会社・法人の登記事項証明書の見方についてわかりやすく解説

登記の相談者

「銀行から会社の登記事項証明書を提出するように言われました。登記事項証明書とはどんなものですか?」

 
 
 

大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

登記事項証明書は、不動産や会社の登記の内容を法務局が証明した書類です。

登記事項証明書には、主に不動産についてのものと、会社・法人についてのものがあります。

会社・法人の登記事項証明書は、会社や法人の商号(名称)、本店(主たる事務所)や役員に関する事項など、会社・法人についての登記記録が記載されている文書です。

この記事では、会社・法人の登記事項証明書についてわかりやすく解説します。


会社・法人の登記事項証明書の見方についてわかりやすく解説

会社・法人の登記事項証明書の見方についてわかりやすく解説

会社や法人の登記事項証明書には、大きく分けて次の3つの種類があります。

・全部事項証明書
・一部事項事項証明書
・代表者事項証明書


全部事項証明書は、株式・資本区、目的区、役員区など全ての区について記載された登記事項証明書です。会社・法人の登記事項は複数の区がありますが、全部事項証明書は全ての区について記載されます。

一部事項証明書は、株式・資本区、目的区、役員区、支配人・代理人区などのうち一部の区のみ記載された証明書です。

代表者事項証明書は、その会社の代表者について証明する書類です。代表取締役などの住所、氏名が記載されています。誰が会社の代表者か分かればいい場合に使われます。

全部事項証明書と一部事項証明書については、さらに3つの種類があります。
・履歴事項証明書
・現在事項証明書
・閉鎖事項証明書


会社・法人の登記事項証明書1 履歴事項全部証明書

会社・法人の登記事項証明書1 履歴事項全部証明書

履歴事項全部証明書は、会社の登記事項のすべてが記載された証明書です。

株式会社は、次のような事項が登記されています。

  • 会社法人等番号
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 公告をする方法
  • 会社成立の年月日
  • 目的
  • 発行可能株式総数
  • 発行済株式の総数や種類など
  • 株券を発行するときはその旨
  • 資本金の額
  • 株式の譲渡制限に関する規定
  • 取締役、監査役の氏名
  • 代表取締役の住所、氏名
  • 取締役会設置会社に関する事項
  • 監査役設置会社に関する事項
  • 登記記録に関する事項など


履歴事項全部証明書は、現在の情報だけでなく、取得した時の3年前の年の1月1日以降の変更された情報も記載されています。

たとえば、2年前に取締役が変更されている場合、現在の取締役のほか、前の取締役も記載されています。

3年前の1月1日以前の登記記録も調べたい場合は、閉鎖事項証明書を取得する必要があります。


会社・法人の登記事項証明書2 現在事項証明書

現在事項証明書は、現在の登記事項を記載したものです。

過去の登記事項は記載されません。

 

会社・法人の登記事項証明書3 閉鎖事項証明書

閉鎖事項証明書は、閉鎖された登記記録を記載した証明書です。

解散したり、管轄外に本店移転した会社については登記記録が閉鎖されます。

そういった会社についての情報を調べるための証明書です。

また、3年前の1月1日以前の登記記録を調べるには、この閉鎖事項証明を取得する必要があります。

 

株式会社の登記事項証明書に記載されている情報

株式会社の登記事項証明書に記載されている情報

株式会社の登記事項は次のような「区」に分かれています。
・商号区
・目的区
・株式・資本区
・役員区
・新株予約権区
・支店区
・その他の区


株式会社の登記事項1 商号区

商号区には、会社の商号(会社名)や本店所在地などが記載されます。他にも、会社の公告方法や会社の成立年月日などが記載されます。

 

株式会社の登記事項2 目的区

目的区は、会社の目的や事業内容が登記されている区です。

目的区を確認すれば、どんな事業を行なっている会社かわかります。

通常、目的は箇条書きで複数記録されており、上に記載されているものがその会社の主要事業であることが多いです。

現在は行っていないが、将来行う予定の事業を登記している場合もあるので注意が必要です。

 

株式会社の登記事項3 株式・資本区

株式会社の登記事項3 株式・資本区

会社の株式数や資本金の額などが登記されています。株主の氏名は登記されません。

株式・資本区では、主に次のようなことが登記されています。
・発行可能株式総数
・発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
・株券を発行する旨の定め
・資本金の額
・株式の譲渡制限に関する規定


株式・資本区1 発行可能株式総数

会社が発行できる株式の上限数です。

会社が無制限に株式を発行できてしまうと既存株主の不利益になる可能性があるため、会社が発行できる株式の数には制限があります。

 

株式・資本区2 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数

会社が現在までに発行している株式の数、種類、種類ごとの数です。


株式・資本区3 株券を発行する旨の定め

現在は株式会社の株券は、原則として発行されません。

ただし、定款で株券を発行する旨を定めることもでき、株券を発行している場合はその旨が登記されます。


株式・資本区4 資本金の額

資本金とは原則として、これまでに株主が出資した金額の合計です。

ただし、株式会社は、株主が払い込んだ金額のうち2分の1までは資本金として計上せず、資本準備金とすることができます。


株式・資本区5 株式の譲渡制限に関する規定

株式会社は、株式の譲渡について取締役会や、株主総会などの承認が必要である旨を定款で定めることができます。

その旨の定めがある場合は登記されます。


株式会社の登記事項4 役員区

株式会社の登記事項4 役員区

役員区には、取締役、代表取締役、監査役などの役員が登記されています。

取締役、監査役は氏名が、代表取締役は住所と氏名が登記されます。

また、役員となった原因(就任や重任)と就任年月日、退任原因と退任年月日も登記されます。

なお、ここには社長、専務、常務といった役職は登記されません。これらの役職はあくまで会社内部の人事であって、法律上の役職ではないからです。

 

株式会社の登記事項5 新株予約権区

新株予約権とは、会社に対して株式の交付を請求できる権利のことです。

新株予約権が発行されることはそんなに多くはありませんが、会社としては機動的に資金を調達でき、投資家としては発行額より高い株式を手にできる可能性がある利点がある制度です。

新株予約権は社債と一体になっている新株予約権付社債として発行することもできます。

新株予約権が発行されている場合、次の事項が登記されています。
・新株予約権の名称
・新株予約権の数
・新株予約権の目的となる株式の種類及び数又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・新株予約権を行使することができる期間
・新株予約権の行使の条件
・会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件
・新株予約権の発行日


株式会社の登記事項6 支店区

支店を設置している会社は支店の所在地が登記されます。


株式会社の登記事項7 その他の区

その他にも、「解散の事由の定め」や「取締役会設置会社である旨」などが記載される会社状態区、登記記録を起こした事由、登記記録を閉鎖した事由などが登記される登記記録区などがあります。


まとめ

以上、会社・法人の登記事項証明書について解説しました。

まとめると次の通り。

・会社や法人の登記事項証明書は、会社や法人の商号や本店、役員に関する情報を法務局が証明した書類

・登記事項証明書には、全ての事項が記載された全部事項証明書や一部の情報のみの一部事項証明書、代表者に関する証明書がある

・全部事項証明書と一部事項証明書については、さらに履歴事項証明書、現在事項証明書、閉鎖事項証明書がある

 

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