(2023年版)離婚原因5つを司法書士がわかりやすく解説
「妻から離婚したいと言われてしまいました。離婚したくないのですが、どのような事が離婚原因になるのですか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
協議離婚などでは、当事者双方が離婚に納得していれば、とくに理由なく離婚することができます。
しかし、離婚裁判で離婚する場合、離婚原因が少なくとも一つはないと離婚できません。
この記事では、離婚原因についてわかりやすく解説します。
目次
(2023年版)離婚原因5つを司法書士がわかりやすく解説
協議離婚や調停離婚では、双方が納得して離婚することになるので、離婚原因などなくても離婚することができます。
しかし、話し合いや調停で合意に至らず、裁判まで行った場合、理由なく離婚することができず、離婚原因があることが必要になります。
裁判離婚では、合意なく裁判で強制的に離婚することになるからです。
離婚原因は5つあります。法律で決められています(民法770条)。
- 1 不貞行為
- 2 悪意の遺棄
- 3 3年以上の生死不明
- 4 回復の見込みのない強度の精神病
- 5 その他婚姻を継続し難い重大な事由
これらのうちのどれかに該当しないと裁判では離婚が認められません。
そのため、これらに該当しない場合に離婚するには、お互い離婚に合意しないといけないということです。
また、これらの離婚原因があったとしても、裁判でその事実を証明する必要になります。
なので、これらの事実を証明する証拠や証言がどれだけあるかということが重要になります。
また、離婚原因があった場合に必ず離婚が認められるとは限りません。
あらゆる事情を総合的に判断して、婚姻を継続することが相当と裁判所が判断することもあります。
それでは、それぞれの離婚原因についてくわしく解説します。
離婚原因1 不貞行為
不貞行為は、肉体関係の浮気のことです。
判例によると、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう、と定義されています(最判昭和48年11月15日)。
- ・外部リンク 裁判所 裁判例結果詳細
不貞行為は、回数は関係なく、たった一度でも性交渉があれば不貞行為に当たります。
また恋愛感情がなくても不貞行為になります。
性交渉がない恋愛については、一般的には不貞行為にはなりませんが、その他婚姻を継続し難い重大な事由とみなされ、離婚原因になる可能性はあります。
裁判では離婚原因があったことを証明しないといけません。
もし、相手方の不貞行為により離婚したいと考えている場合は、メールやSNSのやり取りや、ホテルや飲食店のレシート、カードの明細などの証拠を集めていく必要があります。
もし相手方が不貞行為を認めている場合は録音したり、書面にして署名をもらっておくなどしておきましょう。
離婚原因2 悪意の遺棄
悪意の遺棄は、同居・協力・扶助義務や婚姻費用分担義務 といった夫婦の義務に違反して、一方が他方を放置してしまうようなことをいいます。
配偶者の一方が、夫婦で同居している家から出て行いき、同居を求めても戻らず、全く生活費を払わない、というような状態です。
結婚している夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないとされています(民法752条)。
悪意の遺棄は、この義務に反しているため離婚原因になります。
悪意の遺棄は、社会通念上、倫理的な非難を受けて当然というケースに認められます。
なので、たとえば次のような場合は悪意の遺棄にあたりません。
- ・単身赴任による別居
- ・配偶者の暴力から逃げるために家を出た場合
- ・ぎくしゃくした夫婦関係を考え直す冷却期間のために一時的に別居
- ・病気の治療のため長期入院
- ・健康上の問題で働けず、生活費を家に入れていない
離婚原因3 3年以上の生死不明
3年以上の生死不明とは、音信が途絶えてから3年がたち、生きているのか死んでいるのか不明な状態のことです。
配偶者が出て行ってしまって3年以上でも、電話やメールなどで連絡が取れる場合はこれにあたりませんが、悪意の遺棄にあたる可能性があります。
また音信不通が7年以上になる場合には失踪宣告を裁判所に申し立てることもできます。
失踪宣告が確定すると、行方不明者は亡くなったものとみなされ、死亡により婚姻は解消されることになります。
また、配偶者は相続人として財産を相続することができます。
失踪宣告についてはこちら。
離婚原因4 回復の見込みのない強度の精神病
夫婦の一方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合は、離婚原因になります。
精神病が回復の見込みのないことについては、医師の診断が必要になります。
不貞行為や悪意の遺棄については本人の責任といえますが、精神病については本人には落ち度はありません。
そのため、単に回復の見込みのない強度の精神病であることをもって離婚が認められることはあまりありません。
それまでの結婚生活の状況や、これまでに誠実に相手方を看病してきたか、離婚後に精神病になった配偶者の生活について見通しがついているかなど、様々な要素を考慮して裁判所が判断します。
離婚原因5 その他婚姻を継続し難い重大な事由
以上の離婚原因1~4の場合に当てはまらなくても、その他に婚姻を継続し難い重大な事由がある場合は、離婚が認められることがあります。
婚姻を継続し難い重大な事由とは、たとえば、次のような場合です。
- ・性格の不一致
- ・暴力、虐待
- ・配偶者の親族との不仲
- ・ギャンブル、浪費
- ・多額の借金
- ・限度を超えて宗教にのめりこむ
- ・性交渉の拒否など性の不一致
性格の不一致
性格の不一致により、夫婦関係が破綻し、修復が不可能というようなケースです。
単に性格が合わなくなったという理由では認められないこともあります。
暴力、虐待
配偶者からの暴力や虐待がある場合です。
暴力、虐待は身体的なものに限られません。
DV法(配偶者暴力防止法)では、配偶者からの暴力について、身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの、またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう、と定義されました。
言葉による精神的なもの、経済的なもの、性的なものについても暴力にあたることがあるということです。
ただし、夫婦げんかの中で、カッとなって一度だけ暴言を吐いたり、軽くはたいてしまったとしても、本人が深く反省している場合については、夫婦関係が修復可能と判断されて離婚が認められない場合もあります。
配偶者の親族との不仲
配偶者の親族との不仲、たとえば、配偶者の親族から度を超えた暴言を吐かれ、それを配偶者に相談しても無視されたり、親族の味方についたりするなどして夫婦の信頼関係が破綻して修復不可能になったような場合は離婚原因になります。
配偶者との不仲を解消するために、配偶者がどのような対応をしたのかが重要になります。
ギャンブル、浪費
ギャンブルや自分の趣味などにのめりこみ、生活費を渡さなかったり、生活費に手を付けてしまい、それによって婚姻関係が破綻してしまったようなケースです。
多額の借金
ギャンブルや浪費により多額の借金までし、夫婦が協力して返済していけるような額を超えてしまい、それによって婚姻関係が破綻してしまったようなケースです。
限度を超えて宗教にのめりこむ
ただ宗教を信仰しているだけでは離婚が認められることはありません。
しかし宗教活動にのめりこむあまり、全く働かなかったり、家計が破綻するほどの寄付などをしてしまうなどの場合には、離婚が認められることがあります。
性交渉の拒否など性の不一致
性交渉を数回拒否されただけでは離婚原因にはなりません。
しかし、一方が理由もなく長期間にわたって性交渉を拒否し、それによって夫婦関係が破綻した場合は、離婚が認められることがあります。
有責配偶者からの離婚請求
離婚原因がある方(有責配偶者)からの離婚請求も認められる可能性があります。
たとえば、不貞行為をした方から離婚裁判を起こした場合でも離婚が認められる場合もあるということです。
以前は、このような有責配偶者からの請求は認められませんでしたが、現在は婚姻関係が破綻しているような場合は認められ場合があります。
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 1 別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間 に及ぶこと
- 2 未成熟の子(20歳未満の子ども)が存在しないこと
- 3 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態 に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえる ような特段の事情が認められないこと
1の別居期間について明確な基準はありません。
別居期間が約6年程度の場合に有責配偶者からの離婚請求を認めた下級審の判例があります。
まとめ
以上、離婚原因について解説しました。
まとめると離婚原因は次の通りです。
- 1 不貞行為
- 2 悪意の遺棄
- 3 3年以上の生死不明
- 4 回復の見込みのない強度の精神病
- 5 その他婚姻を継続し難い重大な事由
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初回相談無料ですので、お気軽にご相談ください。
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というわけで今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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