登記識別情報(権利証)が発行されない場合【不動産登記】

不動産登記の相談者

「先日、父が亡くなりました。相続人は、母と、私と兄の3人です。自宅の不動産については、法定相続分で相続することになり、兄が代表して1人で登記手続きを行ったのですが、私と母の分の権利証が発行されませんでした。どういうことでしょうか?」

 
 

大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

不動産の権利証は、正式には登記識別情報といいます。

登記識別情報は、登記すれば必ずしも発行されるとは限りません。

この記事では、登記識別情報が発行されない場合について、わかりやすく解説します。

 

登記識別情報(権利証)が発行されない場合【不動産登記】

権利証

登記識別情報(権利証)は、登記することによって申請人自らが登記名義人になる場合に発行されます(不動産登記法21条)。

逆にいうと、これ以外の場合は、登記しても登記識別情報は発行されません。

たとえば、相続登記において、登記名義人となる相続人のうちの1人が代表して登記手続の申請人となった場合は、申請人となった相続人には権利証が発行されますが、そのほかの相続人には権利証は発行されません。

図

相続登記については、こちら。

  1. ・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】

 

また申請人であっても、登記名義人にならない人にも登記識別情報(権利証)は発行されません。

たとえば、債権者は、債務者が不動産を相続したのに相続登記しないような場合に、債務者に代わって相続登記を申請することができます。

しかし、この場合の債権者は自らが登記名義人にならないので、登記識別情報(権利証)は発行されません。

ただし、不動産の買主への所有権の移転の登記をしないまま買主が亡くなったため、買主の相続人が申請人となって、不動産の買主への所有権の移転の登記がされた場合、申請人である相続人に対し、登記識別情報が発行されます(平成18年02月28日民二523)。

また、次の場合にも登記識別情報(権利証)は発行されません。

・登記識別情報の通知を希望しない旨を届け出た場合

・電子申請の場合に30日以内にダウンロードしなかった場合

・書面申請の場合に3カ月以内に受け取らなかった場合

・官庁・公署が登記名義人の場合

 

登記識別情報の通知を希望しない旨を届け出た場合

登記を申請するときに、登記識別情報の通知(発行)を希望しないことができます。

この場合は、発行されません。

主に企業が名義人になる場合などで、登記識別情報の管理が大変などの理由で登記識別情報の通知(発行)を希望しないことがあります。

 

電子申請の場合に30日以内にダウンロードしなかった場合

登記識別情報は、12ケタの数字やアルファベットによるパスワードのようなもので、登記識別情報通知として発行される紙は、この情報が記載されているだけのものです。

電子申請の場合には、紙を発行せずにこの情報をダウンロードすることで通知を受けることができます。

この場合に、ダウンロード可能になったときから30日以内にダウンロードしなかった場合は、登記識別情報は通知されません。

 

書面申請の場合に3カ月以内に受け取らなかった場合

書面申請の場合では、3カ月以内に受け取らなかった場合は、登記識別情報は発行されません。

 

官庁・公署が登記名義人の場合

登記識別情報の通知を受けるのが官庁などの場合は、登記識別情報は通知されません。

 

登記識別情報が無くても大丈夫?

困っている人

登記識別情報(権利証)は、登記手続きに必要な情報の一つですが、それがないからといって不動産の権利が無くなるなどはありません。

なので、登記識別情報(権利証)が発行されていなくても問題ありません。

不動産についての権利があることについては、登記簿謄本(登記事項証明書)という書面で証明することができます。

登記簿謄本(登記事項証明書)は手数料がかかりますが、いくらでも発行することができます。

・関連記事 登記事項証明書の取り方を司法書士がわかりやすく解説


登記識別情報(権利証)が必要になるのは、不動産を売るときや、担保に入れるときくらいです。

その場合でも、登記識別情報(権利証)がない場合の手続きが用意されています。

  1. ・関連記事 権利証を紛失した場合、どうすればいい?【事前通知か本人確認情報】

 

また相続登記など登記識別情報(権利証)が必要ない登記もあります。

  1. ・関連記事 権利証がなくても相続登記はできる?【こたえ:できます】

 

まとめ

以上、登記識別情報が発行されない場合について解説しました。

当事務所は、大阪の司法書士・行政書士事務所です。

当事務所では、不動産登記についての相談を承っています。

初回相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。