取締役の欠格事由とは?欠格事由があったらどうすればいい?

会社の相談者

「弊社の取締役のAが1年前に金融商品取引法違反で罰金刑を受けていたことがわかりました。これは取締役の欠格事由にあたりますか?欠格事由にあたる場合はどうなるのでしょうか」



大阪の司法書士・行政書士の田渕です。こういった疑問にお答えします。

取締役の欠格事由とは、会社法で定められている、取締役になることができない場合のことです。

金融商品取引法違反で罰金刑を受けてから2年を経過していない人は取締役の欠格事由にあたりますので、Aさんの取締役の選任は無効になります。

この場合、取締役就任登記の抹消と新たな取締役の選任が必要になります。

この記事では、取締役の欠格事由について、わかりやすく解説します。

 

取締役の欠格事由とは?欠格事由があったらどうすればいい?

会社

取締役の欠格事由は会社法331条1項で定められています。

  1. ・法人
  2. ・会社法、一般法人法、金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に定められた罪によって刑に処せられ、その執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
  3. ・上記以外の罪によって禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)

 

以上の人は取締役になることができません。

会社法などの法律上の罪を犯した人は、罰金でも欠格事由になり、また執行猶予中や執行が終わったときから2年を経過するまで欠格事由になる点で、それ以外の罪を犯した場合より厳しい取り扱いになっています。

これは、会社法上の罪を犯した人は、それ以外の罪を犯した場合よりも取締役にふさわしくないと考えられるからです。

 

取締役の欠格事由ではないこと

一方、下記の事由は取締役の欠格事由ではありません。

  1.  ・破産
  2.  ・成年被後見人、被保佐人
  3.  ・未成年


破産

借金

破産は取締役の欠格事由ではありません。

会社法が制定される前は、破産して復権していない場合が取締役の欠格事由だったのですが、会社法では、破産は、取締役の欠格事由から外されました。

なので、破産して復権していない人でも取締役に選任することができます。

ただし、すでに取締役に就任している人が破産した場合、取締役は退任します。

これは、民法で、委任契約の受任者に破産手続開始の決定があった場合、委任契約は終了すると定められているからです(民法653条)。

なので、取締役が破産すると一旦退任します。

しかし、欠格事由ではないので、その人を再度、取締役に選任することは可能です。

もっとも、破産した人を取締役に選任することについて、取引先や金融機関の信用を失うことはないか、従業員から不満はないかなどについては慎重に検討すべきです。

 

成年被後見人、被保佐人

認知症

成年被後見人とは、認知症や知的障害、精神障害などで、自分で財産管理などができない場合に、本人に代わって財産管理などをする成年後見人が付けられた人です。

被保佐人は、成年被後見人ほど認知症などの症状が重くないものの、自分ひとりで財産管理する能力が著しく不十分なため、本人に代わって財産管理などをする保佐人が付けられた人です。

  1. ・関連記事 成年後見人とは?司法書士がわかりやすく解説【毎月の費用は?】
  2. ・関連記事 保佐人とは何かわかりやすく解説【成年後見人との違いなど】


以前は、成年被後見人、被保佐人は取締役の欠格事由でしたが、令和元年12月4日に会社法が改正されて、成年被後見人や被保佐人は取締役の欠格事由ではなくなりました。

ただし、破産の場合と同じく、委任契約の受任者が後見開始の審判を受けた場合、委任契約が終了します(民法653条)。

なので、すでに取締役に選任されている人が成年被後見人になった場合は、一旦取締役を退任しますが、取締役の欠格事由ではないので、その人を再度、取締役に選任することはできます。

成年被後見人が取締役に就任するには、成年後見人が、本人の同意を得た上で、本人に代わって就任の承諾をしないといけません(会社法331条の2)。

一方、保佐開始では、委任契約は終了しません。

また被保佐人が取締役に就任するには保佐人の同意を得るか、本人の同意を得て、保佐人が取締役就任の承諾をしないといけません。

取締役に就任した成年後見人、被保佐人が、取締役の資格に基づいてした行為は、取り消すことができず、有効な行為となります。


未成年

未成年者は取締役の欠格事由ではありません。

ただし、未成年者が取締役に就任するには、親などの法定代理人の同意が必要になります。

 

取締役に欠格事由があった場合どうすればいいか

司法書士

取締役が欠格事由に該当すると、取締役の資格を失うことになります。

さらに、それによって会社法または定款で定める取締役の数を欠くことになる場合、新たな取締役を選任して、取締役の就任登記をする必要があります。

このような特殊な場合の登記については、登記の専門家である司法書士にご相談ください。

大阪なら当事務所でも承っています。

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まとめ

以上、取締役の欠格事由について解説しました。

まとめると、下記が取締役の欠格事由です。

  1. ・法人
  2. ・会社法上の犯罪などで刑の執行を終わった日から2年を経過していない者
  3. ・それ以外の犯罪で禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(刑の執行猶予中の者以外)

一方、破産、成年被後見人、被保佐人、未成年は欠格事由にはあたりませんのでご注意ください。

 

というわけで今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。