不動産の売買の登記手続きを司法書士がわかりやすく解説

「私名義の自宅を長男の名義にしたいです。贈与すると贈与税がかかるので、売買するつもりです。売買の不動産登記はどのようにすればいいですか?」
大阪の司法書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。
不動産会社を通して不動産を売買した場合は、不動産会社が紹介した司法書士が登記手続きをしてくれますが、親族間売買など不動産会社を通さない売買の場合は、自分で登記手続きをするか、自分で司法書士に登記手続きをする必要があります。
不動産の売買の登記は必要書類をそろえて法務局に申請することでできます。
この記事では、不動産の売買の登記手続きについて司法書士がわかりやすく解説します。
目次
不動産の売買の登記手続きを司法書士がわかりやすく解説

不動産の売買の登記手続きの流れは次の通りです。
売買契約を締結する
↓
必要書類を集める
↓
申請書を作成する
↓
法務局に申請する
↓
権利証を受け取る
それではくわしく解説します。
不動産の売買の登記の流れ1 売買契約を締結する

まず売買契約を締結し、売買契約書を作成します。
売買契約書のひな形はこちらです。
・売買契約書
それぞれの実情に合わせて作成してください。
不動産の売買の登記の流れ2 必要書類を集める

登記手続きに必要な書類を集めます。
不動産売買の登記手続きの必要書類は次の通りです。
・登記原因証明情報
・権利証(登記識別情報または登記済証)
・売主の印鑑証明書
・買主の住民票の写し
・不動産の固定資産評価証明書(または評価額の記載がある納税通知書)
不動産売買の登記手続きの必要書類1 登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、登記の原因(この場合は売買)があったことを証明する書類です。
売買契約書を作成した場合、売買契約書を登記原因証明情報として提出することができます。
売買契約書を提出する場合、コピーして原本還付するようにしましょう。
売買契約書とは別に、登記原因証明情報を作成して提出することもできます。
登記原因証明情報のひな形はこちらです。
・
不動産売買の登記手続きの必要書類2権利証(登記識別情報または登記済証)
権利証には登記識別情報と登記済証という2つのタイプがあります。
登記済証は、平成17年以前の古い権利証です。
平成17年から平成20年まで順次まで、登記識別情報という新しいタイプの権利証に切り替わりました。
下の画像が登記識別情報のサンプルです。
不動産を取得したときの登記手続きを司法書士が代理した場合は、表紙が付いているはずですが、中に登記識別情報が挟まっています。
もし権利証を紛失している場合は、権利証に代わる手続きが必要になります。
詳しくはこちら
・関連記事
不動産売買の登記手続きの必要書類3 売主の印鑑証明書
売主の印鑑証明書が必要です。
印鑑証明書は、作成後3カ月以内である必要があります。
不動産売買の登記手続きの必要書類4 買主の住民票の写し
買主の住所を証明するために、住民票の写しが必要になります。
印鑑証明書にも住所が記載されていますので、印鑑証明書でも構いません(昭和32.5.9民事三518号)。
これに対して、固定資産税の評価証明書にも住所が記載されているものの、これで代用することはできません(登記研究373号P87)。
不動産売買の登記手続きの必要書類5 不動産の固定資産評価証明書(または評価額の記載がある納税通知書)
不動産の価格を証明するために、評価証明書か評価額の記載がある納税通知書が必要になります。
評価証明書は、不動産の所在地である市区町村の役所で取得できます。
固定資産評価証明書については、最新の年度のものが必要になります。
固定資産税評価証明書は、毎年4月1日に最新のものに切り替わりますので、4月1日以降に登記を申請する場合には、4月1日以降に取得した最新年度の固定資産評価証明書が必要となります。
たとえば、令和7年4月1日に登記を申請する場合は、令和7年度の固定資産評価証明書が必要になります。
令和7年3月31日に登記を申請する場合は、令和6年度の固定資産評価証明書が必要になります。
納税通知書は、毎年不動産の名義人に送られてきます。
最新の納税通知書が必要になります。
原本還付
必要書類はそのまま提出した場合、返してもらえません。
書類を返してほしい場合は、原本還付の処理をする必要があります。
書類をコピーし、コピーした紙の余白部分に「この写しは原本と相違ありません」と書き、署名捺印します。
後述する申請書とコピーした書類(原本をそのまま提出する場合は原本)は、ホッチキス止めしてひとまとめにしておきます。
原本の方は、原本だけでホッチキス止めするか、クリップで止めるなどして、申請書と必要書類のコピーとは別にひとまとめにしておくと、わかりやすくていいです。
不動産の売買の登記の流れ3 申請書を作成する

登記申請書を作成します。
書面で申請する場合の申請書のひな形はこちらです。
オンラインで申請する場合、後述の「申請用総合ソフト」を使って申請書を作成します。
なお、登記を申請する際には、登録免許税という税金がかかります。
売買の場合の登録免許税は、下記のとおり。
・土地 不動産の固定資産評価額 × 15/1000(令和8年3月31日まで)
・建物(家屋証明書がない場合) 不動産の固定資産評価額 20/1000
・建物(家屋証明書がある場合) 不動産の固定資産評価額 3/1000
登録免許税は、収入印紙で支払います。
紙に印紙を貼り付けて、申請書と一緒に提出します。
申請書とのつづり目には、契印(割印)が必要です。
不動産の売買の登記の流れ4 法務局に申請する

必要書類と申請書がそろったら、法務局という役所に申請します。
どこの法務局に申請してもいいわけではありません。
法務局には、不動産の所在地によって管轄が決まっています。
管轄は、法務局のホームページで確認できます。
・外部リンク 管轄のご案内
申請する方法は3つあります。
・窓口で申請する
・郵送で申請する
・オンラインで申請する
窓口で申請する
集めた書類一式を、法務局の窓口に持っていく方法です。
法務局の窓口は、平日の午前8時30分から午後5時15分までしか開いていないことが多いのが難点です。
地域によって差がありますが、申請してから5日~10日後に、権利証が出来上がることが多いです。
郵送で申請する
書類一式を、郵送する方法です。
平日に時間が取れない方でも、申請できます。
普通郵便ではなく、書留郵便もしくはレターパックで郵送します。
オンラインで申請する
オンラインで申請する方法です。
専用のソフト「申請用総合ソフト」 を使って申請します。
・外部リンク:申請用総合ソフトとは
オンラインで申請する場合でも、添付書類は紙なので、郵送するか、窓口に持っていく必要があります。
不動産の売買の登記の流れ5 権利証を受け取る

最後に権利証を受け取ったら、無事に終了です。
売却するときや、担保に入れるときに、権利証が必要になります。
権利証は、大事なものなので大切に保管なさってください。
失くしても売却できなくなることはありませんが、失くした場合は余分に費用がかかってしまいます。
また権利証が他人の手にわたってしまったら勝手に他人名義にされてしまうのではと思われるかもしれませんが、名義を書き換えるには、ほかにも所有者の実印と印鑑証明書などが必要です。
権利証だけで名義の書き換えはできません。
登記の期限
売買の不動産登記には期限はありません。
なので、必ずしも売買してからすぐに登記しないといけないわけではありません。
とは言え、できるだけ早く登記はした方がいいでしょう。
登記しないうちに、次のようなことが発生すると、問題があります。
・認知症などで判断能力が無くなると後見人をつけないといけない
・不動産を取得した人が亡くなると手続きが複雑になる
認知症などで判断能力が無くなると後見人をつけないといけない
買主や売主が認知症などで判断能力が無くなると、その人が登記申請することは難しくなります。
そのため認知症になった売主や買主に代わって登記申請するために成年後見人を選任しないといけなくなってしまいます。
成年後見については、くわしくはこちらの記事をご覧ください。
・関連記事 成年後見人とは?司法書士がわかりやすく解説【毎月の費用は?】
不動産を取得した人が亡くなると手続きが複雑になる
売買の登記をしないうちに買主や売主が亡くなった場合、登記の申請は亡くなった方に代わって相続人全員が申請人になります。なので、売主が亡くなった場合は相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
相続人全員が登記に協力してくれればいいのですが、相続人の中に登記に協力しない人がいる場合、その人に対して裁判を起こさないといけません。
売買が相続人の中の一人に対してされたものである場合は、相続人同士で争うことになってしまいます。
登記を放置していると以上のような問題が発生する可能性があるため、贈与した場合はなるべく早めに登記しましょう。
自分で不動産登記の手続きをするのが難しいときは司法書士に相談

自分で登記の手続きをするのが難しいときは司法書士に相談しましょう。
大阪の方なら当事務所でも承ります。
初回相談ですので、お気軽にお問い合わせください。
ご相談の方はこちら。
まとめ
以上、不動産が売買された場合の登記手続きや注意点について解説しました。
まとめると次の通り。
今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。