相続させたくない兄弟がいる場合【遺言を書きましょう】
「私には、配偶者や子どもがいません。両親はすでに他界しています。相続人は兄が一人いますが、兄は両親の生前に、ギャンブルで借金しては両親に借金を肩代わりさせていました。私たち家族に迷惑をかけ続けた兄には、私の財産を相続させたくありません。こんな場合どうすればいいでしょうか?」
大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
子どもや孫、両親、祖父母がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟に相続させたくない場合は、その兄弟以外の第三者に財産を遺贈する遺言を書いておきましょう。
遺言で財産を贈与することを遺贈といいます。
この記事では、相続させたくない兄弟がいる場合どうすればいいのかについて、くわしく解説します。
目次
相続させたくない兄弟がいる場合【遺言を書きましょう】
自分が亡くなったときに、誰が相続するかは法律で決められています。
相続人は次の通り。
- ・配偶者
- ・子
- ・直系尊属
- ・兄弟姉妹
相続人のうち、配偶者は常に相続人になりますが、それ以外の人は、相続できる順位が決められています。
次の通りです。
- 第一順位 子(または孫やひ孫)
- 第二順位 直系尊属
- 第三順位 兄弟姉妹(または甥や姪)
子ども(または孫など)がいる場合は、直系尊属(父母や祖父母)や兄弟姉妹は相続人になりません。
子ども(または孫など)がいなくても、直系尊属がいる場合は、兄弟姉妹は相続人になりません。
・関連記事 相続人の範囲 どこまでが相続人か司法書士がわかりやすく解説
しかし、子どもや孫、両親、祖父母がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
もし、兄弟に相続させたくない人がいる場合、その兄弟以外の第三者に財産を贈与する遺言を書いておきましょう。
そうすれば、兄弟はあなたの財産を相続することはありません。
兄弟以外の第三者とは、たとえば、お世話になった人や、昔からの友人、慈善事業を行っている団体や法人などです。
兄弟姉妹には遺留分がない
「遺言で第三者に財産を贈与したとしても、相続人には遺留分というものがあるんですよね?」
いいえ、兄弟姉妹には、遺留分はありません。
遺留分とは、相続人に残しておくべき最低限の取り分のことです。
たとえ遺言で全財産を他の相続人に相続させる、または第三者に遺贈したとしても、遺留分を有する相続人は、財産を承継した人に対して、遺留分に相当する金銭を請求することができます。
しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、遺言で全財産を他の人に遺贈すれば、兄弟姉妹は財産を承継することはありません。
遺留分については、くわしくはこちら。
相続させたくない兄弟がいる場合の遺言の書き方
相続させたくない兄弟がいる場合は、たとえば次のように遺言に記載します。
しかし、これはあくまで記載例です。
遺言の書き方はそれぞれの事情によってケースバイケースですので、くわしくは司法書士などの専門家に相談してください。
兄弟以外の第三者に全財産を遺贈する場合
兄弟以外の第三者に全財産を遺贈する場合、たとえば次のように記載します。
贈与する相手を確実に特定するためにも、遺言者との関係を書いておいた方がいいでしょう。
- 第〇条 遺言者○○○○は、遺言者の有するすべての財産を下記の者に遺贈する。
- 住 所 大阪市○○区○○町○○番○○号
- 氏 名 ○○ ○○
- 生年月日 昭和○○年○月○日
- 遺言者との関係 ○○
特定の兄弟に相続させず、ほかの兄弟に相続させる場合
兄弟姉妹の中の一人にだけ相続させず、他の兄弟姉妹に相続させる場合、たとえば、兄、弟、妹がいて、弟と妹のみに相続させる場合は次のように記載します。
- 第〇条 遺言者○○○○は、遺言者の有する下記の不動産を遺言者の弟○○○○(昭和○○年○月○日生) に、相続させる。
- (不動産表示)
- 土 地
- 所 在 大阪市○○区○○町○丁目
- 地 番 ○○番○○
- 地 目 宅地
- 地 積 ○○.○○㎡
- 建物
- 所 在 大阪市○○区○○町○丁目○○番地○○
- 家屋番号 ○○番○○
- 種 類 居宅
- 構 造 鉄骨造スレート葺3階建
- 床面積 1階 ○○.○○㎡
- 2階 ○○.○○㎡
- 3階 ○○.○○㎡
- 第〇条 遺言者は、遺言者の有する現金並びに次の預貯金のすべてを遺言者の妹○○○○(昭和○○年○月○日生)に相続させる。
- (預貯金の表示)
- 次の金融機関又は自宅などに存する遺言者名義の預貯金等のすべて
- ○○銀行 ○○支店
- 預金 普通預金
- 口座番号 ○○○○○○○
- ○○銀行 ○○支店
- 貯金 普通預金
- 口座番号 ○○○○○○○
- 上記以外のその他の金融機関
そのほかの遺言の記載事項、遺言の書き方については、こちらの記事にくわしくまとめていますので、ご覧ください。
- ・関連記事 遺言の書き方【遺言の文例と気を付けるポイント】
遺言の相談については司法書士に相談できます
遺言は自分一人で作成することができます。
しかし遺言書は、書き方が法律にきびしく規定されており、ひとつ間違えば無効になってしまうおそれがあります。
また無効にならなくても、まずい書き方をしてしまったために、後々相続人同士でトラブルになってしまうこともあります。
そのようなことにならないように、司法書士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
大阪であれば、当事務所でも承っています。
当事務所の遺言書作成サポートサービスの詳細はこちら。
まとめ
以上、相続させたくない兄弟がいる場合そうすればいいのかについて、解説しました。
一度書いた後に気が変わるかもしれないと思って、なかなか書く気になれない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし遺言は書いた後、いくらでも書き直したり、破棄することができます。
なので、気軽に書いてみてもいいかと思います。
またいきなり遺言を書くのはハードルが高いと思う場合は、エンディングノートから書いてみるのもいいかもしれません。
というわけで今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。