時効の完成猶予とは?意味や適用条件をわかりやすく解説

借金の相談者

「かなり昔に借金していた消費者金融から、請求が来ました。もう時効になっていると思うのですが、時効には完成猶予というものがあり、その場合時効が成立しないという話をききました。時効の完成猶予について教えてください」





大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

時効の完成猶予とは、時効が成立する前に、一定期間その進行をストップさせる制度です。

この記事では、主に債務の場合の時効の完成猶予についてわかりやすく解説します。


時効の完成猶予とは?意味や適用条件をわかりやすく解説

時効の完成猶予とは、時効の成立が一定期間ストップする制度です。

時効の進行がリセットされゼロからスタートする時効の更新とは異なり、あくまで時効の成立を一時的に猶予するものです。

たとえば、10年で時効が成立する権利があった場合、9年たった時点で時効の完成が猶予されると、その猶予期間が終わった時点からあと1年で時効が完成します。


時効の完成猶予事由

次のような場合に時効の完成は猶予されます。

・裁判上の請求

・強制執行

・仮差押え・仮処分

・催告

・協議を行う旨の合意

・未成年者または成年被後見人

・夫婦間の権利

・相続財産

・天災


時効の完成猶予1 裁判上の請求

裁判で請求されると、その裁判手続きの間は時効の完成が猶予されます。

また、裁判が取り下げや却下された場合でも6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。

そして、判決で権利が確定すると裁判手続きが終了した時点で時効が更新され、新たな時効期間がスタートします。


時効の完成猶予2 強制執行、担保権の実行

強制執行や担保権の実行があった場合、その手続きの間は時効の完成が猶予されます。また取り下げや却下された場合でも6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。


時効の完成猶予3 仮差押え・仮処分

仮差押えとは、債権者が裁判手続きをする前などに、債務者の銀行口座や不動産などの財産を仮に差し押さえる手続です。

仮処分とは、債権者が金銭債権以外の権利を実現できなくなるおそれがある場合に、現状を維持するために行う手続きです

仮差押や仮処分があった場合、これらの手続が終了してから、6ヶ月まで時効の完成が猶予されます。


時効の完成猶予4 催告

時効の完成猶予4 催告

催告とは、裁判所を通さずに債権者から債務者に対し、文書などで支払いを求めることです

催告があったときから6か月経過するまでは時効の完成は猶予されます。催告で時効の完成が猶予されている間に再度催告しても、さらに6ヶ月時効の完成が猶予されることはありません。

債権者としては、時効が完成しないために、催告で時効の完成猶予がされている間に訴訟などの時効更新措置を取ることになります。


時効の完成猶予5 協議を行う旨の合意

債権者と債務者が、「協議を行いましょう」と書面で合意した場合には、次のいずれか早いタイミングまで時効は完成しません

・その合意があった時から1年を経過した時

・その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時

・当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6ヶ月を経過した時


時効の完成猶予6 未成年者または成年被後見人

時効期間が満了する前6か月以内の間に未成年者または成年被後見人に親や後見人などの法定代理人がいない場合、未成年者や成年被後見人が行為能力者になったとき、または法定代理人が就いたときから6ヶ月を経過するまでは時効は完成しません。


時効の完成猶予7 夫婦間の権利

夫婦の一方が配偶者に対し有する権利については、婚姻解消から6か月経過するまで時効は完成しません

夫婦間で裁判などの時効を更新させる手続きをとるのは事実上難しいからです。


時効の完成猶予8 相続財産

相続財産については、相続人が確定した時、相続財産管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成しないとされています。


時効の完成猶予9 天災

消滅時効期間が満了するときに、天災などで時効の更新ができない場合は、障害が消滅した日から3か月経過するまで時効は完成しないとされています。


猶予期間が終わった時点から時効期間が再開

時効の完成猶予は、時効の更新とは異なり、あくまで時効の成立を一時的に猶予するものです。

猶予期間が過ぎると、時効の進行が再開します。

10年で時効が成立する権利があった場合、9年たった時点で時効の完成が猶予がされると、その猶予期間が終わった時点からあと1年で時効が完成します。

なので、時効の完成猶予にあたることがあったとしても時効を債務の時効を主張できないと思ってあきらめないでください。

 

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まとめ

以上、時効の完成猶予について解説しました。まとめると次の通り。

時効の完成猶予は、時効の成立を一時的にストップする制度

・裁判上の請求、催告などがあった場合に時効の完成が猶予される

・猶予期間後は再び時効が進行するため、状況に応じた対応が必要


今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。