株式会社と合同会社(LLC)の違いとは?【どちらの会社がいい?】


「これまで個人事業主として事業を行ってきましたが、そろそろ会社を設立したいと思っています。株式会社と合同会社のどちらかにしようと思いますが、どういう違いがあるのかわかりません。どちらの方がいいのでしょうか」

株式会社と合同会社どちらがいいか迷っている人


 

こういった疑問にお答えします。

この記事では、株式会社と合同会社どちらの会社を設立すればいいか悩んでおられる方を対象に、株式会社と合同会社の違いや、株式会社に向いているケース、合同会社に向いているケースについて、司法書士がわかりやすく解説します。

株式会社と合同会社の設立手続きについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。



目次

株式会社と合同会社の違いとは?【どちらの会社がいい?】

株式会社と合同会社の違いをおおまかにいうと次の通りです。

株式会社 株主が会社を所有し、取締役に経営を任せる

・合同会社 社員が会社を所有して、経営する


株式会社は株主が会社を所有して、取締役に経営を任せるという仕組みです。

株式会社のオーナーは株主です。

株式会社が利益を上げると、株主は配当を受けることができます。

しかし株主は経営のプロとは限りません。

そこで経営のプロを取締役に選任して、取締役に経営を任せることで、株主は経営のノウハウがなくても株式会社を通して利益を上げることができます。

もちろん株主が取締役を兼ねているケースも多いです。

しかし仕組みとしては、株式会社は、株主が会社を所有して経営のプロである取締役に経営を任せるという形態に向いているのです。

 

オフィス街

一方合同会社は、オーナーである社員が自ら会社を経営するという仕組みになります。

「社員」というと一般的には従業員を意味する言葉ですが、法律的には「社員」は法人の構成員のことをいいます。

株式会社では構成員のことは株主といいますが、合同会社では社員といいます。

合同会社では、基本的には出資した社員が会社の経営も行うことになります。

たとえば、ビジネスのアイデアがあり経営のノウハウはあるけど資金がない人と、その人に出資したいと思っている資本家が共同で事業を行うような場合は、明らかに株式会社の方が向いています。

しかし、自分ひとりで出資して経営も行う場合や、仲間内でお金を出し合って共同で経営していくような場合は、株式会社と合同会社どちらも選択することができます。

株式会社と合同会社いずれかにするか選択するためには、その違いを知って、ご自分の事業がどちらに向いているかを判断することが重要です。

なお、合同会社を設立したあとでも、株式会社へ組織変更することが可能です。

なので、とりあえず設立費用が安い合同会社を設立し、事業の規模が大きくなったら株式会社に組織変更するという方法を取ることもできます。

それでは、株式会社と合同会社それぞれのメリットとデメリットをくわしくみてみましょう。


株式会社のメリットとデメリット

株式会社のメリットは次の通りです。

・多様な機関設計ができる

・株式を活用することができる

・知名度が高い

・上場(IPO)できる


株式会社のデメリットは次の通りです。

・設立費用が高い

・設立手続きが少し面倒

・維持費用が高い

 

株式会社のメリット1 多様な機関設計ができる

CEO

株式会社は、多様な機関設計ができます。

もっともシンプルな形態だと、株主総会と取締役1名だけの会社にすることができます。

それ以外にも株式会社には、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、委員会など取締役の業務執行を監督するための機関が用意されています。

そのため会社の規模にあわせてガバナンスを強化するための体制をつくることができます。


株式会社のメリット2 株式を活用することができる

株式会社は株式を発行することで資金調達をしやすいのがメリットです。

また、役員や従業員に対してストックオプションを与えることもできます。


株式会社のメリット3 知名度が高い

株式会社はなんといっても知名度が高いのがメリットです。

一般の人だと、「合同会社」なんて聞いたことがないという人もいるかもしれませんが、「株式会社」は聞いたことがないという人はまずいないでしょう。


株式会社のメリット4 株式上場(IPO)できる

株式会社は株式上場することができます。

合同会社の場合は、株式上場するためには株式会社に組織変更する必要があります。


株式会社のデメリット1 設立費用が高い

法務局

合同会社にくらべて株式会社の方が、設立費用が高いのが株式会社のデメリットです。

株式会社を設立するには、定款を公証人に認証してもらう必要があります。

定款認証は公証人に手数料として、5万円(電子定款ではない場合は9万円)かかります。

一方、合同会社は定款認証の必要はありませんので、公証人の手数料がかかりません。

また株式会社も合同会社も設立するためには登記することが必要です。

登記するためには登録免許税という税金がかかります。

株式会社の登録免許税は、次の通り。

・株式会社の登録免許税 = 資本金の額 × 0.7% 


ただし、上記で計算した額が15万円以下の場合は15万円です。

つまり最低でも15万円の登録免許税がかかるということです。

一方、合同会社の登録免許税は、次の通り。

・合同会社の登録免許税 = 資本金の額 × 0.7%


株式会社と同じ計算式です。

ただし、上記で計算した額が6万円以下の場合は6万円になります。

つまり最低でも6万円の登録免許税がかかるということです。

株式会社も合同会社も、謄本代などで数千円かかります。

まとめると次の通りになります。

・株式会社 約20万円~

・合同会社 約6万円~


司法書士に手続きを依頼する場合は司法書士の報酬がかかりますが、自分で手続きを行う場合は以上です。

ご覧の通り合同会社より株式会社の方が、設立費用が高くなります。


株式会社のデメリット2 設立手続きが少し面倒

株式会社は、定款を作成したあと公証人に定款を認証してもらわないといけないので、その分手間がかかってしまいます。

また合同会社より株式会社の方が必要書類の数が多く、その点でも少し手続きが面倒です。


株式会社のデメリット3 維持費用が高い

株式会社の場合、取締役の任期が約2年です。

取締役が重任する場合であっても、2年ごとに登記をする必要があり、そのたびに登録免許税と司法書士の報酬がかかってしまいます。

取締役の任期は定款で定めることで、最大10年まで伸ばすことができますが、定期的に役員変更の登記が必要なことには変わりありません。

一方、合同会社は役員の任期がありません。

なので役員が変わらない場合は登記も不要です。


また株式会社は決算公告をしないといけません。

決算公告とは、前年度の決算内容を官報や新聞などに掲載して、広く一般に情報公開することです。

株式会社には決算公告の義務があります。

官報や新聞に公告を掲載するための掲載費用がかかってしまいます。

一方、合同会社には決算公告の義務がありません。

以上の通り、合同会社より株式会社の方が、維持費用が高いといえます。


合同会社のメリットとデメリット

合同会社のメリットは次の通りです。

・設立費用が安い

・設立手続きが簡単

・維持費用が安い

・スピーディーな意思決定ができる

・社員には出資金額に関係なく平等な発言権がある

・損益の分配を自由にできる

・会社内部のことは定款で自由に決めることができる


合同会社のデメリットは次の通りです。

・知名度が高くない

・上場できない



合同会社のメリット1 設立費用が安い

株主総会のデメリットで説明した通り、合同会社の方が手続き費用は安く済みます。


合同会社のメリット2 設立手続きが簡単

合同会社は定款認証が不要ですので、その分手間がかかりません。

また株式会社より合同会社の方が、必要書類の数が少ないですので、その分手続きが簡単です。


合同会社のメリット3 維持費用が安い

株式会社のデメリットで説明した通り、合同会社の方が維持費用が安いです。


合同会社のメリット4 スピーディーな意思決定ができる

合同会社は株主総会や取締役会などの機関が不要なので、いちいち株主総会や取締役会の会議を開催することなく意思決定をスピーディーに行うことができ、臨機応変な経営をすることが可能です。


合同会社のメリット5 社員には出資金額に関係なく平等な発言権がある

会議

合同会社は、出資金額に関係なく平等な発言権(議決権)があります。

株式会社の場合、出資した株主には出資した金額に応じて株式が発行され、株式の数に応じて株主総会の議決権があります。

なので多く出資した人には多くの議決権がある一方、少ししか出資していない人には少しの議決権しか与えられません。

合同会社であれば、出資金額に関係なく社員には平等な発言権(議決権)が与えられます。

ただし合同会社でも、定款に定めることにより出資金額に応じて社員に議決権を与えることができます。


合同会社のメリット6 損益の分配を自由にできる

合同会社は、出資比率と異なる損益の分配(配当)を行うことができます。

株式会社の場合は、原則として株式の数に応じて配当しないといけません。


合同会社のメリット7 会社内部のことは定款で自由に決めることができる

合同会社は会社内部のことは定款で自由に決めることができます。

持分会社の定款には、法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができるとされています(会社法577条)。

なので合同会社の方が比較的自由に会社内部のことを決めることができるといえます。


合同会社のデメリット1 知名度が高くない

合同会社の制度は2006年(平成18年)5月1日からはじまりました。

比較的新しい形態の会社なので、株式会社にくらべると知名度が高くないというデメリットがあります。


合同会社のメリット2 上場できない

合同会社はそのままでは上場できません。

合同会社を上場させたいと思った場合、合同会社から株式会社に組織変更する必要があります。


株式会社に向いているケース

上記の株式会社のメリット、デメリットをふまえると次のようなケースが株式会社に向いているといえます。

・株式上場(IPO)を目指している

・株式による資金調達を予定している

・当初からある程度大きな規模で事業を開始する予定がある


株式会社に向いているケース1 株式上場(IPO)を目指している

合同会社は株式上場できませんので、上場を目指す場合は株式会社の方がいいでしょう。


株式会社に向いているケース2 株式による資金調達を予定している

株式を発行して資金調達したい場合は、当然株式会社の方がいいです。


株式会社に向いているケース3 はじめからある程度大きな規模で事業を開始する予定がある

株式会社の方が大きな規模で事業を行うのに適しているので、はじめからある程度大きな規模で事業を行う場合は株式会社の方がいいでしょう。


合同会社に向いているケース

上記の合同会社のメリット、デメリットをふまえると次のようなケースが合同会社に向いているといえます。

・法人格があればいいケース

・とにかく費用を抑えたいケース

・出資金額にかかわらず、議決権を平等にしたいケース

・会社の社名を全面に出さないケース

・子会社


合同会社に向いているケース1 法人格があればいいケース

資産管理会社や節税のための会社など、法人格があればいい場合なら合同会社でも十分です。


合同会社に向いているケース2 とにかく費用を抑えたいケース

合同会社の方が設立費用や維持費用が少ないので、とにかく費用を抑えたい場合は合同会社がおすすめです。


合同会社に向いているケース3 出資金額にかかわらず、議決権を平等にしたいケース

合同会社は原則として出資金額にかかわらず議決権が平等なので、各々の議決権を平等にしたい場合は合同会社の方がおすすめです。


合同会社に向いているケース4 会社の社名を全面に出さないケース

美容院や飲食店など店舗名を全面に出して営業するような場合は、会社名はあまり表に出ず、会社の種類はあまり問題にならないので合同会社でも十分でしょう。


合同会社に向いているケース5 子会社

子会社を機動的に運営したい場合は、合同会社の方が適しています。

合同会社は株主総会も取締役会もないため、スピーディーな意思決定が可能です。

また子会社の場合、親会社の名前の方が全面に出ることが多いので、合同会社の知名度の低さはあまり問題にはならないでしょう。


合同会社から株式会社に組織変更できる

株式会社

合同会社は株式会社に変更することができます。

なので最初は設立費用を抑えるために合同会社を設立して、事業の規模が大きくなってから株式会社に組織変更するという方法もあります。

また株式会社から合同会社に組織変更することもできます。

組織変更する場合、登録免許税がかかります。

登録免許税の額は、資本金の額の0.15%(組織変更と同時に資本金を増額する場合は、増額の部分については0.7%)です。

ただし上記の式で計算した額が、3万円に満たないときは3万円になります。

組織変更の手続きを司法書士に依頼する場合は、さらに司法書士の報酬がかかります。

組織変更については定款認証がいりませんので、定款認証の費用はかかりません。


まとめ

以上、株式会社と合同会社の違いや、株式会社に向いているケース、合同会社に向いているケースについてについて解説しました。

それでもどちらにすればいいか悩むという方は、司法書士など専門家に相談してみるのもいいでしょう。

大阪周辺なら、当事務所でも承っております。

お気軽にご相談ください。

くわしくは、こちらのページをご覧ください。

・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の会社・法人設立サービス


それでは今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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