相続分の譲渡とは? 譲渡証明書や登記についてわかりやすく解説
「先日、父が亡くなりました。相続人は長男である私と、長女、次男です。長女は、面倒なことに関わりたくないといって、相続分を譲渡したいと言っています。相続分の譲渡とは何のことでしょうか?」
大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
相続分の譲渡とは、相続人が自分の相続分を他の相続人または、第三者に売買または贈与することです。
この記事では、相続分の譲渡についてわかりやすく解説します。
目次
相続分の譲渡とは? 譲渡証明書や登記についてわかりやすく解説
相続人は、相続が発生したときから、遺産分割前までの間に相続分を譲渡することができます。
相続分とは、相続人が、相続することができる割合のことです。
たとえば、相続人が長男、長女、次男の場合、相続分はそれぞれ3分の1になり、それぞれ相続財産を3分の1ずつ相続することができます。
相続分の譲渡は、この相続分をほかの相続人または第三者に贈与または売買することです。
相続分の譲渡の方法
相続分の譲渡は、譲渡人(譲渡する人)と譲受人(譲渡される人)の合意ですることができます。
遺産分割協議と異なり、相続人全員でする必要はありません。
相続分譲渡の契約方式は定められていませんが、下記のような譲渡証明書などの書面は作っておいた方がいいでしょう。
- 相続分譲渡証明書
- 最後の本籍 大阪市○○区○○町○丁目○番地
- 最後の住所 大阪市○○区○○町○丁目○番地
- 被相続人 (令和○年○月○日死亡) A
- 本 籍 大阪市○○区○○町○丁目○番地
- 相続人(相続分4分の1) D(昭和○○年○月○日生)
- DはEに対し、上記被相続人の相続開始による相続分の全部を金〇万円で譲渡し、Eはこれを譲り受けた。
- 令和○年○月○日
- 大阪市○○区○○町○丁目○番地
- 相続分譲渡人(亡A相続人) D ㊞(実印)
- 大阪市○○区○○町○丁目○番地
- 相続分譲受人 E ㊞
相続分の譲渡を受けた人は遺産分割協議に参加できるか?
相続分の譲渡を受けた人は相続分をそのまま取得するので、親族出なかったとしても遺産分割協議に参加することができます。
相続分の譲渡を受けた人が参加しないでされた遺産分割協議は無効になります。
一方、相続分を譲渡した相続人は、遺産分割協議に参加することはできません。
相続分の取り戻し
遺産分割前に相続人が相続分を第三者に譲渡したときは、他の相続人は、譲渡価格と費用を支払って、相続分を譲り受けることができます(民法905条)。
相続分の取り戻しは、1ヶ月以内にしないといけません。
相続分の譲渡の登記
法定相続分で相続登記した後に相続分が譲渡された場合、相続分の譲渡による所有権移転登記をすることができます。
また相続登記がされる前に相続分の譲渡がされた場合、譲受人が相続人であれば、直接、譲渡後の相続分による相続登記を申請することができます。
一方、相続登記がされる前に、相続人ではない第三者に相続分の譲渡がされた場合、直接、相続登記をすることはできず、法定相続分の相続登記をした後、相続分譲渡の登記をする必要があります。
相続登記がされた後に相続分が譲渡された場合の不動産登記
相続した後、遺産分割せずに法定相続分で相続登記をすることはできます。
そして、法定相続分で相続登記をした後に相続分の譲渡があった場合、「相続分の贈与」または「相続分の売買」を原因とする所有権移転登記を申請することができます。
申請書の記載例はこちら。
- 登 記 申 請 書
- 登記の目的 D持分全部移転
- 原 因 令和○年○月○日相続分の売買
- 権 利 者 ○○市○○町○丁目○番地
- 持分 4分の1 E
- 義 務 者 ○○市△△町×丁目×番地
- D
- 添付書類
- 登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書
- 住所証明書 代理権限証書
- 令和○年○月○日申請 ○○法務局○○出張所
- 課税価格 金○円
- 登録免許税 金〇円
- 不動産の表示
- (省略)
- 不動産番号 ○○○○○○○○○○○○○
相続登記がされる前に相続分の譲渡がされた場合
相続登記がされる前に相続分の譲渡がされた場合、譲受人が相続人であれば、直接、譲渡後の相続分の相続登記を申請することができます。
相続登記の申請方法については別記事にまとめてありますので、ご覧ください。
・関連記事 相続登記の手続を司法書士が解説【不動産の名義変更】
まとめ
以上、相続分の譲渡について解説しました。
相続分の譲渡について、わからないこと、不安なことがある場合は、司法書士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
大阪周辺の方なら当事務所でも承っています。
初回相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
当事務所の相続サポートサービスの詳細はこちら。
というわけで今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。