遺言の付言事項とは?家族につたえるメッセージ【遺言の文例】

遺言の相談者

「私には、妻と長男、次男がいます。妻と子ども2人に相続させる遺言を作成しようと思っていますが、長男は介護が必要な妻の面倒をみてくれているため、長男に多めに相続させようと思います。そうすると次男が不満に思うかもしれませんので、そのような遺言を書いた理由を丁寧に説明しておきたいと思います。このような記述を付言事項というと聞きました。付言事項についてくわしく教えてください」

 

大阪の司法書士・行政書士の田渕です。お答えします。

付言事項とは、遺言書に記載する、家族に対する感謝の気持ちや心情などを伝えるメッセージです。

付言事項は、必ずしも遺言に書かないといけないわけではありません。

しかし、遺言に家族に対するメッセージを残しておくことで、相続人同士の対立を防いだり、遺言についての不満を和らげる効果が期待できます。

この記事では、付言事項について、文例付きでわかりやすく解説します。


遺言の付言事項とは?家族につたえるメッセージ【遺言の文例】

遺言書

遺言には、家族に対しての感謝の気持ちなど自分の想いを自由に記載することができます。

これが付言事項です。

遺言を書いた人の「想い」や「願い」、このような趣旨の遺言を書いた理由などを記載します。

付言事項には法的な拘束力はありません。

しかし、付言事項を書いておくことで、相続争いを防いだり、遺言についての不満を和らげる効果が期待できます。

たとえば、特定の子どもに多めに財産を相続させる遺言を書く場合に、そのような財産の分け方にする理由や、相続分が少ないからといって愛情が少ないわけではない、といったことを書いておくことで、相続分が少ない子どもの不満をやわらげ、遺産争いを防ぐことができるかもしれません。

遺言の効力が生じるのは、遺言を書いた人が亡くなった後です。

その時点では、遺言者の気持ちを直接確認することはできません。

なので、こうして遺言の中に遺言を書いた人の気持ちを書いておくと、遺された家族としても、気持ちの整理がしやすくなるのではないでしょうか。

遺言書は家族への最後のメッセージです。

どうせ遺言を書くなら、最低限の必要事項だけを記載した遺言ではなく、家族への想いを伝える遺言書を書いてみましょう。


遺言の付言事項の内容は自由

遺言の付言事項に何を書くかは自由です。

付言事項の書き方が間違えたために遺言書全体が無効になることはありませんので、安心して、自由に記載してください。

一般的には、次のようなことを記載することが多いかと思います。

  1. ・家族への感謝の気持ち
  2. ・このような遺言書を書いた理由
  3. ・葬儀の方法についての希望
  4. ・ペットの世話をお願いしたい


付言事項の文例

付言事項の書き方は自由ですが、そうはいってもどういう風に書いたらいいかわからない方もいらっしゃると思います。

ここでは、いくつかの事例にあわせて文例を記載しておきます。

あくまで参考例ですので、ご自分の状況にあわせて記載してください。

  1. 1 遺言を書いた理由
  2. 2 家族への感謝を表す場合
  3. 3 遺留分を請求しないように求める場合
  4. 4 親の介護を求める場合
  5. 5 子どもへの支援や養育を求める場合
  6. 6 葬儀方法についての希望を伝える場合
  7. 7 ペットの世話を求める場合
  8. 8 愛用品についての保管などを求める場合


付言事項の文例1 遺言を書いた理由

  1. 【付言事項】
  2.  このような遺言を遺したのは、Aは定職に就き、収入が安定している一方、Bには障害があり、配偶者もいないことから、万が一のことに備え、財産を残す必要があると考えたからです。私にとっては、AもBも大事な子どもです。相続に関して決して争うことなく、兄弟でいつまでも仲良く幸せに暮らしてください。

遺言を書いた理由や趣旨を説明するものです。

子Aより、子Bに多めに相続させる遺言を書いた場合に、そのような遺言を書いた理由を説明しています。

そうすることで遺族に遺言の趣旨を理解してもらい、結果として遺産争いを防ごうというものです。


付言事項の文例2 家族への感謝を表す場合

家族
  1. 【付言事項】
  2.  A夫婦は、私と同居し、私や私の妻の世話をしていてくれていました。今後も私たち老後のお世話をすると言ってくれています。Aには心から感謝しています。なので、私はAに財産を多めに相続させることにしました。家族みんなでいつまでも仲良く幸せに暮らしてください。

家族への感謝を表す場合の例文です。


付言事項の文例3 遺留分を請求しないように求める場合

  1. 【付言事項】
  2.  Aは、交通事故の障害で働くことができず、今後、一人で生活することが困難で、その生活を支援する必要があります。なので、遺産を全てAに相続させることにしました。Bにお願いがあります。Bには、遺留分を請求しないでもらいたいのです。AもBも私の大事な子どもです。私が亡くなった後もAとBには、仲良く助け合いながら生きていってほしいと願っています。

子Aに遺産をすべて相続させる場合に、子Bに遺留分を請求しないようにお願いする場合の例文です。

遺留分とは、相続人に残しておくべき最低限の取り分のことです。

  1. ・関連記事 遺留分とは?司法書士がわかりやすく解説【相続人の取り分】

 

たとえ、遺言で相続人の一人にすべて相続させたとしても、ほかの相続人はこの遺留分を請求することができます。

遺留分は、法律で相続人に認められた権利ですので、遺言であっても、相続人から遺留分を奪うことはできません。

そこで付言事項で、Bに遺留分を請求しないようにお願いしておくのです。

ただし、このようなお願いをしても、法的に拘束することはできません。

なので、Bが遺留分を請求することを思いとどまるように、心をこめてBに愛情を伝える文章を書いておきましょう。

 

付言事項の文例4 親の介護を求める場合

介護
  1. 【付言事項】
  2.  AとBには、私の妻Cの介護をしてほしいと考えています。そのため、AとBには多めに遺産を相続させることにしました。私が亡くなった後もCが穏やかに暮らせるよう、二人で協力してCの介護をしてほしいと思っています。それが私の最後の願いです。いい家族に恵まれて幸せな人生でした。ありがとう。

相続人に妻の介護をお願いする付言事項です。

付言事項なので、法的な拘束力はなく、相続人に介護をする義務が発生するわけではありません。

なので、このような遺言を書いた趣旨を丁寧に説明し、遺族へお願いする必要があります。


付言事項の文例5 子どもへの支援や養育を求める場合

子どもの養育
  1. 【付言事項】
  2.  Aに、他の兄弟より多くの財産を相続させることにしたのは、Dがまだ幼いので、Aに、Dを養育してほしいと考えているからです。お母さんも亡くなって、頼れるのは長男のAだけです。私の亡くなった後もDが健やかに過ごせるように、Aにはよろしく頼みます。

子どもたちの年齢が離れており、一番下の子どもが未成年の場合に、長男にその子どもの養育をお願いする付言事項です。

この場合も、法的な拘束力はないので、このような遺言を書いた趣旨を丁寧に説明し、遺族へお願いする必要があります。

 

付言事項の文例6 葬儀方法についての希望を伝える場合

葬儀等を行わないことを希望する場合の付言事項です。

  1. 【付言事項】
  2. 葬儀や告別式は執り行わないようおねがいします。代わりに、近親者だけで「偲ぶ会」を行ってほしいと思います。


信仰する宗派の葬儀の開催を希望する場合の付言事項です。

  1. 【付言事項】
  2. 私の葬儀及び告別式については○○宗○○寺において行われることを希望します。


葬儀方法を遺言に記載する場合、封をせず、家族に保管場所を知らせておきましょう。

なぜなら、遺言は死後すぐに開封されるとは限られず、葬儀が行われた後に開封されることがあるからです。

他の遺言内容について事前に見られたくないという場合、遺言書とは別に、葬儀方法だけを指定した遺言書を作って家族に預けておくという方法もあります。


付言事項の文例7 ペットの世話を求める場合

ペット
  1. 【付言事項】
  2. Bには、私が生前飼っていた愛犬○○(犬種:○○、性別○○)の世話をお願
  3. いします。Bには、愛犬○○を家族同様に大切に扱ってほしいと願っています。

ペットのお世話を遺族にお願いする付言事項です。

この場合も、法的な拘束力はないので、このような遺言を書いた趣旨を丁寧に説明し、遺族へお願いする必要があります。


付言事項の文例8 愛用品についての保管などを求める場合

  1. 【付言事項】
  2. 私が生前収集していた骨董品については、遺言者が長い時間をかけ収集保管してきたものです。大切に扱い、人に譲ることのないよう保管することをお願いします。

愛用品について、処分せずに保管することをお願いするものです。

動産は相続財産ですので、亡くなった後は相続人が相続します。

相続した後は、その相続人のものになるので、自由に処分できてしまいます。

そこで、愛着があり処分してほしくないものについて、保管をお願いしておくことができます。

ただし、これも相続人を法的に拘束するものではありませんので、なぜ処分してほしくないのか丁寧に説明して、お願いする必要があります。


付言事項以外の遺言の書き方

遺言には、付言事項以外にも書いておいた方がいい事項があります。

遺言の書き方全般については、別記事にまとめてあるので、ぜひご覧ください。

  1. ・関連記事 遺言の書き方【遺言の文例と気を付けるポイント】


付言事項の書き方がわからない場合は専門家に相談しましょう

専門家

付言事項の書き方は自由ですが、どう書いたらいいかわからない、うまく文章を書けないという場合は、司法書士などの専門家に相談してみるのもいいでしょう。

大阪の方なら当事務所でも承っています。

当事者は大阪の司法書士・行政書士事務所です。

あなたの想いをお聴きし、その想いをご家族に伝えるお手伝いをさせていただきます。

当事務所の遺言書作成サポートサービスの詳細はこちらの記事をご覧ください。

  1. ・関連記事 田渕司法書士・行政書士事務所の遺言書作成サポートサービス


まとめ

以上、付言事項について解説しました。

付言事項は、家族への想いを伝える最後のメッセージです。

ぜひ心のこもった遺言書を書いてみましょう。

当事務所のホームページでは他にも遺言についての記事を更新しています。

よろしければご覧ください。

  1. 遺言書作成についてアドバイス


というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。