換価分割とは?遺産分割協議書の書き方【遺産分割の方法】

相続の相談者

「先日、父が亡くなりました。遺産分割協議をしようと思うのですが、私の兄がいろいろ調べていたところ、換価分割という方法がいいのではないかと提案がありました。換価分割とは何でしょうか?くわしく教えてください」



大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

換価分割とは、相続財産を売却して、売却代金を分割する遺産分割方法です。

遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割という方法があります。

換価分割は、遺産分割協議の方法の一つです。

相続財産が、現金だけなら相続分で割ることができますが、不動産や自動車などの動産は、物理的に分けることが難しいです。

そこで、相続人同士で相続財産をどう分けるか話し合う遺産分割協議が必要になります。

  1. ・関連記事 遺産分割協議とは何か?【遺産の分け方についての話し合い】

 

この記事では、換価分割についてわかりやすく解説します。

 

換価分割とは?遺産分割協議書の書き方【遺産分割の方法】

相続

換価分割は、相続財産を売却して、売却代金を分割する遺産分割方法です。

たとえば、父が被相続人(亡くなった人)で、相続人が長男と次男、遺産が2000万円の不動産の場合に、この不動産を2000万円で売却して、その売却代金を長男と次男が1000万円ずつ分ける方法です。

換価分割

物理的に分けることが難しい不動産でも、お金に換えてしまえば、分けることができます。

相続財産に自宅不動産があるけども、相続人が誰も住む予定がないというような場合に使われます。

 

なお、現金については、相続分で割ることができるため、原則として、遺産分割の対象にはならないとされています(最判昭和29年4月8日)。

たとえば、遺産が現金4000万円だけで、相続人が配偶者と長男、次男の場合、法定相続分は、配偶者2/4、長男1/4、次男1/4なので、配偶者2000万円、長男1000万円、次男1000万円となります。

もっとも、相続人同士で合意して、現金を遺産に含めて遺産分割協議することは全く問題ありません。

また預貯金については、現金と同じく割ることができますが、預貯金は当然に相続分に応じて、分割されることはなく、遺産分割をする必要があります(最大決平成28年12月19日)。

 

換価分割の場合の遺産分割協議書の記載例

遺産分割協議書

遺産分割協議があった場合、遺産分割協議書という書面を作成する必要があります。

遺産分割協議書は、相続した不動産の名義変更(相続登記)などの必要書類になります。

換価分割の場合の遺産分割協議書は、下記のように記載します。

ただし、遺産分割協議書の内容は、ケースバイケースですので、それぞれの事情に合わせて作成してください。

  1. 第○条 相続人全員は、被相続人A(令和○年○月○日死亡)の遺産の全部を換価し、その換価金から被相続人Aの一切の債務を弁済した後の残金を次のとおり分配することに合意した。
  2.    相続人B  ○分の○
  3.    相続人C  ○分の○
  4.    相続人D  ○分の○

 

換価分割の場合の相続登記

不動産登記権利情報

不動産を換価分割する場合、相続が発生してから売却するまでは、不動産は相続人に所有権がある状態になります。

そのため、この場合は不動産につき、買主名義への所有権移転登記をする前に、相続人名義への所有権移転登記(相続登記)をする必要があります。

相続登記

この相続登記については、相続人全員名義で登記する場合と、相続人のうち1人の代表相続人名義にする場合があります。

相続人全員名義で登記する場合は、その後、相続人全員と買主が不動産の売買契約を締結して、相続人全員から買主へ所有権移転の登記をします。

相続人のうち1人の代表相続人名義で登記する場合は、手続きの便宜上1人の相続人の名義にしておいて、その後、その相続人と買主の間で売買契約と所有権移転登記手続きをして、売買代金を相続人の間で分配するという方法です。

相続人全員名義で登記する場合は、全員で売買契約や所有権移転手続きをしないといけないので、多少手続きが複雑になります。

なので、いったん相続人のうち1人の代表相続人名義で登記する方法がよく行われることがあります。

その他、相続登記のくわしい手続きはこちらの記事をご覧ください。

  1. ・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】

 

換価分割以外の遺産分割の方法

遺産分割協議

遺産分割の方法には、換価分割の他に、現物分割代償分割、共有分割という方法があります。

・関連記事 遺産分割方法のまとめ 司法書士がわかりやすく解説


換価分割以外の遺産分割の方法1 現物分割

現物分割とは、各財産をそのまま各相続人が相続する分割方法です。

たとえば、不動産は長男が相続して、預貯金は次男が相続する場合などです。

くわしくはこちら。

  1. ・関連記事 現物分割とは?わかりやすく解説します【遺産分割の方法】


換価分割以外の遺産分割の方法2 代償分割

代償分割とは、特定の相続人が財産を相続する代わりに、ほかの相続人に対して金銭などを支払う分割方法です。

たとえば、長男が不動産を相続する代わりに、長男が次男に代償金を支払うようなケースです。

亡父の遺産が2000万円の不動産だけで、相続人が長男と次男だった場合、長男が不動産を相続し、次男に1000万円支払うような遺産分割方法が代償分割です。

相続財産が建物など、物理的に分割しにくいものが多く、現預金など分割しやすいものがあまりないような場合に使われます。

くわしくはこちら。

  1. ・関連記事 代償分割とは?遺産分割協議書の書き方【遺産分割の方法】


換価分割以外の遺産分割の方法3 共有分割

共有分割とは、遺産を相続人同士で共有する遺産分割方法です。

現物分割が難しく、相続人が他の分割方法を望まない場合にされることがあります。

・関連記事 共有分割とは?司法書士がわかりやすく解説【遺産分割方法】

 

まとめ

以上、換価分割について解説しました。

当事務所は大阪の司法書士・行政書士の田渕です。

当事務所では、相続についての相談を承っています。

当事務所の相続手続き総合サポートサービスの詳細はこちら。

  1. ・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の相続手続き総合サポートサービス


というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。