ・ただし、費用がかかってしまう
遺言書の作成を依頼するのは、相続・遺言の専門の司法書士にしましょう。
大阪であれば、当事務所も承っております。
お気軽にお問い合わせください。
当事務所の遺言書作成サポートサービスの詳細はこちら。
というわけで今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。