未登記建物の遺贈を受けた場合に必要な手続き【登記先例解説】
「先日兄が亡くなりました。兄は、私に不動産を遺贈するという内容の遺言を遺していました。しかし、その不動産は登記されていませんでした。この場合、直接、私名義の登記をすることはできませんか?」
大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
不動産の遺贈を受けた場合、遺贈の登記をすれば、不動産は遺贈を受けた人の名義になります。
しかし、遺贈された不動産がそもそもまったく登記されていない場合、所有権保存登記という手続きが必要になります。
この場合、まず遺贈者(亡くなった方)名義の所有権保存登記を行ってから、遺贈を受けた人名義の登記が必要になります。
そのような登記先例があります。
この記事では、未登記建物の遺贈を受けた場合に必要な手続きについて司法書士がわかりやすく解説します。
目次
未登記建物の遺贈を受けた場合に必要な手続き【登記先例解説】
上の画像は、登記簿謄本のサンプルです。
真ん中あたりに、「権利部(甲区)」という欄があり、1番に甲野太郎名義の所有権保存登記、2番に甲野太郎から法務五郎へ売買による所有権移転登記がされています。
所有者保存登記とは、不動産が完成してから、最初に所有権の登記をする場合の登記です。
その後、所有者保存登記がされた不動産について、売買や、相続、遺贈などで所有権が移転したときは、所有権移転登記をすることになります。
もし上の例で、法務五郎が「下記不動産は、妹、法務花子へ遺贈する」という内容の遺言を遺して亡くなった場合、遺贈を原因とする法務花子への所有権移転登記をすればいいだけです。
法務花子への所有権移転登記がされると、3番にその旨が記載されます。
このように、ちゃんと登記されている不動産について遺贈されている場合、受遺者(遺贈を受けた人)名義への所有権移転登記をするだけで済みます。
しかし、遺贈された不動産について、そもそも所有権の登記がされていない場合は、まず遺贈者名義の所有権保存登記を行ってから、遺贈を受けた人名義の所有権移転登記が必要になります。
そのことを示した登記先例があります。
被相続人名義で台帳に登録されている未登記不動産につき遺贈による所有権移転の登記をする前提として、台帳上の被相続人名義に所有権保存の登記をなすべきである(昭和34年09月21日民事甲2071)
なので、もし法務五郎が未登記の建物について「妹、法務花子へ遺贈する」という内容の遺言を遺して亡くなった場合は、次の登記を申請することになります。
1 法務五郎名義の所有権保存登記
2 法務花子名義の(遺贈を原因とする)所有権移転登記
登記されると、法務花子へ権利証(登記識別情報)が交付されます。
権利証は紛失してもそれだけで不動産の権利を失うわけではありませんが、余分な手続きが必要になりますので、大切に保管してください。
表題登記もされていない場合は、表題登記も必要
また所有権の登記だけでなく表題登記もされていない場合は、表題登記も必要になります。
登記簿のサンプルの一番上の「表題部」という欄に所在地や床面積などが記載されています。
これが表題登記です。
所有権の登記は司法書士に、表題登記は土地家屋調査士に依頼できる
登記は自分でもすることができますが、専門家に依頼することもできます。
特に表題登記については測量が必要なため、自分でするのは難しいかと思います。
所有権の登記は司法書士に、表題登記は土地家屋調査士という専門家に依頼することができます。
当事務所は、大阪の司法書士事務所です。
所有権の登記に関しては当事務でも承っています。
表題登記が必要な場合は、土地家屋調査士のご紹介もさせていただきます。
初回相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
ご相談の方は、電話(06-6356-7288)か、こちらのメールフォームからお問い合わせください。
まとめ
以上、未登記建物の遺贈を受けた場合に必要な手続きについて解説しました。
当事務所では、ほかにも相続・遺言についての解説記事を書いていますので、よろしければご覧ください。
それでは今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。