株式会社の本店移転の登記手続きを司法書士が解説します

「株式会社を経営しています。このたび会社の本店を移転することになりました。会社の定款には、「当会社の本店は、大阪市に置く」という定めがありますが、大阪府吹田市に移転したいのですが、この場合、どのような手続きが必要になりますか?」

本店移転したいと思っている株式会社の代表取締役


大阪京橋の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

株式会社が本店を移転するためには、取締役会で決議または取締役の過半数で本店移転を決定して、法務局へ登記申請することが必要です。

場合によっては、定款変更が必要になることがあります。

この記事では、株式会社の本店移転の登記手続きについて解説します。


株式会社の本店移転の登記手続きを司法書士が解説します

本店移転

株式会社が本店移転する場合の流れは次の通りです。

定款変更

 ↓

本店移転の時期や場所を決定

 ↓

登記申請


株式会社の本店移転の登記手続き1 定款変更

定款

株式会社が本店移転する場合、定款変更が必要になる場合があります。

株式会社の本店所在地は定款に記載されています。

たとえば、次の通り。

・本店所在地についての定款の記載例

 

(本店の所在地)

第〇条 当会社は、本店を大阪市に置く。

 

(本店の所在地)

第〇条 当会社は、本店を大阪市都島区東野田町一丁目〇番〇号に置く。


定款記載の本店所在地の外に移転する場合は、定款変更が必要になります。

定款に「当会社は、本店を大阪市に置く」と記載されている会社が、大阪市の外に移転する場合は、定款変更が必要です。

しかし、移転先が同じ大阪市内の場合は、定款変更の必要はありません。

定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要になります(会社法309条2項11号)。

特別決議についての解説はこちら。

・関連記事 株主総会の決議事項を解説します【普通決議 特別決議 特殊決議】

 

定款変更を決議した株主総会議事録の記載例は、こちらです。

会社の実例に合わせて作成してください。

 

           臨時株主総会議事録

 令和〇年〇月〇日午後○時○分より、大阪市○○区○○町○丁目○番○号の当会社本店会議室において、臨時株主総会を開いた。

 株主の総数                   ○名

 発行済株式の総数                ○株

 (自己株式の数                 ○株)

 議決権を行使することができる株主の数      ○名

 議決権を行使することができる株主の議決権の数  ○個

 出席株主数(委任状による者も含む。)       ○名

 出席株主の議決権数               ○個

 出席取締役及び監査役の氏名

  代表取締役  A(議長兼議事録作成者)

  取 締 役  B

  取 締 役  C

  監 査 役  D

 上記により総会は適法に成立したので、代表取締役Aは定款の規定に基づき議長席につき、上記の通り定足数に足る株主の出席があったので本総会は適法に成立した旨を告げ、議事の進行に入った。

 議案 定款変更の件

 議長は、業務の都合により、本店を大阪府吹田市○○一丁目○番○号に移転する必要があることを説明し、上記本店移転のため定款第○条を次の通り変更したい旨を述べ、その賛否を議場に諮ったところ、全員の一致をもってこれを承認可決した

                  記

(本店)

第○条 当社の本店は、吹田市に置く。

 以上にて議長は会議の終了を告げ、午後○時○分閉会した。

 上記の議事の経過及び結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役が次に記名押印する。

  令和〇年〇月〇日

                 ○○株式会社 臨時株主総会

                議長兼出席代表取締役   A ㊞

                     出席取締役   B ㊞

                       同     C ㊞

 

 

また登記申請に株主総会議事録を添付する場合、株主リストも添付する必要があります。

株主リストのひな形はこちらです。

株主リスト


記載例を参考に記載してください。

株主リスト 記載例


株式会社の本店移転の登記手続き2 本店移転の時期や場所を決定

会議

本店移転の具体的な時期や場所を決定します。

決定するには、取締役会を置く会社では、取締役会の決議が必要になります。

取締役会を置かない会社では、取締役の過半数の決定が必要になります。

ただし、取締役会を置かない会社では、本店移転についての定款変更を株主総会で決議する際に、本店移転の具体的な時期や場所についても株主総会で決議することもできます。

取締役会を置かない会社においては、株主総会は、株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができるとされているからです(会社法295条1項)。

なお、定款変更が必要な場合でも、定款変更前に取締役会で本店移転を決議することはできます。

本店移転をする場合、定款を変更する前に、取締役会は新社屋の確保や移転時期についてある程度の目途をつけているのが通常だからです。

この場合の取締役会の決議は、定款変更を条件とする決議になります。

本店移転の具体的な時期や場所を決定する取締役会の議事録の記載例はこちらです。


取締役会議事録

 令和〇年〇月〇日午後○時より、本社会議室において、取締役4名出席(総取締役数4名)及び監査役1名出席(総監査役1名)のもとに、取締役会を開催した。

 議案 本店移転に関する件

 議長は、業務の都合により、本店を移転したい旨およびその理由等を詳細に述べ、下記の要領により本店を移転することを提案したところ、出席取締役全員の一致をもってこれを承認し、可決決定した

1 本店移転先 大阪府〇〇市△△区○丁目○番○号

1 本店移転日 令和〇年〇月〇日

 議長は以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午後○時○分閉会した。

 以上の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長及び出席取締役並びに監査役の全員がこれに記名押印する。

   令和〇年〇月〇日

    ○○株式会社取締役会

議長・代表取締役   A ㊞

出席取締役   B ㊞

同     C ㊞

同     D ㊞

出席監査役   E ㊞


株式会社の本店移転の登記手続き3 登記申請

法務局

法務局に対して本店移転登記をします。

本店移転先が法務局の管轄内か管轄外かで、手続きが異なります。

本店移転先が管轄区域内かどうかは法務局のホームページでご確認ください。

外部リンク 管轄のご案内


同じ管轄区域内で移転する場合の本店移転登記手続き

同じ管轄区域内で移転する場合の本店移転登記は、本店移転の日から2週間以内に、申請する必要があります(会社法915条)。

本店移転の日は、実際に本店を移転した日です。

ただし、実際に本店を移転した後に、株主総会で定款変更の決議があった場合は、株主総会の日が本店移転の日になります。

また定款変更を伴わない本店移転で、実際に移転した後に取締役会の承認決議があったときは、その決議の日が本店移転の日になります(昭和35年12月06日民事甲3060)。

同じ管轄区域内で移転する場合の本店移転登記の申請書の記載例はこちらです。


株式会社本店移転登記申請書

1.会社法人等番号 ○○○○―○○―○○○○○○

  フ リ ガ ナ ○○

1.商     号 ○○株式会社

1.本     店 大阪府〇〇市○○町○丁目○番○号

1.登 記 の 事 由  本店移転

1.登記すべき事項 別添CD-Rのとおり

1.登 録 免 許 税  金3万円

1.添 付 書 類 取締役会議事録         1 通


 上記のとおり登記の申請をする。


   令和○年○月○日

大阪府〇〇市△△区○丁目○番○号

申 請 人  ○○株式会社


大阪府〇〇市○○町○丁目○番○号

代表取締役    A

連絡先電話番号 ○○―○○○○―○○○○


大阪法務局(○○支局又は○○出張所) 御中


登記すべき事項をCD-Rに記録して提出する場合の入力例はこちらです。

「本店」大阪市○○区○○町〇丁目〇番〇号

「原因年月日」令和〇年〇月〇日移転


新所在地の住所を記載します。

CD-Rを提出する場合の注意点はこちら。

・外部リンク 法務省:商業・法人登記申請における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について


管轄区域外へ移転する場合の本店移転登記手続き

管轄区域外へ移転する場合の本店移転登記は、本店移転の日から2週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては、設立の登記と同様の事項を及び現に効力のある事項について登記申請する必要があります(会社法916条、911条3項)。

新所在地への登記申請は、旧所在地の法務局を経由して、旧所在地への登記申請と同時にする必要があります(商業登記法51条1項、2項)。

管轄区域外へ移転する場合の本店移転登記手続きの申請書(旧所在地)の記載例はこちらです。


株式会社本店移転登記申請書

1.会社法人等番号 ○○○○―○○―○○○○○○

  フ リ ガ ナ ○○

1.商     号 ○○株式会社

1.本     店 大阪府〇〇市○○町○丁目○番○号

1.登 記 の 事 由  本店移転

1.登記すべき事項 別添CD-Rのとおり

1.登 録 免 許 税  金3万円

1.添 付 書 類  株主総会議事録         1 通

           株主の氏名又は名称、住所及び議決

           権数等を証する書面(株主リスト)1 通

                  取締役会議事録                 1 通

 

上記のとおり登記の申請をする。

   令和○年○月○日

大阪府〇〇市△△区○丁目○番○号

申 請 人  ○○株式会社


大阪府〇〇市○○町○丁目○番○号

代表取締役    A

連絡先電話番号 ○○―○○○○―○○○○


大阪法務局(○○支局又は○○出張所) 御中


管轄区域外へ移転する場合の本店移転登記手続きの申請書(新所在地)の記載例はこちらです。


株式会社本店移転登記申請書

1.会社法人等番号 ○○○○―○○―○○○○○○

  フ リ ガ ナ ○○

1.商     号 ○○株式会社

1.本     店 大阪府〇〇市△△町○丁目○番○号

1.登 記 の 事 由 本店移転

1.登記すべき事項 別添CD-Rのとおり

1.登 録 免 許 税 金3万円

1.添 付 書 類    なし


 

上記のとおり登記の申請をする。

                    令和○年○月○日

                  大阪府〇〇市区○丁目○番○号

                   申 請 人  ○○株式会社

 

                大阪府〇〇市○○町○丁目○番○号

                      代表取締役    A

                      連絡先電話番号○○―○○○○―○○○○


大阪法務局(○○支局又は○○出張所) 御中

 

支店所在地の法務局において本店移転登記

支店

本店は、支店所在地においての登記事項であるので、支店が本店所在地を管轄する法務局の管轄区域外にある場合は、本店移転の日から3週間以内に、支店の所在地の法務局において、本店移転を申請します。


まとめ

以上、本店移転の株式会社が本店移転する場合の登記手続きについて解説しました。

ご自分で登記手続きする時間がないという場合は司法書士に依頼することをご検討ください。

大阪であれば当事務所でも承っております。

ご相談の方は、電話(06-6356-7288)か、こちらのメールフォームからお問い合わせください。

お問い合わせメールフォーム


というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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