会社の目的を決めるときのルールや注意点を解説します
「株式会社を設立したいのですが、会社の目的を決める場合の注意点などを教えてもらえますか?」
大阪の司法書士の田渕です。お答えします。
株式会社や合同会社を設立するにあたって、会社の「目的」を定めて定款に記載する必要があります。
会社の目的とは、会社が営む事業の内容のことです。
会社の目的は登記されるので、取引相手は登記簿謄本に記載されている会社の目的欄を見れば、その会社がどんな事業を行っているかがわかるという仕組みです。
この記事では、会社の目的を決める際のルールや注意点などについて司法書士が解説します。
会社の設立手続き全般については別記事にくわしくまとめてありますので、そちらをご覧ください。
目次
会社の目的を決めるときのルールや注意点を解説します
会社の目的は、基本的には会社が自由に決めることができます。
しかし一定のルールがあります。
会社の目的は、会社がどんな事業を行っているかを明らかにするためのもので、取引相手にとって非常に重要な情報だからです。
会社の目的は以下の要件を備えることが必要です。
・会社の目的が適法であること
・会社の目的が営利性を有すること
・会社の目的が明確であること
会社の目的を決めるときのルール1 会社の目的が適法であること
当然ですが、会社は法令に反する事業を行うことはできません。
なので公序良俗に反するような事業を会社の目的にすることはできません。
ほかにも一定の資格が必要な業務については、会社は行うことができないとされています。
代表的なものは次の通りです。
・司法書士事務所
・土地家屋調査
・税理士業務
・特許出願手続相談及びパテントの出願手続の代行
・諸官庁に提出する書類作成代行業務
・学校教育法に定める学校の経営
なお一定の事業を行う場合に許認可などが必要とされている場合がありますが、許認可を得ていない段階でもその事業を目的とする会社の設立はできます。
これは実際にその事業を行うことについての許認可であり、会社設立そのものについての許認可ではないからです。
会社の目的を決めるときのルール2 会社の目的が営利性を有すること
株式会社や合同会社は営利企業であるため、会社の目的は営利性がないといけません。
なので、たとえば「社会福祉への出資」「永勤退職従業員の扶助」「政治献金」などは、利益を得る可能性が全くないため、不適格だとされています(昭和40年7月22日民四242号回答)。
ただし、利益を得る可能性があれば、公益性のある事業であっても、目的にすることができます。
たとえば、産婦人科病院経営を目的とした株式会社設立が認められた例があります(昭和30年5月10日民四100号回答)。
会社の目的を決めるときのルール3 会社の目的が明確であること
会社の目的は、明確でないといけません。
その会社がどのような事業を行っているか取引相手にわからないといけないからです。
明確であるとは、言葉の意味が明らかで、誰でもその意味を理解できるものであることとされています。
外来語や専門用語については、一般の辞典などでその言葉が説明されているような場合は、明確性がありと認められています。
その言葉が専門用語辞典でのみ記載されているような場合には、そのまま使用できず、その言葉の後に括弧書きでその言葉の意味を簡単に説明することが必要です。
会社の目的は具体的である必要はある?
以前は会社の目的は、具体的でなければならないとされていましたが、会社法の施行により会社の目的の具体性は要件でなくなりました。
なので「事業」「営業」「商業」などのような抽象的なものでも構いません。
とはいえ、まったく具体的でない抽象的な目的にすると、取引相手からするとどんな会社なのかわからず、不利益になる可能性があるので、できれば具体的なものにすることをおすすめします。
会社の目的の注意点
会社の目的を定款に記載するにあたって以下の注意点があります。
・将来的に行う予定がある事業を記載する
・あまりに多くの事業を記載しない
・目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を加える
会社の目的の注意点1 将来的に行う予定がある事業を記載する
会社の目的は、後から追加したり、削除したりすることができます。
しかし目的を変更すると登記する必要があり、登録免許税が3万円かかってしまいます。
なので、今すぐに行わなくても、将来的に行う予定がある事業を記載しておきましょう。
会社の目的の注意点2 あまりに多くの事業を記載しない
そうはいっても、あまりに多くの事業を書きすぎると何の事業を行っている会社なのかわからなくなり、取引先からの信頼を得られない可能性があります。
なので、行う予定がないけどとりあえず記載しておこう、というのはやめておきましょう。
会社の目的の注意点3 目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を加える
目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という項目を加えておきましょう。
これがあれば、会社の目的に掲げた事業に関連するすべての事業を行うことができます。
ほとんどの会社が、この項目を掲げています。
たとえば次のように記載します。
1 食料品及び飲料品の販売、販売
2 飲食店業
3 前各号に附帯関連する一切の事業
まとめ
以上、会社の目的について解説しました。
会社の目的として不適格なものの例を紹介しましたが、基本的には会社が自由に決めることができます。
このような目的にしたいが法的に大丈夫なのか気になる、という場合は司法書士に相談することができます。
大阪周辺の方でしたら、当事務所でも承っていますので、お気軽にご相談ください。
ご相談の方は、電話(06-6356-7288)か、こちらのメールフォームからお問い合わせください。
というわけで今回は以上です。
お読みいただきありがとうございました。